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押井監督「皆がハッピーになった」、『攻殻&イノセンス』UHD BDのクオリティに迫る

 押井守監督の映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』が、4K/HDRリマスターされ、バンダイナムコアーツから6月22日に4K ULTRA HD Blu-ray化される。同日には、ディズニーから『イノセンス』のUHD BDも発売。『攻殻&イノセンス』はどのような映像に生まれ変わったのか、発売前にマスコミ試写が行なわれ、押井守監督も参加。4K/HDR版の見所を解説した。

押井守監督

 UHD BD版の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスターセット」(品番:BCQA-0007)と「イノセンス 4K Ultra HD+4Kリマスター・ブルーレイ」(VWBS6700)の価格は、各9,800円。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 & イノセンス 4K ULTRA HD Blu-ray セット」(BCQA-0008)は12,800円。なお、同日には、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』、『機動戦士ガンダムF91』のUHD BDも発売される“アニメUHD BDデー”となっている。

UHD BD版の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスターセット」
(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 攻殻機動隊のUHD BDは、本編が約82分。音声はリニアPCMのドルビーサラウンドで収録する。映像特典として、劇場特報/劇場予告編などを収録。キャラクターデザイン沖浦啓之描き下ろしによる新規イラストジャケットを使用する。

 イノセンスの本編は、約99分。音声はリニアPCM 2.0chと、新たにDTS:X(7.1.4ch)も収録。音声特典として、映画サラウンド音声を通常のヘッドフォンやイヤフォンで楽しめるDTS Headphone:Xトラックも収めている。

イノセンス 4K Ultra HD+4Kリマスター・ブルーレイ
(C)2004 士郎正宗/講談社・IG,ITNDDTD

4K/HDR映像に生まれ変わった『攻殻機動隊』と『イノセンス』

 視聴には、パナソニックの4K有機ELテレビ「TH-65FZ1000」、UHD BD再生は、レコーダの「DMR-UBX7050」を使用した。

レコーダの「DMR-UBX7050」

 『攻殻』の冒頭、草薙素子が外交官を暗殺するシーンから、HDRの効果がすぐわかる。ターゲットの位置などを示す緑色の各種デジタル表示の光が鋭く、鮮明だ。さらに、待機する素子の背景にあるビル群の描写も細かく、窓の形状などもよく見える。4K解像度ならではの表現だ。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 ビルの入口を監視しているバンの中、モニタの光に照らされたバトーとトグサが登場するが、“3つの白”に注目だ。1つは光が当たったバトーのジャケットの白さ、トグサの水色のジャケットの白さ、そしてジャケットの下に着ている白いシャツの白さ。いずれもHDRで光の強さが表現されているのだが、光の中にも色の情報がしっかり残っており、“白いものに光が当たっている”のか“水色のものに光が当たっているのか”といった、明るい光の中の“色の違い”がよくわかる。

  人形使いに操られたコーギーが、逃亡の果てに水が張った場所にたどり着き、素子と挌闘するシーンでは、それまでの通路の暗さから一変、光が当たる水の表面のかがやきがHDRでリアルに表現されており、雑多な街の中に現れる“ちょっと現実感の無い不思議な場所”という印象が、より強くなる。

 4K解像度の威力は、この逃亡劇の中で登場するカオスな町並みでも感じられる。色あせたチラシやポスターが何枚も貼られた壁、野菜や果物が並ぶ市場、そこを行き交う多数の人々。それらのディテールが細かく描写されるため、画面から感じられる情報量に圧倒される。今までDVDやBlu-rayで何度も見た作品だが、「まだまだこんな情報が隠れていたのか」と驚かされる。同時に、屋台の中で、ジラジラと輝く蛍光灯の鮮やかさにHDRの効果も感じる。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 その後も、 人形使いが入った義体がトラックに轢かれるシーンのヘッドライトや、後半の雨が降るシーンでの銃器のヌメッとした光がリアルだ。もともと輝度が高いが、その光の中での微妙な色合いの違いがしっかりと表示される、多脚戦車アラクニダとのラストバトルシーンなど、4K/HDRの効果がじっくりと楽しめるソフトに仕上がっている。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 それでいて、4K/HDRになった事で色味が変わったようなシーンは無いため、「オリジナルとガラッと変わってしまった」というようなマイナスな印象も無い。なんというか“しばらく鑑賞していなかったので記憶の中で少し美化された『攻殻』”が、そのまま映像として出現したような印象だ。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 イノセンスも、冒頭のみだが鑑賞した。こちらは攻殻と比べ、より画面内の情報量が多い作品だが、4K/HDR化する事で、その洪水のような情報がより鮮明に浴びられるようになっており、インパクト大だ。

