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帰ってきた「DIATONE」。新ブックシェルフスピーカー「DS-4NB70」を聞いた

 DIATONEのスピーカーが復活。三菱電機エンジニアリングと三菱電機ライフネットワークが、ブックシェルフスピーカー「DS-4NB70」を9月29日より発売する。価格は60万円(1台)。

 DIATONE(ダイヤトーン)が、三菱電機のスピーカーブランドとして、1946年にNHKと共同でフルレンジスピーカー「P-62F」を開発してから、2016年で70周年を迎えた。その記念に2006年のDS-MA1(105万円/本)以来途絶えていた民生用DIATONEスピーカーが復活する。製品名の「DS-4NB70」は、[D](DIATONE)の[S](スピーカー)、[4](4代目)、[N](NCV-R振動板)、[B](ブックシェルフ)、[70](70周年)の略称だ。

 主な仕様は、発表時の記事で紹介しているが、スピーカーユニット開発からスタートしたDIATONEだけに、ユニットにはこだわりを持つ。振動板素材にカーボンナノチューブと数種類の樹脂を最適に配合した「NCV-R」を新開発。このNCV-Rの開発が、今回のDIATONEスピーカー復活に大きく関わっているという。ウーファは160mm径のNCV-R、ツィータは30mm径ドーム&コーン型のNCV-R。

DS-4NB70

 NCV-Rは6,300m/sと高い伝搬速度を持ちながら、適度な内部損失をもつため、低域から高域まで、ハイスピードでレスポンスに優れた音楽再生が行なえるという。伝搬速度の高さだけに着目すれば、ベリリウムやかつてDIATONEでも採用していたB4Cピュアボロンなどの素材もあるが、NCV-Rが優れているのはツイータだけでなく、ウーファでも利用できること。ウーファとツイータで同じ素材を使い、「リアリティの向上を図る」ことが、NCV-R採用の大きな理由だという。

NCV-Rの特性

 磁気回路にはネオジウムマグネットを採用。かつてはアルニコが重用されたこともあったが、アルニコでのスピーカー制作のノウハウを元に、ネオジウムマグネットの周囲に重量級のヨークを用いたところ、結果的に振動板の動きに起因する振動がキャンセルされ、NCV-Rのハイスピードが活きるという。

 また、ウーファの磁気回路には、「ECCT(Eddy Current Canceling Technology)」を採用。磁気回路のプレートを内周から外周にかけてワイヤーカッターでカットするもので、渦電流が交流歪に与える影響を効果的に低減させることで、音質が大幅に改善したという。磁気回路のプレートをカットするため、磁束が弱まるというデメリットもあるが、それを補って余りある音質向上が達成できたとする。

ECCTを採用
DMM構造でフレームと強固に接合

 DS-4NB70は、16cmユニットを採用するブックシェルフスピーカーだが、ユニット口径から考えてもやや大ぶりのエンクロージャーとなっている。「ウーファの性能を引き出すため20リットルは容積確保が必要だった」とのことで、特に低音再生を重視しての選択だという。容積を確保しながら、大型のバスレフポートを搭載できるサイズにすることで、ブックシェルフスピーカーでは再現が難しい、40Hz付近の再生能力を向上。大型スピーカーに迫る臨場感と迫力をブックシェルフ型でも実現可能にした。

 また、エンクロージャーの大型化により、ウーファをほぼ前面中心に配置できるようになり、定在波の影響を抑制。フロントバッフルは音の回折の影響を防ぐサーフェイスカットとした。バッフル前面の素材はフィンランドバーチで、仕上げはカーボン含有のポリエステル樹脂によるピアノブラックフィニッシュを採用した。「かつてのDS-10000B/20000Bでも、ピアノフィニッシュによる音への好影響が明らかだったため、ピアノフィニッシュを前提に開発した」とのこと。職人の手作業による6層塗装とバフ研磨仕上げにより、高いS/Nを実現しているが、この仕上げをできる職人が非常に少ないのが悩みで、浜松でピアノなどを手がけている職人に依頼しているとのこと。

フロントバッフルはサーフェイスカット。ウーファを中心に
背面

 非磁性体のチタンねじ6本でユニットをエンクロージャーに固定。ウーファのコイルには、大型カットコアを採用。巻線を含めた全体をDIATONEオリジナルワニスを含浸させて熱処理を施した専用コイルを用い、内部配線材には英CHORDのケーブルを採用している。スピーカーターミナルは「DS-MA1」と共通のもの。

内部配線材はCHORD製
スピーカーターミナル
チタンネジで、ユニットを固定

 再生周波数帯域は38Hz~80kHzでハイレゾ対応。出力音圧レベルは88dB(2.83V,1m)。インピーダンスは4Ωで、「プリメインアンプでも駆動できるように配慮した」という。外形寸法は270×289×473mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約17kg/1本。音楽を聞かない時に、スピーカーに被せてユニットなどを保護する「クロスカバー」も付属する。

クロスカバー

 また、DS-4NB70専用のスタンドも販売する。ティグロンと共同で開発したもので、ベースモデルから、天板をDS-4NB70専用サイズにし、落下防止用のネジ止めに対応。スタンド部の重墳材もDS-4NB70にあわせて調整するなど、DS-4NB70の使い勝手や音質を最大限に引き出す設計とした。価格は14万5,000円(ペア)。

 短時間ながらDS-4NB70を試聴。ダイアナ・クラールのボーカルの空間表現は現代的、さらにイーグルス「ホテル・カリフォルニア」では、情報量と低域のキレ、そして、サイズからは想像できない低域の重さ、深さに、「フロア型のスピーカーを聞いているのかな?」と錯覚する。16Hzまで収録されているというパイプ・オルガンの低音の重量感の再現力もかなりのもので、視聴室の調音パネルがパイプ・オルガンに見えてくる。ハイスピードさと、ブックシェルフとは思えない低音の深さという「DS-4NB70」の魅力が味わえた。圧巻は、野島稔による「カンパネラ」。激しいピアノ連打の中で、こんなにも音の表情が違うのかと驚かされるが、これもレスポンスの良さ故なのだろう。ピアノという楽器の表現力の凄さをDS-4NB70を通して体験できた。