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Adobe、新世代ビデオ編集アプリ「Project Rush」。マルチデバイス&新UX
2018年6月25日 07:40
Adobeは、6月19日(米国時間)に新しいビデオ編集ソフト「Project Rush」(プロジェクトラッシュ)を発表。米カリフォルニア州アナハイム市のアナハイム・コンベンションセンターで20~23日に開催されたVidconで、「Project Rush」のデモを行なった。
Project Rushとは、どのような機能を持っているのか、また、Adobeのビデオ編集ソフトウェア「Premiere Pro」との違いはどこにあるのか、VidConの取材で分かったことからお伝えしていきたい。
Adobeの新世代プラットフォームで作られるProject Rush
「Project Rush」は、Adobeがゼロから開発した新しいビデオ編集アプリだ。Adobeは「Project ~」と名付けるときには開発中のベータソフトウェアであることを示しており、後にLightroom CCとして発表されたソフトウェアもベータの時には「Project Nimbus」(プロジェクトニンバス)、Dimension CCもベータの時には「Project Felix」(プロジェクトフィーリックス)として呼ばれていたのと同じ扱いになる。
Project Rushは、現在Adobeが導入している新世代ソフトウェアフレームワークに基づいて作られている。この新しいフレームワークはLightroom CCやDimension CCでも利用されているもので、クラウドストレージやAdobe Senseiといったクラウドを活用することが出来るようなベース部分と共通のUXがあり、その上で各アプリケーションの機能などが実装されている形になっている。このため、今回のProject Rushも、Lightroom CCやDimension CCと共有のUXになっており、それらのソフトウェアを使っているユーザーにとっては見慣れた操作性となっている。
余談になるが、この新しいソフトウェアフレームワークに基づいているソフトウェアがどれかは、アイコンで見分けることができる。Creative Cloudのアプリリストを見ると、アイコンが角張っているのと、アイコンの角が取れていて丸まっているものがある。この丸まっているものが、新しいソフトウェアフレームワークで作られており、現在ではLightroom CC、Dimension CCやXD CCが該当する。
Rushの特徴はマルチデバイス、新UX対応、Premiere譲りの編集機能
Project Rushの特徴を大きく言うと、次の三つになる。
(1)マルチOS、マルチデバイスに対応
(2)タッチにも対応するなど新世代の直感的で使いやすいUXになっている
(3)Premiere ProやAfter Effect譲りの様々な効果が用意されている
Project RushはAdobeの新しいソフトウェアフレームワークをベースにしているため、AdobeのCreative Cloud、そしてAdobe Senseiといったクラウドサービスが最大限利用できるようにないるほか、OSに依存せず、容易にWindowsやmacOSなどのPC系OSやiOSやAndroidといったスマートフォン系のOSに対応可能になっている。このため、Project RushではPC系OSとスマートフォンOSで、OSに依存する以外の部分ではほぼ同じ機能を実現している。
また、新しいソフトウェアフレームワークには新しいUXの仕組みが入っており、タッチ操作や直感的な操作が、従来のローカルアプリケーションよりもやりやすくなっている。これらは既にXD CCやLightroom CCなどで導入されていたものだが、そうした新世代のアプリケーションと同じUXがRushにも導入されている。
そしてPremiere Pro CCやAfter Effect CCといったこれまでの動画編集ソフトウェアで培われてきた各種編集機能は、Rushにも搭載されている。例えばカラー編集、タイトル挿入は、強力なプリセットが用意されており、ユーザーがよりプロフェッショナルな使い方をしようとすると、ある程度まで高度な編集も可能だ。
これにより、初めてアプリケーションを使うユーザーには直感的に使えるので難しいことを考えなくても使うことができる。またプロフェッショナルユーザーでもある程度の段階までは高度な編集も可能だ。
カメラを使って動画を取り込み可能
PC系OS(Windows、macOS)とスマートフォン系OS(iOS、Android)でもほぼ同じ機能を実現していると述べたが、OSに依存する部分では違いがあるとも説明した。