(C)2004 士郎正宗/講談社・IG,ITNDDTD

 看板が立ち並ぶ街並みのディテールの細かさがスゴイ。そこに、ガイノイド・ハダリの暴走に対応するために車で乗り付けるバトー。旧車のなめらかなフォルムに、街のネオンが反射するが、まぶしいほどの煌めきで、情感がアップしている。

 ハダリを探して薄暗い路地裏を進むシーンも、壁の汚れや散乱するゴミなど、4K解像度で細かなオブジェクトがブワッと表示されるため、画面のリアルさが強く、強制的に意識が画面の中に入り込んでしまう。

 ハダリは、肌の白いガイノイドだが、その質感や階調も豊かに表現されており、艷やかで、それでいて神々しいような、彼女の神秘的な存在感が4K/HDRではより強く感じられた。

 なお、4Kリマスター作業は『攻殻機動隊』をキュー・テックが、『イノセンス』はパナソニックがそれぞれ担当したそうだ。

『イノセンス』の4K UHD化「待ってました!」

 「(UHD BD化の)お話が来た時に、イノセンスについては“待ってました! 前からやりたかった”と思っていました」と語る押井監督。「IMAXでかけた時に、見応えがあり、今まで見えなかったものが見えた。だから4K化は、むしろ気合が入った」という。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 その理由は“押井監督が何にこだわって仕事をしてきたのか”に関係している。「例えば、宮さん(スタジオジブリの宮崎駿監督)は、“王道の世界”。動く事の面白さ、そのエッセンスだけを再現していく。これは、(それができる)アニメーターだけの、特権的な世界。僕はそんな事できないので、“いかに緻密な映像を作れるか”にこだわり、それを自分の仕事としてきた。イノセンスはその総決算。こんなに時間をかけて作品を作れるチャンスは、もう一生ないだろうと思ってやった仕事」と振り返る。

 「イノセンスって、古典の引用で7割くらい作っちゃって、話らしいものは何もないですよ(笑)。ストーリーがどうでもいいとは言わないんだけど、“ドラマでみせる”のではなく、“映像それ自体が持つ力で、登場人物の背負っているものを表現”した。ドラマチックなシチュエーションでなくても、画をどこまでも作り込むことで、それを表現する。そういう作品なので、4Kにするのは前々からお願いしていたくらい。そこにようやくモニターの進化が追いついた。4Kで、好きな時に観ていただけるのは作った側としては本当に嬉しい。全編通して観なくても、好きなところを何度でも観て欲しい。どこまで作り込んだのかを観て欲しい。そこに頼る作品です」。

“『攻殻』の4K化”は「不安だった」

 一方で、攻殻の4K化については、「不安だった」という。「攻殻はとにかく時間も予算もなくて、10カ月で作るしかなくて、予算も当時3億円くらいだったかな……。それなのにレイアウトに3カ月かけて、作画時間は正味3カ月ですよ。それでもレイアウトにこだわるべきだと考え、3カ月毎日終電までやってました。でも時間は全然足りなかった。公開時にリテイクが結構ありました。例えばセルがガタついてたり、テクニカルなミスが山ほど残っている作品。原盤をリニューアルするたびにゴミを消したり、微妙に修正をしてきた。それでも、イノセンスとは緻密度が桁違いなので“4Kにしたら粗が見えちゃうのでは”と心配でした」。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 「だって今でこそ“デジタルを取り入れた初のアニメ”とか言われてますが、予算なくてCGなんて40カットくらいしかない。CGっぽく見えるだけで“ビデオエフェクトかけただけ”みたいなシーンもあります。看板やポスターが沢山あるシーンなんて、あれ、パソコンでパースつけた看板をプリントアウトして、ちょん切って、沢山貼り付けてるだけなんですよ(笑)。ちょっと擦って色あせた感じを出したりとか……超アナログです(笑)。だから手作りの良さ、手仕事の良さ、ある種の“執念”がこもっているのですが」。

