各社TVで利用できる「テレビ版Yahoo! JAPAN」を開始

-業界標準に準拠。画像検索など機能拡張も


4月6日サービス開始


 ヤフー株式会社は6日から、デジタルテレビ向けのインターネットサービス「テレビ版Yahoo! JAPAN」を開始する。利用料金は無料。


■ 業界標準に準拠し、各社のテレビでWebブラウズ可能

「テレビ版Yahoo! JAPAN」のトップページ。左側の[ニュース]、[天気]などにリモコンのボタンでアクセスできる

 Yahoo!は、デジタルテレビ情報化研究会が策定したテレビ向けHTMLブラウザの仕様に準拠して、テレビ向けのサイトを構築。国内大手メーカー製テレビのHTMLブラウザは、同仕様に基づいて設計されているため、多くの家電メーカー製テレビで、Webブラウズが可能となる。

 現在利用可能な機能は、Yahoo! Japanのトップページの表示や検索で、デザインをテレビに最適化している。4月下旬には画像検索に対応する予定。

 Yahoo!では、テレビ向けにサイトデザインの最適化を行なったほか、テレビならではの検索方法と操作性を追求。たとえば、画面左に「ニュース」、「天気」、「スポーツ」、「12星座占い」などのメニューを用意し、ここに1~9までの数字を割り当て。リモコンのキーを押すだけで、ニュースなどに簡単にアクセス可能となった。

 検索キーワードはリモコンで入力。キーボード対応のテレビについては、キーボードによるキーワード検索も可能となっている。検索後のページもテレビ用に表示を最適化しており、急上昇キーワードや検索ランキングなども用意し、リモコンで簡単に検索可能とするなど、使い勝手の向上を図っている。なお検索以降のサイトは通常のWebサイトとなる。

 テレビ向けブラウザを搭載しているテレビであれば、メーカー/機種を問わずに利用可能。また、テレビの解像度や画面サイズにあわせて、トップページの表示を変更するなどの工夫を施しているという。

 家族で使うことを想定し、初期設定で「アダルトフィルタ」を設定しているほか、有害サイトフィルタリングサービス「Yahoo! あんしんねっと」への対応も検討している。収益については、当面は広告が主体となる見込みだが、「目先2~3年は大きな収益は期待していない。まずは利用が広がっていくことが重要(井上雅博 社長)」という。

リモコンやキーボードで検索キーワードを入力検索結果もシンプルに表示急上昇ワードランキング
検索総合ランキングから、ワード選択も可能4月下旬にはフォトアルバムに対応スライドショー機能も装備する
テレビ版Yahoo! JAPANの特徴2画面表示でも利用可能テレビメーカーを問わずに利用可能

 


■ オープン化でマーケットを活性化

井上雅博社長

 ヤフーの井上雅博社長は、「ソーシャルメディア」、「EveryWhere」、「地域・生活圏情報の充実」、「オープン化」の4つの事業戦略の柱を紹介。その中で、今回のデジタルテレビ対応を、携帯電話やテレビ、カーナビなどのどんな端末からでも使いやすいサービスを実現するという「Yahoo! EveryWhere」構想に基づくもの、と紹介。

 同社によれば、PCを用いたインターネット利用時間は月間約13時間。対して、テレビ視聴の平均時間は約119時間という。井上社長は、「接触の度合いは、10倍ぐらいの開きがあり、このうちいくらかをネットに持ってきたい。主要メーカーのテレビがすでにネット対応になっており、それに対しての準備がYahoo!でもできた。テレビがインターネットにオープンにつながっていくきっかけになり、パソコンや携帯が向かっているように、どんなテレビでもオープンに利用できるようになれば、大きなマーケットができるはず」と、テレビ版Yahoo! JAPANの目標を説明した。


