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裸眼3Dや8Kスポーツなど、高画質が5Gで身近に? 「ワイヤレスジャパン」開幕
2018年5月23日 17:32
国内最大級のワイヤレス&IoT展示会「ワイヤレスジャパン」が5月23日~25日に東京ビッグサイトで開催。その中で、NTTドコモやKDDIなどが、2020年の導入を目指す第5世代移動通信システム「5G」を活用した製品やサービスを提案している。入場は無料だが、登録が必要となる。
JDI裸眼3Dやシャープ8K、パナソニックのVRなど、映像に5G活用
会場内には、NTTドコモが協力するパビリオン「5G Tokyo Bay Summit2018」が開設。ドコモだけでなく、5G活用の製品やサービス実現を目指すハードウェアのメーカーやサービス事業者なども出展している。
同パビリオンの「5Gで広がる近未来デバイス」のコーナーで、ジャパンディスプレイ(JDI)は、裸眼3D立体視に対応した「17型ライトフィールドディスプレイ」を出展。8K液晶ディスプレイを使って、見る位置に応じた物体からの反射光を再現することで、3Dメガネを使わなくても立体感のある映像を表示できる。新たに動画再生機能を追加し、3D動画の再生を実現したのが特徴で、2019年度の生産開始を予定。米国開催の「SID DISPLAY WEEK 2018」と同時に、日本でも今回初披露された。
立体的な動画を再生するため、複数の光線画像をタイル状に並べた映像から、リアルタイムにライトフィールドディスプレイに適合した画素配列に変換するシステムを開発。実用的な再生装置で8Kライトフィールド映像の再生が可能となった。
パネルは8Kだが、様々な方向から立体視できるようにするため、立体映像としての解像度はHD相当となる。ただ、見ながら横に移動しても、つなぎ目はほとんど感じず、複数人でも同時に見ることができるため、個人で楽しむVRゴーグルなどとは異なる、様々な用途が想定されている。
一方、動画としての明るさがやや足りないところは課題としている。現在は通常のディスプレイより高輝度なLEDバックライトを使用しているとのことだが、今後はLEDのローカルディミングや、将来的に期待されるマイクロLEDなどの新たな技術を導入することで、明るさの改善を見込んでいる。
コンテンツ制作については、一般的なカメラで撮影した動画を元に変換できるとのことだが、画像の処理に高性能なPCが必要となる。そこで、変換の処理を再生側ではなく配信側など別の拠点で行ない、大容量高速通信の5Gで配信するといった活用を見込んでいる。
なお、今回のデモコンテンツはフレームレート60fpsだが、パネルは120fps対応のため、データ処理や配信などの課題が解決されれば、高フレームレート化も技術的には可能だという。
そのほか、モバイルバッテリでデジタルサイネージを実現する反射型液晶を「電源レスサイネージ」として展示。32型のフルHD解像度で、直射日光下の屋外などでも、一般的な透過型に比べ視認性が高いのが特徴。超低消費電力で、運動会などのイベントや、動物園などの展示、災害時などの利用を想定。現在は無線LAN対応だが、より多くのデータを伝送できる5G対応も提案している。
シャープは、8K映像のマルチチャンネル同時伝送をデモ。移動式の高精細ライブビューイングなどでの利用を見込んでいる。
5GとMMT多重化により、複数の8K映像を同期伝送。3つの8K映像を5G基地局から約110Mbps×3chで送信し、5G端末で受信。そこから3chを分離して、再生側のデコーダでMMT処理と映像復号を行なう。
これまで、3つのカメラを用いて別の8K映像を伝送したことはあったが、1つのコンテンツを3カメラで同期撮影して再生するのは今回が初めて。サッカーの試合で、1つのプレーを2つの視点と、1つのスローで楽しめるといった見せ方を紹介している。
NTTドコモとフジテレビは、スポーツ観戦にAR(拡張現実)で情報を重ねる「どこでもジオスタ」を紹介。テレビやネットで放送されているスポーツ中継が、自宅や外出先など今ユーザーがいる場所でリアルタイムARとして楽しめるというもので、観たいプレーヤーを好きな角度や視点から楽しめる。