 そんな不安の中で、キュー・テックが試作した4K/HDRの映像をチェックしたという押井監督。しかし、「意外にも良くて、驚いた」とのこと。

 「当時作ったものとは明らかに違うのだれけど、フィルムの乳剤による、35mmの情報量の多さは想像を越えたものがある。デジタルは、画素数が決まっていて、それを基準にものを考えるけど、フィルムは違う。ラッシュの時に観たとしても、ネガの情報量の内、どれだけ見えているのかは、誰にもわからない。それはフィルムが持っている魔法の力ですね」。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 製作当時の映像と4K/HDRの違いについて押井監督は、デジタルで作られたイノセンスと比べ、セルアニメである攻殻は「曇った世界だった」と言う。「セルアニメは、背景にセルを5枚、6枚と重ねていって、上からガラスで押さえて撮影するんです。そこにカメラマンの腕があって、重ねる枚数はシーンによって違う。攻殻では最高8枚まで重ねました。すると、(シーンによって)厚みが違う。なるべく平らにするためにスキマに紙を入れたりもする。そしてセルを重ねると、枚数によって色も変化する。こうした変化をなじませるために、4種類か5種類のフィルタを使い分けました。だから攻殻という作品は、微妙にディフュージョン(拡散)がかかってる、曇った世界なんです。でも4K化したら、ものすごくクリアになって、フィルタが全部吹っ飛んじゃった(笑)。でも、(それゆえ)手書きの線が持っている力、動画の線がそのまま写っていると感じられる」と語る。

 一方で押井監督は、「当時と別物であっても構わない」というスタンスだという。「映画って、劇場で観るのと、テレビ放送で観るのと、物理的には全然別物。映画だって上映開始直後から、時間経過で変質していく。けれど、見え方は違うかもしれないけれど、(観た人の中に)残るものは同じではないか? と思う」。

 「フィルムを観て育った人間は、今でも35mmのネガフィルムを頭の中で再現しながら仕事をしたり、脳内補正をしながら観ている。でも、フィルムの情報量の全てを観ていたわけじゃない。もしかしたら半分も観ていないかもしれない。そのフィルムをスキャンして(情報を)引っ張り出すと、何が見えてくるかという話し。これは、生まれた時からデジタルで観ている人だと、また違うのだと思う。今の世代に向けては、これが(4K UHD BDに生まれ変わった攻殻が)本命だと言えると思う」

(C)2004 士郎正宗/講談社・IG,ITNDDTD

 デジタルで作られたイノセンスは、攻殻を超える情報量の多さにこだわった。「例えば人形(ガイノイド)の顔がアップになっていくシーン、絵を拡大するだけだと、線が太くなり、色もフラットになってしまう。そこで、線や肌のテクスチャもシームレスに変えていった。眼の中に映り込む情報量もアップになるとどんどん増える。オープニングで、細かなパーツが肌に吸着していたり、光ファイバーの中で玉虫色の光が変化するようなシーンはDVDではまったく見えなかった。スクリーンでようやく見えた。ジブリみたいにアニメーターの特権世界を再現するなら、“動く”という情報に勝るものはない。でも、イノセンスはその逆をする作品。だからジブリの作品をBDや4Kで観る必要はない(笑)。僕の作品は、メディアが変わるたびに何かを追求しないと、残していく意味がないと思っている」という。

