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JVC、ノズルも角度もカスタマイズできるフルステンレス製イヤフォン「SOLIDEGE」
2017年11月1日 11:00
JVCケンウッドは、「CLASS-S」のラインナップとなる、ハイレゾ対応イヤフォン「SOLIDEGE」シリーズの2製品を11月下旬に発売する。新開発の「D3ドライバーユニット」を搭載しているのが特徴。価格はどちらもオープンプライスで、店頭予想価格は「SOLIDEGE 01 inner」(HA-FD01)が4万円前後、「SOLIDEGE 02 inner」(HA-FD02)が28,000円前後。11月3日、4日に東京・中野サンプラザで開催される「秋のヘッドフォン祭 2017」にも出展される。
SOLIDEGEシリーズは、ハイクラスな「CLASS-S」シリーズの1ラインナップとして展開。CLASS-Sにはウッドコーンを使ったシリーズも存在するが、SOLIDEGEシリーズはウッドコーンを使っていない。
音の方向性としては、ウッドシリーズが「木が奏でる、美しい響きと自然な音の広がり」をテーマにしているのに対し、SOLIDEGEは「心に響く、冴えわたる音を届けたい。凛とした音色が奏でる、際立つ輪郭と伸び」と表現されている。これまで展開していた「SIGNA」シリーズがSOLIDEGEシリーズに昇華したという位置付けだ。
新開発の「D3ドライバーユニット」とは
どちらのモデルも「D3ドライバーユニット」を搭載している。口径は11mm。基本的にはダイナミック型ドライバだが、振動板の素材と構成に特徴がある。
振動板中央ドーム部分には、高分子ポリマーのPENを採用。その表面に、アモルファスカーボンの一種であるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)をコーティングし、剛性を高めてる。
この中央ドーム部分の外周部には、強度を持ちつつも、しなやかさを備えた素材として、PETを採用。PETの表面には、アモルファスカーボンの一種であるCBをコーティングしている。
振動板にはさらに、新開発のアキュレートモーションエアダンパーを搭載。エアダンパーによって、正確な振動板の動きを実現するという。
上位モデルの「01」はこれに加え、ユニット前面にチタニウムドライバーケースを採用。強度に優れるチタニウムを使うことで、雑味を排除したという。「02」もドライバーケースを採用しているが、素材がステンレスとなる。
D3ドライバーは、こうした技術・素材を組み合わせる事で、細かいディテールを表現しながら、エッジが立ったカリカリな音ではなく、“心地の良さ”も追求している。D3というネーミングには「Dignified(凛とした)、Distinct(明確な)、Delightful(心地よい)」という意味が含まれている。
ノズル交換と回転機構で音質と装着感を追求
ハウジングはフルステンレス。ステンレスは強度が高く、余計な音を出さず雑味の無いサウンドになり、伸びのある高域、輪郭のある低域を実現するという。
上位モデルの「01」は、筐体のノズル部分が交換できる「Jマウントノズル交換システム」を採用。標準でステンレスのノズルが装着されているが、チタン製のもの、真鍮製のノズルを同梱。その3種類をユーザーが付け替えて、好みの音を追求できるようになっている。
なお、他社製品ではノズルではなくフィルタを交換できるものが存在し、「01」のノズルにもそれぞれフィルタが取り付けられている。しかし、フィルタ自体は3ノズルで同じものを採用している。これは、フィルタを変えると周波数特性が変わり、音の変化が大きくなり過ぎてしまうが、Jマウントノズル交換システムは、あくまでノズルの“素材の違い”による音の変化を楽しむためのものとなる。
さらに01、02のどちらのモデルにも、ファインアジャスト機構を採用。ノズルが飛び出ているイヤフォン前方の部分が、クルクルと回るようになっており、ノズルの向きを変えられる。人間の耳穴の向きは人によって微妙に異なるため、ノズルの向きを変える事でそれにフィットできる。さらに、これを活用し、装着方法は通常タイプと、耳掛けタイプ、両方に対応できるようになっている。
ケーブルは両モデル着脱可能で、MMCX端子を採用。ケーブルは「01」の方がハイグレードになっており、イヤフォン本体から入力プラグまで、L/Rを完全にセパレートした構造を採用。セパレーションや濁りを抑制したという。L/Rセパレートのために、ケーブル自体は若干平たくなっている。
イヤーピースは、内側に球形のへこみを設けた「スパイラルドット」イヤーピースを採用しているが、SOLIDEGE 01付属のピースは、従来のものを改良した「スパイラルドット+(プラス)」に進化した。形状と素材を見直したもので、形状は描写力をより高める方向に調整。素材は、肌に近い力学特性を持つ新素材を使っているという。力学特性は簡単に言うと弾力で、シリコンのように高反発ではなく、肌と同じで押し込んだ後、少し遅れて元に戻る。この特性により、フィット感がナチュラルになるほか、通常のシリコンにはないダンピング効果により、雑味も抑制したという。また、人肌に近いため、イヤーピースが無いかのように、ノズルからダイレクトに音が届くようなサウンドに変化するとのこと。サイズはS/MS/M/ML/Lを用意する。なお、SOLIDEGE 02は従来のスパイラルドットイヤーピースを採用している。
音を聴いてみる
異なる剛性の素材やコーティングを組み合わせ、解像感と聴きやすさを追求したという「D3ドライバーユニット」。その言葉通り、音を聴いてみると、切り込むようなシャープさ、ソリッドさがありながら、例えば女性ボーカルのサ行や、ヴァイオリンの弦など、高くて細かい音がカリカリにならず、質感も豊かに聴かせてくれる。「シャープさとしなやかさ」という、相反する要素が両立できており、今まで諦めていた領域に踏み込んだサウンドだ。
上記の印象は標準のステンレスノズルで聴いたものだが、これを真鍮製のものに変更すると、“シャープ“と“しなやか&おだやか”の比率が少し変わり、“しなやか&おだやか”がやや勝る。聴きやすく、ホッとさせてくれる音でありながら、ハイレゾの情報量がよく分かる微細な表現力を持っており、個人的にはステンレスよりも真鍮ノズルサウンドの方が好みだ。
さらにチタン製のノズルに変えると、“ステンレスと真鍮の間”という感じで、ステンレスの硬さ、金属質な響きが、自然な方向にシフトする。真鍮ノズルでは、切り込むようなソリッドさが足りない、けれどステンレスほどは不要という時にピンとくるだろう。
いずれにせよフィルタの違いはなく、ノズルを構成する素材の違いによるものだが、それでこれだけの音の変化があるというのは驚きだ。