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Premiere ProがVR180対応、自分の顔が瞬時にアニメキャラ化
2018年9月12日 22:01
アドビシステムズは、Premiere Pro CCやAfter Effects CCなど「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」のビデオ/オーディオ製品の次期アップデートを発表した。オランダで現地時間13日に開幕する放送機器展「IBC 2018」に合わせたもので、'18年後半に提供予定。
Adobe CCのビデオ/オーディオ製品には、映像編集/制作ソフト「Premiere Pro CC」や「After Effects CC」、オーディオ/波形編集の「Audition CC」、アニメーション作成の「Character Animator」が含まれる。
Premiere Pro CCの主なアップデートとして、新たにGoogleの180度動画フォーマット「VR180」での書き出しに対応、After Effects CCも同フォーマットをサポート。Oculus Riftなどのヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いたVR映像の編集機能も拡充するなど、イマーシブ(没入感)映像の制作・編集機能を強化する。
色調補正用の「Lumetriカラーパネル」を、After Effects CCとともに機能拡張する。また、インフォグラフィックなどの制作を容易にする「データ駆動型モーショングラフィックテンプレート」も拡充する。
Character Animatorは、新たにAIのAdobe Senseiのフレームワークを活用した「キャラクタライザー」を搭載。PCに接続したカメラでユーザーの表情を認識し、絵画調などのタッチに加工した顔画像を3Dアニメキャラクターとして利用できる。
After Effects CCは、3D/VR映像でタイトルロゴなどの奥行き表現を行なうための「深度パス」生成に対応。また、パペットツールを強化し、パペットをより細かく自然に動かせるようにする。360度映像などのイマーシブ映像の編集機能も強化。新しいJavaScript ExpressionEngineにも対応する。
このほか、Auditionはインテリジェント オーディオ クリーンアップツールで録音音声からノイズや残響(リバーブ)を除去可能になる。
新しいビデオ編集アプリ「Project Rush」(プロジェクトラッシュ)の情報も公開。YouTubeなどで動画配信するクリエイターを主なターゲットとし、'18年中に提供開始予定。
Creative Cloudの利用料金は、各ソフト月額2,180円。Photoshop CCやillustrator CCも含む20種類以上のソフトやツールが利用できるコンプリートプランは月額4,980円。100GBのクラウドストレージも利用できる。
VRなどイマーシブ機能を強化。Premiere ProがHEIF対応
Premiere Pro CC次期バージョンで書き出せるようになる「VR180」は、Googleが提唱する180度動画のフォーマットで、360度動画のような全方位ではなく、前方向の180度のみを撮影/視聴する。YouTubeが既に対応している。VR180対応カメラの拡がりを受け、Premiere Pro CCとAfter Effects CCで同フォーマットに対応する。
Premiere Pro CCのHMD装着時の編集機能も拡充する。現行バージョンは、HMDを装着して360度動画のプロジェクトを再生・確認できるが、次期バージョンでは新たに「空間マーカー」に対応。HMDコントローラでタイムライン上に空間マーカーを打ってコメントやメモを付けて編集画面に戻る、クリックした場所に再生ヘッド(現在の再生位置)を持ってくる、といった操作が行なえるようになる。
シアターモードも新搭載。HMDを装着して映像表示する際、360度(または前方180度)だけでなく、VR空間内の平面に2D表示も選べるようになる。制作した360度映像を再生する際、テレビなどの16:9や4:3の2D画面に映すことを想定したモードだという。
Premiere Pro CCでは、対応フォーマットも強化。シネマカメラのALLI「Alexa」ラージフォーマット(LF)による4.5Kネイティブなどの撮影素材に対応予定。また、Mac版では新たにiOS 11搭載のiPhoneなどで撮影したHEIF(High Efficiency Image File)形式のファイルをサポート。H.264/HEVCについては、新たにIntelのアクセラレータに対応し、より高速にデコードできるようになる。
Lumetriカラーを強化したPremiere Pro CC/After Effects CC
Premiere Pro CCとAfter Effects CCが備える、色調補正用の「Lumetriカラーパネル」には、「色相対彩度」、「色相対色相」、「色相対輝度」、「輝度対彩度」、「彩度対彩度」という5つの軸のパラメーターを追加する。従来の色相や彩度の調整機能も利用できる。
例えば、色相対彩度のパラメータの線をマウスで上下に動かすことで、空の青や人物の肌色といった、指定した色の彩度だけを調整できる。
色相対色相のパラメータでは、例えば、人が着ている服の色だけを変化させるといった、画面内の特定のカラーを調整できる。
また、複数のLumetriカラー設定を使ったエフェクトをかけることも可能になる。例えば、映像の中のあるオブジェクトにマスクを切ることで、Lumetriカラーによる調整を画面の全体にかけつつ、別のLumetriカラー設定を画面の中の一部にかけるといった使い方ができる。
Character Animator
Character Animatorのキャラクタライザーは、AIのAdobe Senseiを用いた新機能。従来から提供している、人物の笑顔や驚いた顔といった複数の2D静止画を用意してAIに読み込ませ、Webカメラに映った人の顔の動きに合わせてアニメキャラを生成する機能を強化。新たに犬や絵画調といったさまざまなプリセットのタッチを適用できるようにして、キャラの表現の幅を広げる。
声や口の形も読み込ませることで、画面内のキャラの表情のバリエーションが広がる。顔を斜めに向けた時なども、あらかじめデータを読み込ませておけば対応する。ただし、Webカメラが捉えている人物が真横を向いても、画面のキャラは真横を向くことはできない。
After Effects CC
After Effects CCの次期バージョンは、Classic 3DおよびCinema 4Dレンダラーで深度パスの生成に対応。After Effects CCで作ったタイトルロゴなどの素材に、深度マップ(奥行き分布)の情報を付与し、エフェクトとして掛けられるようになる。実写のボケにロゴをなじませるといった使い方で有効だという。
パペットの動きをより自然にする、高度なパペットツールとして「パペットベンドピンツール」と「パペット詳細ピンツール」を新たに追加。変形ピンでパペットの形や動きに柔軟性を付与できるほか、アニメをよりリアルに動かすためのメッシュ編集ツールも追加している。ピンが増えたことにより、ピンの色分けにも対応し、どこに何のピンを置いたか分かりやすくなる。