キュー・テックの今塚誠氏

 キュー・テックの今塚誠氏は、攻殻機動隊の4K化作業の流れを説明。「マスターポジフィルムからのスキャンは、以前はHDで行なわれていましたが、今回はキュー・テックが所有するフィルムスキャナーで最大サイズの5K、16bitでスキャンしました。アーカイブという意味でも、高解像度でスキャンしています。そこからゴミ消しなどリマスターを経て、カラーグレーディングを行ない、SDRとHDR、それぞれのマスターを作りました」。

 「HDRグレーディングを行う上では、輝度の上げすぎによる破綻や色調変化などに気を配りました。フィルムの粒子補正やゴミ補正についてもそうです。SDRとHDRでは見え方が変わってきますが、SDRだと気にならないけど、HDRだと見えてくるノイズもあります。輝度の高い部分の粒子や暗い部分の粒子などシーンに対応した軽減をするために自社開発ツール『FORS(フォルス)』を使い、専門技師と何度も打ち合わせしながらクオリティを追い込みました」。

 比較的明るい部分については、「全体的にフレアが乗っているシーンが多いので、輝度を上げすぎると全体に白茶けてしまうので注意しました。終盤の多脚戦車との銃撃戦は、光の表現をしやすいシーンでしたので、輝度を上げています。ただ、単純に上げるとキャラの顔も白くなってしまうので、上げたいところだけマスクして上げています」。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT
(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 押井監督はイノセンスの公開時、一番気になったシーンがあるという。「終盤、バトーが海に潜って、“たこ焼き船”(ロクス・ソルス社のガイノイド製造プラント船)に殴り込みに行くところ。水中のシーンでエフェクト掛け過ぎちゃって、絵がモヤっているんです。赤い水中で、光を計算して作ったんだけど、現場と仕上げの工程で、すり合わせがうまくいかなかった。エフェクトをかけると情報量は劣化する。現場で100%の絵を作ってしまわず、エフェクトやグレーディングのための“のびしろ”を作っておくべきだった」とのこと。UHD BDではこのシーンがどのように見えるかも注目ポイントだ。

 押井監督は、UHD BD化を担当したキュー・テックの技術も高く評価。「基本は“おまかせ”です。メディアがコンバートしていく時は、技術者の世界。監督として果たせる役割は、映画として責任を持つ事。“いいと思う”“自分の範疇に入っている”と言うことですね(笑)。チェックの日は、覚悟を決めて江面と齋藤と3人で観に行ったんですが(ビジュアルエフェクト担当の江面久氏、齋藤瑛氏)、3人とも想像していた以上のもので、安心して喜んで、僕は昼からビール飲んで帰りました(笑)。皆がハッピーになったと思います」。

押井監督が感じる“アニメにおけるHDR”

 これまでのアニメでは“明るさ”を表現しようとすると、白っぽくなっていくというジレンマがあった。HDRは、そんなアニメの表現を拡張する技術でもある。押井監督は“アニメにおけるHDR”について、技術的な面だけでなく“自分が何を表現したのか”が大事だと語る。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 「僕の作品の色やエフェクトは、全面的に信頼している江面と齋藤に任せています。彼らの流儀は、たぶん業界のスタンダードでもないと思いますが(笑)。そもそもデジタルエフェクト専門の社員がいるスタジオは少なく、Production I.Gはそれがやれている。けれど、現在、2人の能力を100%活用できているかというと、そうではないと思う。彼らの能力をフルでフィードバックできる現場があるのかという話しになる」という。

 「『スカイ・クロラ』の時は、キャラクターの肌の色をカット毎に、絶えず背景に合わせて変えていった。イノセンスは、“冥府の世界”なので、可能な限り(肌色は)白くしようとした。けれど、白の中に、見えなくてもいいから色の情報は入っている。撮影の時にそれがわからなくても、データとして持っていればいいと考えた。スカイ・クロラの時はまた違って、3次元の戦闘機に、2次元のキャラクターを画として馴染ませる色にこだわった。コクピット内で、立体的に動きながら、それによって影が横切るようなシーンでも、戦闘機の重厚感・マテリアル感を出しながら、キャラは2次元なので、色的にマッチしないと全部が破綻してしまう」。