カーレースの「スーパーフォーミュラ」では、タブレットを持って家のテーブルなどにカメラを向けると、マーカーを認識してレースの映像がCGで再現。順位を確認し、観たい選手の名前をタップすると、その選手の車載カメラ映像が左上に子画面で表示される。CGで再現されたコースは俯瞰視点で、拡大/縮小の切り替えができるほか、テーブルなどのARマーカーにタブレットを近づけると、表示も拡大する。
また、テレビのゴルフ中継を観ながら、コースや風などの情報をCG上で確認できるという楽しみ方も紹介。ARマーカーを認識すると画面上にCGのコースが出現。タブレットのカメラを上に向けると、子画面で現場の中継映像が表示され、CGと合わせて楽しめる。画面上に、ネット掲示板の実況コメントが流れる仕組みも取り入れている。
パナソニックは、5Gで4K/360度映像を複数ユーザーに同時伝送するシステムをデモ。同社が開発しているVRゴーグルに、ユーザーの通信状況に応じた画質で同時配信できるというもので、スポーツやコンサートなどの臨場感を、会場にいるように体感できるコンテンツとして提案している。
常に変化するユーザーの通信状況に応じ、配信サーバー側で適した画質にする可変エンコードを実現。ライブストリーミング映像を、複数の可変コーデックデコーダに同時配信することで、4KやHDなど回線に合った画質で楽しめる。ヘッドマウントディスプレイは1,700×1,440ドットのパネル4枚をゴーグル内に配置して、220度の広い視野を実現している。
ヤマハは、インターネットを介して、離れた場所にいる人とリアルタイムで楽器演奏のセッションを可能にするNETDUETTO(ネットデュエット)技術を用いた「高臨場遠隔合奏」を紹介。会場のビッグサイトと、東京スカイツリータウンの2拠点間で5G通信を行ない、超低遅延で音声と映像を伝送。違和感のない演奏体験を提供するという。ライブイベントや、音楽レッスンなどでの利用を想定しており、将来的には5Gモバイル端末をもちいて「いつでもどこでも音楽ができる」環境を目指す。
その他の注目展示は「5Gロボット」。センサー付きのスーツを着た操縦者の体の動きに合わせて、ロボットが低遅延で動くというもの。人型ロボットの手や体の向きなどを細かく低遅延で動かすことができ、屈伸するように体の高さも変えられる。ロボットに取り付けた3つのカメラ映像は、操縦者のVRゴーグルに3Dで表示。ロボットハンドには触覚センサーを備え、操縦者も触った感覚が伝わるハプティックフィードバックを実現している。底部のタイヤで移動も可能で、工場や物流などの現場の活用を見込んでいる。
スポーツやAR、自動運転で5G活用に取り組むKDDI
KDDI/auは、5Gを軸に、映像エンタメやコネクテッドカーなどへの活用例を紹介している。
スポーツなどのスタジアムエンターテインメントに5Gを活用する例として、同社は沖縄セルラースタジアム那覇で昨年に実証実験を行ない、5Gタブレット50台への4K映像同時配信に成功。試合のリアルタイム配信ではなく、一度収録したものを50台のタブレットに配信したもので、50台合わせて約500~600Mbpsの通信を1度に行なった。画面をスワイプして角度を変えることも可能で、将来的にはリアルタイムで自由視点の映像を配信できることを目指す。今年も実証実験を計画しており、昨年よりも滑らかな動画にするなど改善を予定。
現実の風景に映像を重ねるARの活用例も紹介。スマートグラスを掛けて特定の場所を見ると、アーティストの360度ミュージックビデオがスタートする。また、工場やメンテナンスなど遠隔作業の指示にARを活用する事例も紹介している。
自動運転にも5Gを活用する実証実験を東京・新宿区内で行なった。運転者が視認する風景の映像を遠隔地点でモニタリングして、状況に応じて遠隔地から自動車を制御するというもの。5Gの高速/大容量を活かした高精細な画像により、遠方の人や障害物などを認識、自動車を止めるなどの制御できるという。
なお、この実験では、帯域幅の広い28GHz帯ではなく、4.5GHz帯を使っている。これは、28GHzに比べて街路樹など遮蔽物の影響を受けにくいためだという。5Gにより、前方だけでなく側面や後方などを含めて50Mbps相当の映像をリアルタイムに伝送可能としている。