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ソニー、S-Master HXとアナログ回路を組み合わせた据え置きヘッドフォンアンプ。4.4mm対応

 ソニーは、「MDR-Z7」や「MDR-Z1R」などの高級ヘッドフォンを強力にドライブできる据え置き型のUSB DAC内蔵ハイエンドヘッドフォンアンプ「TA-ZH1ES」を発売する。発売時期は10月29日。価格は278,000円。

USB DAC内蔵ハイエンドヘッドフォンアンプ「TA-ZH1ES」。「MDR-Z1R」と組み合わせたところ

 ソニーは、ウォークマン「NW-WM1A」と「NW-WM1Z」、ヘッドホンの「MDR-Z1R」、ヘッドフォンアンプ「TA-ZH1ES」の4機種を「Signature Series」として訴求。ソニーが長年培ってきたアナログとデジタルの高音質技術を集結し、「ヘッドフォンによる音楽体験を“聴く”から“感じる”領域へ革新する」製品と位置付けている。

 既存のハイエンドヘッドフォン「MDR-Z7」は、ステレオミニ×2本のケーブルでバランス駆動でき、そのドライブに対応したアンプとしてポータブルの「PHA3」が発売されているが、据え置きのアンプは存在しなかった。そこで、室内でZ7を含む、高級ヘッドフォンをしっかりドライブできるヘッドフォンアンプとして開発されたのが「TA-ZH1ES」となる。

TA-ZH1ES

 最大の特徴は、ウォークマンなどに採用されているデジタルアンプ「S-Master HX」の音質を進化させる新たなアプローチとして、「D.A.ハイブリッドアンプ」を採用している事。

 「S-Master HXの良さを出しつつ、弱点をアナログ回路で補う」という考え方で作られている。一般的にスピーカーのインピーダンスは4Ωや8Ωなどだが、ヘッドフォンには300Ω、600Ωなどのハイインピーダンスなモデルも存在する。そうしたモデルをしっかりとドライブするには、電源電圧をかけてパワーを上げる必要がある。しかし、半導体では大きなパワーを出すと、素早い応答性が両立できず、パルスの波形がなまってしまい、理想波形に対して実際の出力波形にわずかな誤差が生じるという問題がある。

 そこで、S-Master HXのプロセッシングブロックから出力された理想信号を、S-Master HXのMOS FETドライバーに入力する前に分岐させる。MOS FETドライバーに入った信号は、高出力(電源電圧)の際に、MOS FETの限界によって信号に誤差が生じ、誤差を含んだ信号が出てくる。通常であれば、それがヘッドフォンに向かうのだが、D.A.ハイブリッドアンプでは誤差の訂正を行なう。

 MOS FETドライバー入力前に分岐した理想信号を、ローパスフィルタを通し、アナログ回路のマイナスに入力。プラス側には、先ほどの誤差を含んだ信号から分岐した信号を入力する。すると、それぞれが打ち消し合い、アナログ回路からは誤差の信号だけが出力される。

 その誤差信号を、ヘッドフォンのマイナスに入力。プラスには、先ほどの誤差を含んだ音楽信号が入力される。すると、ヘッドフォンで再生する段階で、誤差がキャンセルされた音が再生されるという仕組み。

 追加機能として、アナログ方式のパワーアンプと同じ位相特性を再現するため、低域の位相コントロール技術「DCフェイズリニアライザー」も搭載。デジタルアンプながら、アナログアンプに近い十分な低音感を得る事もできるという。

天面
上部に操作ボタン

 これにより、出力もパワーアップ。バランス接続時で1,200mW×2ch(32Ω)、アンバランスでは300mW×2ch(32Ω)を実現した。ヘッドフォンの対応インピーダンスは8~600Ω。周波数特性は4Hz~80kHz(-3dB)。再生周波数範囲は4Hz~200kHz。2段階のゲイン切り替えも可能。

豊富なバランス出力端子を装備

 前面には出力として、バランスのXLR4、4.4mm 5極、ステレオミニ×2を搭載。アンバランスは、ステレオミニと標準ジャックを各1系統備えている。XLR4はゼンハイザーのHDシリーズなど、ステレオミニ×2はMDR-Z7などで利用。

前面出力端子

 4.4mm端子はJEITAが今年の3月に規格化したもの。サイズは4.4mm、プラグの長さは19.5mm。5極で、アサインは先端からL+/L-/R+/R-/グランドという並びになっている。

 同日に発表された、フラッグシップヘッドフォン「MDR-Z1R」が対応。ウォークマンの上位モデル「NW-WM1A」と「NW-WM1Z」なども、この端子を備えている。

背面

PCM信号もDSD化して処理

 USB DAC機能を備え、DSD 22.4MHz、PCMは768kHz/32bitまでに対応する。HDDオーディオプレーヤー「HAP-Z1ES」に搭載している、入力信号をDSDに変換して処理する「DSD Remastering Engine」を進化させたものを搭載。全てのPCM音源を、DSD 11.2MHzに変換して処理する(Z1ESは5.6MHz)。この機能はON/OFF可能。Windows向け再生ソフトとしては「Hi-Res Audio Player」を利用する。

 DSEE HXも装備。非ハイレゾ楽曲も、384kHz/32bitに変換し、ハイレゾ相当の音質で再生できるというもの。モード選択機能も追加され、Standard、female vocal、male vocal、percussion、stringsの5種類位から選べる。

 なお、前述のS-Master HXと、DSD Remastering Engineを理想的に信号処理するため、プログラミングによって自由に内部のハードウェア構造を設計できるFPGAプロセッサを採用した。

FPGAプロセッサを採用している
内部構造

 背面にはUSB-B入力に加え、同軸デジタル、光デジタル、ウォークマン/Xperia向けの入力端子も装備。ウォークマン/Xperia向けはPCM 384kHz/32bit、DSD 5.6MHzまで対応。同軸デジタルはPCM 192kHz/24bit、光デジタルは96kHz/24bitまでサポートする。

 RCAのアナログ出力も備え、出力は可変/固定/OFFが選択可能。アクティブスピーカーなどを接続し、可変にする事で、プリアンプとして使うこともできる。

 筐体には、ソニーのオーディオ機器「ES」シリーズで培われたFB(frame/beam)シャーシに、W(Wall)を追加したFBWシャーシを採用。壁にあたる高さ部分は、巨大なアルミブロックから押し出しで作っており、高い剛性を備えている。天板を鉄とアルミという異なる共振ポイントを持つ金属で構成。二重構造の底板は、アンプ本体の重量を強固に支えつつ、アンプ回路への不要な振動の伝播を遮断している。

 消費電力は30W。待機消費電力は0.3W。外形寸法は210×314×65mm(幅×奥行き×高さ)。重量は4.4kg。

FBWシャーシを採用している
リモコンが付属する