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ソニー、75型の空間再現ディスプレイ。コンテンツ真正性の取り組みや、静止画から3DCG生成。Inter BEE開幕
2025年11月19日 21:43
メディア総合イベント「Inter BEE 2025」が千葉・幕張メッセにて開幕。11月21日まで行なわれ、入場料は無料だが、登録入場制となっている。ここではソニーのブースをレポートする。
ソニーは、前年に引き続き「Creativity Connected ともに“つなぐ” コンテンツ制作の未来へ」をテーマに、「ソリューション」「クリエイティビティ」「ワークフロー」「ロケーション」の4つの軸で展示を行なっている。
メディアソリューション事業部 事業部長の村田雅和氏は、近年のAI活用によるコンテンツ制作の活発化により、一部でディープフェイクなどのAIを悪用したコンテンツも多く作られていることに対して、ソニーでは「真正性」に重きを置いていることをアピール。
10月に発売された「PXW-Z300」では、カムコーダーとして世界で初めて動画への真正性情報を記録するC2PAに対応することで、「報道機関が発信する情報の価値を高めることができる」と強調した。
また、LiveUがソニーとのパートナーシップに基づいて共同開発した小型データトランスミッター「LiveU TX1」を参考展示。PXW-Z300と組み合わせることで、真正性情報とメタデータを保ったまま後段工程に伝送できるほか、複数の通信回線を束ねて使用することで伝送速度を向上させる「ボンディング伝送」や、カメラにUSB接続するだけで自動的に素材伝送を行なう機能を備えており、ニュース制作ワークフローを迅速化できるとした。
Ci Media Cloudもバージョンアップにより、真正性情報の表示に対応しており、コンテンツ管理の段階でも真正性の確認が可能になっているほか、DaVinci ResolveやAdobe Premiereでのプロキシ編集から、Ci Media Cloudへの完パケ直接書出しに対応しているため、真正性を保ったまま放送に載せる映像まで完結できるとした。
また、プリプロダクションから撮影・編集、ポストプロダクション、放送・配信までの一連の流れの中で、様々なパートナー企業へソニーのソリューションを提供することで、新しい日本の映像制作を実現するという「IGNITE CONTENT ECOSYSTEM」という構想も提示。
その中の一例として、ホークアイのリプレイソリューションを参考出展。ホークアイの空間認識テクノロジーと、ビデオリプレイ技術を活用したもので、スタジアムに設置されたインスタントリプレイサーバー「HawkREPLAY」で映像やデータを収集し、ネットワークを通じて、放送局などに伝送。サーバーと異なる場所にいるオペレーターが、リモートでリプレイ映像やハイライト映像などを制作できる。
このほかにも、ホークアイのシステムで収集されたデータをコンテンツIPと組み合わせて、コンシューマー向けのエンタメコンテンツを作成する例なども挙げた。なお、このエンタメコンテンツの実例は別記事で紹介している。
写真から3D空間を生成するXYN“空間キャプチャソリューション”
モーションキャプチャー編集などの機能を備えるXYNのソリューションの1つとして、空間キャプチャソリューションを紹介。
スマホアプリの指示に従いながら写真を撮影していくことで、撮影した空間の3DCGアセットを生成できるクラウドサービスで、11月19日より、希望した放送関係者を対象としたベータ版の配信がスタートしている。
このアプリはソニー製以外のカメラでも使用可能だが、ケーブル1本でカメラやレンズの情報を読み取れるソニー製のカメラを使用することで、より簡単に3DCGアセットの生成が行なえるとのことだ。
主にバーチャルプロダクションで扱われる素材の撮影に使用されているもので、ソニーPCLの清澄白河BASEでの作成事例として、Ooochie Koochie「ショーラー」のMVが紹介されている。
MVの背景に使われている映像は広島県のものなのだが、メイキング映像を観るとわかるように、全て別撮りされた風景を、清澄白河BASEのLEDに表示させることで、MV撮影が行なわれた。
今回使われている清澄白河BASEのLED正面部分の3DCGアセットの生成には、静止画が約110枚で作成されているとのこと。なお、撮影対象や表示するLEDの大きさによって必要な静止画の枚数は変動するが、約110枚から数百枚の範囲で、HMDを装着して3D空間を体験することもできる精度の3DCGアセットができあがるとのことだ。
また、75型の空間再現ディスプレイも参考展示。ディスプレイ上部にカメラが備えられており、視聴者の顔を認識すると、その人に合った最適な3D映像を表示するというもの。実際に体験してみると、最初は画面全体が2重の層になっているように見えるのだが、最適化された瞬間に前後感のハッキリとした映像に変化する。75型の大きさはまだ検証段階のものとのことだ。なおこのディスプレイでは、ドラマ「相棒」シリーズの会田正裕監督による新作コンテンツが再生されている。
撮影した3D映像をその場で確認できるソリューションとして、8.6KのCMOSセンサーを搭載したVENICEエクステンションシステムMiniと組み合わせた空間コンテンツの撮影モニタリングシステムも展示。2台のVENICEエクステンションシステムMiniをVENICE本体に繫ぐことで撮影し、27型の空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」に出力することで、カメラセットのLIVE撮影映像をリアルタイムに立体コンテンツで確認できる。
また、バーチャルプロダクション向けのCystal LEDの新シリーズ「CAPRI」が展示。高輝度、広色域、再撮ノイズ抑制などの高画質性能と高い設置性が特徴で、展示では直角のL字で設置。視野角や色補正を行なうVirtual Production Tool Setと組み合わせることで、ディスプレイの角の部分をカメラで撮影しても、角の存在を感じさせない映像が撮影できる。
どこでもスタジオ音響になる個人最適化「360 Virtual Mixing Enviroment」
ブースの向かい側にも、「360 Virtual Mixing Enviroment」のブースを展開。個人最適化技術を使って、制作スタジオのスピーカーの音をヘッドフォンで再現するもので、例えば、制作プロジェクトが開始されたタイミングで、使用するスタジオで制作スタッフそれぞれが耳に専用マイクを装着して、聴こえ方を測定。それを反映したヘッドフォンを使用することで、制作スタジオ以外の場所でも、制作スタジオの音を聴きながら編集などの作業が行なえる。すでに様々なスタジオで採用されているシステムとのことだ。
こちらのブースでは、実際に測定用のマイクを耳に入れて測定し、個人最適化されたヘッドフォンの音を聴くという体験ができる。なお、体験は予約制となっている。




















