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オンキヨー15年ぶり“セプター”スピーカー。新素材CNFでハイレゾ向けの「SC-3」

 オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンは、オンキヨーブランドで15年ぶりとなる「Scepter(セプター)」シリーズの2ウェイスピーカー「SC-3(B)」を、12月中旬に発売する。価格は1台30万円。

SC-3(B)

 SC-3に最適化したスピーカースタンド「AS-3(B)」も12月中旬に発売する。1台の価格は6万円。

スピーカーのSC-3(B)と、スタンドAS-3(B)の組み合わせ

新素材で生まれ変わったScepterスピーカー「SC-3」

 1955年の「TW-5」からスタートしたオンキヨーのホーン型スピーカー開発は、1962年開始の「Scepter」プロジェクトへとつながり、1968年にScepterユニットシリーズが誕生。その後、オールホーンのスピーカーシステム「Grand Scepter GS-1」(1984年)や、音へのこだわりから、重さ60kgを超えた“オンキヨー最大のアンプ”という「Grand Integra M510」(同)などが製品化。今回のSC-3は、オンキヨー創立の1946年から70周年に合わせて登場するもので、Scepterを冠する製品は15年ぶりとなる。

新モデルのSC-3
Scepterを象徴する製品の一つ、「Grand Scepter GS-1」(右)と、「Grand Integra M510」(左)

 アルミ製のホーンツイータと、セルロースナノファイバー搭載の20cm径ウーファで構成する2ウェイスピーカー。

 キーテクノロジーとなる新開発のウーファ振動板は、植物の繊維を細かくほぐし、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強度を持つという、スピーカーにとって理想的な特性を持つバイオマス素材のセルロースナノファイバー(CNF)とパルプを独自の比率で混合した「ONF(Onkyo Nano Fiber)」を使用。軽量化や高剛性化、高内部ロスを実現するための、オンキヨー伝統のノンプレス成型による「20cmノンプレスONF振動板」を新開発した。

ウーファ部

 この振動板のレスポンスを高めるため、様々なコーティングを検討したところ、最も効果的だったという墨を製品に採用。創業1577年という奈良県の老舗墨メーカーの古梅園による「紅花墨」を振動板にコーティングしたところ、表面の伝搬速度が向上し、ヤング率や内部ロス、SN比がいずれも向上。抜けが良く、分厚い低音再生が可能になり、外観の質感も高いウーファに仕上がった。

「紅花墨」を振動板にコーティング

 周囲のフレームは高強度のアルミダイキャストソリッドフレームで、高次高調波の不要な共振による可聴帯域への影響を排除。ボイスコイルやマグネットも大口径化し、低重心やレスポンスの良い低音の再生を実現したという。

ウーファ部のパーツ。アルミダイキャストフレームや砲弾型イコライザなどを装備

 ホーンツイータも新開発し、同社初となる2.5cmリング型マグネシウム振動板を採用したコンプレッションドライバを採用。可聴帯域外までピストンモーションによる応答領域を拡張したという。ホーン部はアルミダイキャスト製で、新開発のスーパー楕円形状により、従来のホーンで発生していた開口部の回折音の反射を防ぎ、自然な音の広がりを実現するために、振動板の形状やホーン部の外形、厚さ、エンクロージャへの取り付けフランジの形状もシミュレーションを重ねて検討。「真のハイレゾ再生にふさわしい密度感と、明瞭で音抜けの良い自然な高域を高いレベルで両立した」という。

ホーンツイータ
ツイータ部のパーツ

 エンクロージャは、板厚最大42mmの高剛性MDF材を削り出すことでラウンド形状を実現。内部形状も、固有振動を抑えて振動モードを不均一にし、内部定在波を低減しながら低域エネルギーの増強を図っている。さらに、新開発の「Resonance Sculpting Control」テクノロジーも採用。低域から高域まで、それぞれの周波数帯域における音声のマスキングを避け、クリアな音場感を実現するという。

エンクロージャ

 エンクロージャ内部の吸音材は、断熱素材のサーモウールを使用し、本来の鳴りを邪魔しない自然な吸音を追求。バッフル面と背面には、高級車のシートなどにも使われている、手触りの良い人工皮革のアルカンターラを使用。バッフルの不要な音の反射を防ぎ、濁りの少ない再生音を実現するなど音質的な効果もあるという。

アルカンターラを前面などに使用

 ネットワーク部は、電流面を一致させた、特許出願中の素子マウント構造を採用。不要な相互誘導の発生を抑制し、電気的ノイズが音声信号に混入するのを防いでいる。独Mundorf製コンデンサーを採用するほか、日本製のチョークコイルが、低歪みで力強い再生音の実現に貢献したという。