 「HDRに関しても、“次に何をやるか”ですね。そこで改めて考える事になる。それに、(HDRの処理を行なう)ソフトひとつとっても、時間が経つと環境は変わってしまう。アニメだと作るのに3年かかりますが、作り始めた時と、終わる時で、環境がまるで変わってしまうって事はよくあります。つくづく際限がない仕事だと思います(笑)。いくらやっても、これでいいんだって事はない。だから“自分は何をしたいんだ”という風に考え方を変えるしかない。あとは江面達のような名人達に任せるしかないですね」。

 「それにしても、こうして振り返るといろんな事をやってきたんだな、感慨にふけります。攻殻の時はアナログで、紙をちぎって、ブラシをかけて、そういう事を一緒にやった人間の顔が思い出せます。デジタルになると、それは見えにくくなる。でも“デジタルは技なんだ”と思います。技だからこそ、その人がいないとできない。オートマチックにする事がデジタル化ではないんだと思いますね。以前はデジタル化するとアニメ作りが快適になるとか言われたけど、労働強化にしかなってないんじゃないかと(笑)」。

「『天使のたまご』や『スカイ・クロラ』、『アヴァロン』も4K化したい」

 イノセンスでは、4K化だけでなく、音声もリニューアル。新たにDTS:X(7.1.4ch)も収録し、音声特典として、映画サラウンド音声を通常のヘッドフォンやイヤフォンで楽しめるDTS Headphone:Xトラックも収めている。

 「サウンドリニューアルの効果が高いのは、『機動警察パトレイバー 2 the Movie』でやったので知っていました。だから可能ならやりたかった。イノセンスは特にやりたかったですね」。

 オブジェクトオーディオについては、「実写版の『パトレイバー(THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦)』の時に、Atmosで作りましたが、今でも、日本(の家庭に)に(Atmosに対応した環境が)何軒あるんだという状態です。理想的なリスニングルームがない人は、ヘッドフォンで聴くしかないですが、それならヘッドフォンにお金をかけていただく、これがいいんじゃないかと思います」。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 「本音を言えば、リニューアルしたい作品は他にもいっぱいあります。サウンド面では、スカイ・クロラなんて、あれこそAtmosとかにするべき作品ですね。4K化では、天使のたまごを4Kでやりたい。あれは暗部に信じられないくらい情報が入っている。作っている時は、予算とか、売上がどれだけいったか気にしますが、やっちゃった事に関しては忘れます(笑)。作品のリニューアルは、面白いので大好きなんです。チャンスがあればやりたいですね。天たま、スカイ・クロラ、アヴァロンだって、デジタルリニューアル、音もいじりたいという気持ちがあります。御先祖様万々歳!とか立喰師列伝は4Kでやる意味ないですが(笑)。リニューアルすると、その作品がたぶん蘇る、もう一度魂が入って、過去の作品じゃなくなる。小説なら加筆できますが、映画はなかなかないですからね。それが、デジタル化して(映画が)データになった良さでもある。

 「クローンを続々と生み出せる事については、“どこが悪いんだ”と思ってます。“オリジナルを尊重する”って人もいますが、作り手よりも、お客さんの方がオリジナルにこだわっている。映画館だって、上映三日目と上映最終日は別モノになってます。観るたびに変わるもので、オリジナルなんてどこにもない。続々とクローンを生み出すべきだし、上映用にプリントする時点で、映画の本質はクローンですよ。(そこから)技術の力で引っ張り出せるなら、引っ張り出してみたい。ホントの顔はどんなものなのか。純然たる興味ですね。だからこそ、“がんばって緻密なものを作ってよかったなぁ”と思います。(今後のためにもUHD BD版は)売れて欲しいです。売れてさえくれれば、(リニューアル用の)予算を出してだしてもらえるので(笑)。UHD BD版は、ぜひ“いいモニタ”で見てください、僕も新しいテレビ買います」。

(c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

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