その中でも大きなものは、リアルタイム撮影機能とファイルへの対応の違いがある。Project Rushにはカメラの機能を持っており、これを利用してデバイスに内蔵されているカメラを利用して撮影して、それをタイムラインに直接取り込むことが可能になっている。SNSに動画を上げたい場合には、スマートフォンやタブレットを利用して撮影してそれをデバイスで直接編集してあげたいというニーズがあるので、こうした機能が用意されている。それに対して、主にmacOSではOSやハードウェアにリアカメラが用意されていないので、この機能には対応していない(WindowsはSurfaceのようにWebカメラだけでなくリアカメラが用意されているデバイスがあるが、Windowsも同じ扱いになっているようだ)。
もう1つの大きな違いは、PC系のOSではどんなファイルの入力にも対応できるが、スマートフォン系のOSはMPGE-4 AVC(H.264)にしか対応していないという点だ。AdobeによればこれはOS側の制限に依存しているということで、MPEG-2、AVIやWMVなどH.264以外の動画をライブラリにインポートしたい場合にはPCから作業を開始する必要がある。
ただし、それをAdobeのCreative Cloudを利用して同期は可能で、その場合にはMPEG-4 AVC以外の動画(例えばMPEG2やAVIなど)は1080pのMPEG-4 AVCにトランスコードされてから同期がかかる。PCでは解像度が2K、4K、8Kだろうが、あるいはMPEG-2、WMVであれども、OSがサポートしていればインポートできるので、古い形式の動画を編集する場合にはまずPCで読み込むという使い方になるだろう。
なお、PCで読み込んだデータがモバイルデバイス側に同期されるのは、プロキシ映像と呼ばれる作業用のサイズの小さなファイルになるため、モバイルデバイス側で編集する場合でも快適に作業することができる。最終的に出力するときには、元のファイルがクラウドからダウンロードされ、エンコードされることになる。
なお、出力に関してはローカル保存のほか、SNS(YouTube、Facebook、Instgram、Twitterなど)が用意されている。基本的にはSNSへの出力をターゲットにしていると考えることができる。なお、ローカルに出力する場合はMPEG-4 AVCに限られており、2K、4Kまでの出力が可能だ。
プロジェクトはRush>Premiere Proの片方向のみ対応。Premiere Proはプロ向け
Project Rushの機能を大まかに見てきたが、大事なことはこのProject Rushが出たからといってPremiere Proがなくなるという訳ではないという点だ。
Project Rushには、Premiere Proと同じように「プロジェクト」という、動画の作成課程(複数の動画を含むタイムラインや編集履歴など)を保存する機能がある。Project RushはPremiere Proで読み込むことができるようになるが、その逆(Premiere ProのプロジェクトをProject Rushで読み込む)はできない。つまり、プロジェクトはProject Rush>Premiere Proへと一方向でしか移行することができない。
AdobeはPremiere ProをProject Rushの上位バージョンと位置づけており、Project Rushには無い機能(キーフレームやトランジションなど)が必要な場合にはPremiere Proを使って作業して欲しいと考えている。つまり、Premiere Proはプロフェッショナル向けの動画編集ソフトウェアとしてProject Rushと併存するということだ。
ではProject Rushはどんなユーザー向けというと、スマートフォンで動画を編集してSNSにアップロードしたいというユーザーや、YouTuberのような自分で撮影した動画を自分で編集してSNSなどにアップロードするセミプロがターゲットになると言えるだろう。放送局などでPremiere Proを利用して編集をプロフェッショナルに行なっているユーザーにはこれまで通りPremiere ProをというのがAdobeの考え方になる。
Project Rushは現在ベータテスターを募集しており、AdobeのWebサイトから申し込むことができる。現時点ではWindows/macOSのPC版、そしてiOS(iPhone/iPad)版が提供されている。Androidに関してはより幅広いディスプレイやカメラに対応する必要があるため提供が遅れており、今年の終わりまでに提供予定というスケジュールになっている。製品版でどんなブランドになるかは現在明らかではないが、Project FelixやProject Nimbusが最終的に製品ブランド名が与えられたことを思い出せば、当然Ruchにも何らかの名前が割り当てられるだろう。
なお、ベータテスト中は無料での提供となるが、製品版ではCreative Cloudの一部、もしくは単体のサブスクリプションとして提供される予定だ。