ネットワーク

 再生周波数帯域は、28Hz~50kHz、クロスオーバー周波数は3kHz。インピーダンスは4Ω、最大入力は200W、出力音圧レベルは87dB/2.83V/m、ターミナルはバナナプラグ対応のネジ式で、バイワイヤリング対応。外形寸法は300×440×454mm(幅×奥行き×高さ)、重量は24.1kg。本体は非防磁設計。付属品はコルクスペーサーや、グリルネット、ショートワイヤー1セットなど。スピーカーケーブルは付属しない。

グリルネット

適度な弾性でSC-3に最適化したスタンド「AS-3」

 既存の同社スタンドをベースに、SC-3の特性を最大限に発揮するために設計されたというモデル。SC-3の振動モードを解析し、スピーカーの動作に伴う不要な振動を吸収するため、脚部に適度な弾性を持つ構造を採用。「スタンドの存在を感じさせず、SC-3を自由に自然な音色で鳴らすことができる最適なスタンド」としている。

AS-3

 外形寸法340×440×591.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は8.5kg。スパイクや脚プレートなどが付属し、脚プレート使用時の高さは最大610mm。

「アーティストの熱」や「ものづくりの熱」を伝える新生Scepter

 オンキヨー&パイオニアの商品企画本部マーケティング部マーケティング1課の深江義久氏は、新たなScepterのコンセプトについて「熱を伝える」というキーワードで説明。e-onkyo musicがハイレゾ配信サービスを開始してから10年が経った現在、音源はスタジオマスターに近いものが手に入るようになり、プレーヤーやアンプも充実した中で「ハイレゾの特徴である分解能が高いことはよく聞かれるが、その一方で、“薄い、さらっとした音”とも言われる」と指摘。「音源には制作者の熱、演奏のニュアンスが込められているのに、なぜそれが出てこないのかと考えたところ、スピーカーのレスポンスによって音が正確に出し切れてなく、ノイズに変わっているのではということに着目し、開発に取り組んだ」という。

オンキヨー&パイオニアの深江義久氏

 そこで、「かつてないほどのレスポンスの良さ」や、振幅に揺るがない強靭さ、微小なニュアンスもマスクしない響きの理想的なエンクロージャを、高い次元で融合するために、新素材であるセルロースナノファイバー搭載のユニットなど、これまで使ったことのない素材やパーツを積極的に採用。「アーティストの熱をリスナーに伝える」ための徹底した取り組みを行なった。

アーティストの熱を伝える

 また、かつてのScepterシリーズは、早い時期からホーンユニットに取り組み、日本のホーンスピーカーをリードしてきた歴史を振り返り、当時の社長から“世界最高のスピーカーを作る”という命を受けて始まったScepterの技術やノウハウを、次の世代の技術者にも伝えていく想いも込めて、今回の新モデルにもScepterの名がつけられたという。「スピーカーに対して、全ての面において既存技術を昇華し、進化させることで、オーディオの熱を再燃させたい」と述べた。

先人の熱を伝える
ものづくりの熱を伝える

 東京・八重洲のGibson Brands Showroom TOKYOにある地下の「マリンシアター」で、オンキヨーのネットワークプレーヤー「NS-6170」や、プリアンプ「P-3000R」、パワーアンプ「M-5000R」と組み合わせて試聴も行なった。

 Marcus Strickland's Twi-Life「Celestelude」や、Diana Krall「Wallflower」、宇多田ヒカル「二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎」を再生。往年のブランドの名を冠しているが、全体的にはハイレゾにマッチした現代風のサウンドに生まれ変わっており、新開発のウーファによるレスポンスの高さで、もたつきが無く立ち上がり/立ち下がりに優れた低域、ホーンツイータによる、精密ながら広がりを持った高域が、明確な定位とともにバランス良い音に仕上がっている。新規の素材やパーツを多く使っているが、音に関しては奇をてらった感は無く、余計な味付けを必要としない、ハイレゾの忠実な再生をとことん突き詰めた、まとまりの良い音だと感じた。

 SC-3は、10月29日~30日に東京・秋葉原の富士ソフトビルで行なわれる日本オーディオ協会のイベント「JAS 音のサロン&カンファレンス」において、“最新スピーカー6機種比較試聴”というイベントにも出展。他社製アンプとの組み合わせなども予定しているという。さらに、11月12日~13日の「オーディオセッション in OSAKA 2016」(大阪ハートンホテル南船場)でも、展示と試聴デモを行なう。

イベント出展情報