あらゆる“もの”、“場所”でYahoo!に接続するEveryWhere構想ネットとテレビの利用時間比較PCだけでなく、モバイル、テレビもオープン化

 また、「パソコンは積極的に情報を取得しに行くのに対し、テレビは受動的な利用が多い」と利用方法の違いについて言及。「利用姿勢の違いをサービスに反映すべく工夫をした。キーボードではなく、リモコンだけでも用が足りるようにするなど、デバイスにあわせて使い方を考え、サービスを構築した」と説明した。

 井上社長は、「今はサービスの数は限定的だが、これから5~10年かけてサービスを育てていきたい」と言及。さらに「テレビ番組とネットをどうやって連携していくのか。テレビ局などと協力して取り組んでいきたい。例えばテレビCMでも、“続きはWeb”でとか、あるキーワードで“検索”というものも増えている。そういったCMでの連動などもできるかもしれない」と今後のサービス展開について説明した。

パソコンとテレビの利用シーンの違いテレビ向けに順次サービスを最適化放送とWebの連携に向けて取り組む化
R&D統括本部 プラットフォーム開発本部 EW開発部 坂東部長

 現在は、ユーザーアカウント管理や課金などには対応しておらず、動画にも非対応。「いずれこのサービス上で動画に対応する予定。ただ、いつとかは言えない(ヤフー R&D統括本部 プラットフォーム開発本部 EW開発部 坂東浩之部長)」としている。テレビ版Yahoo! JAPANが採用している「ネットTVガイドライン」では、課金やMPEG-4 AVC動画対応などについても規格化されているため、将来的にはこうした枠組みを活用していく可能性もあるという。

 また、利用者の目標については、「2010年末に約1,600万台のネット対応テレビが市場に出回るのではないか。およそ20%がネットにつなげてくれると想定すると、300万ぐらいの利用者が見込める(坂東部長)」とする。井上社長は、「今はネットをテレビでみておらず、ほとんどのテレビがネットに対応していない。しかし、地上デジタルへの移行もあり、買い替えサイクルにある。市場にある1億台ぐらいのテレビの半分ぐらいでネットを使ってもらえるよう、サービスの拡充や便利なサービスを提供/拡充し、3,000万とか5,000万台になるように努力していく。それが“志”」と語った。

 収益化については、「当面、広告になると思うが、視聴者がいなければ広告は売れない。最初は投資の時期と考え、多くの利用者に使っていただけるようにする。数百万の媒体になれば、自然に広告価値がうまれていくる。目先2~3年は大きな収益は期待していない。まずは利用が広がっていくことが重要(井上社長)」とする。

 なお。米国Yahoo!やIntelが共同で提案している「Widget Channel」について、井上社長は、「我々は装置メーカーではないので、まず普及している道具でみられることが重要。Intelとやっている(Widget Channel)のは、装置としての採用を働きかけるもの。日本のメーカーはすでに進んでいて、機能がすでに実装されている。だから、まずそこを使ってやってみようというのが今回のサービス。アメリカのやつ(Widget Channel)が実装されればいいが、もう少し先かな、という理解」と語った。坂東部長も「ウィジェットは、映像画面とサービスが同期できるのが、魅力。今回は全画面のサービスだが、今後いくつかのやり方が出てくると思っている」とした。

 なお、シャープとは「Yahoo! JAPAN for AQUOS」を、ソニーとはウィジェットサービス「アプリキャスト」でYahoo!と協力している。こうした各社独自サービスと、業界標準を使ったサービスが、同じYahoo!ブランドのもと混在することとなる。

 井上社長は、「テレビのインターネットについて、いろいろなものがまだ標準化されていない段階。テレビメーカーも、“標準化してどこでも同じように見られるようにしたい”という部分と、“テレビの機能として差別化したい”部分がそれぞれある。我々も、すべてを標準化するのはまだ早いと考えている。今回は“標準化型”でどのテレビでも同じように、という考えだが、シャープやソニーと組んでいるのは個別でどのような機能を追求できるか、ということ。位置づけが違うので、両方引き続きやっていきます」と説明した。


(2009年 4月 6日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]