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'19年のJリーグ4K配信へ。DAZNがダウンロードやドコモ以外のキャリア決済も
2019年2月15日 17:52
スポーツ映像配信のDAZNは15日、報道陣に対して今後のサービス強化について説明。日本市場を統括するマーティン・ジョーンズ氏が、現在までの機能強化や2019年以降の施策などを紹介した。この中で、4K配信を'19年のJリーグから順次開始することや、現在のNTTドコモ以外の携帯電話キャリア決済にも対応することなどを明らかにした。
最初にDAZNの体制変更について説明された。これまでDAZNは英Performグループの1つのサービスとして展開してきたのに対し、新体制では「DAZNグループ」として独立。BtoBビジネスの「PERFORM CONTENT」と、BtoCの「DAZNグループ」の2体制となり、両者が連携してビジネスを展開。グローバルでは'18年9月から発表されていたが、日本市場の組織も変更され、今回発表された。
これによる大きなサービス変更などは現時点では無いものの、当初BtoCとしてスタートしたPerformグループが、DAZNを1つのグループとすることで、さらにB2Cへ注力することを示すものだという。
複数競技の視聴者が拡大。日本人選手や海外超大物移籍に大きな効果
直近のグローバル展開としては、2018年にイタリアとアメリカでサービスを開始。2019年にはスペインやブラジルを含む数カ国での開始を予定。スペイン、ブラジルではサッカーなどの人気コンテンツを中心に展開するという。中期的には、2020年までに20カ国でのローンチを目標としている。
DAZNの特徴としては、従来の有料テレビ放送視聴者が50代以上など比較的年齢層が高めというのに対し、「DAZNは35~44歳が大半。スポーツが若い世代に届けられることにつながっている」という。
ユーザー数は公開していないが、1ユーザーあたりの視聴時間は、開始当初の2016年から、2018年は約3倍に伸長。視聴する機器を複数使うマルチデバイス利用は51%に拡大(前年35%)した。なお、テレビのみという人は25%(前年23%)に増えたのに対し、モバイルのみは11%(前年28%)となり、端末を使い分けて視聴している実態が浮き彫りになっている。
複数のスポーツを楽しむ人は41%となり、前年の38%に比べて増加。例えばプロ野球中日ドラゴンズの試合を視聴した人のうち31%はJリーグ名古屋グランパスの試合も視聴。また、日本ハムファイターズの試合の視聴者は36%が北海道コンサドーレ札幌の試合も観ているという。
2019年のコンテンツ強化は、目玉としてサッカーの英プレミアリーグ2019-20シーズンの独占配信が決定。同シーズンから3シーズンに渡り全試合を独占配信する。また、2019年ラグビーワールドカップについては、ライブではないがハイライト配信を9月末~11月にかけて実施する。
日本人選手が活躍するコンテンツにも注力。世界ランク1位となった大坂なおみ選手が出場するWTAツアーは独占配信で、2月17日~24日(日本時間)のドバイ デューティーフリー・テニス選手権や、3月のBNPパリバ・オープン、マイアミ・オープンでの活躍が注目される。
米MLBは、大谷翔平選手、菊池雄星選手、田中将大選手らの試合を配信。エンゼルス、マリナーズ、ヤンキース、ドジャースを中心とした主要試合が観られる。
プレミアリーグ以外のサッカーも、欧州のUEFAチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグをはじめ、長友佑都選手に続き香川真司選手も移籍して注目されているトルコのスュベル・リグなどを配信。両選手の移籍で、独占配信中のスュベル・リグは視聴が伸びているという。
2019-2020シーズン海外サッカー配信一覧/2019年2月15日時点
・プレミアリーグ(イングランド)
・UEFAチャンピオンズリーグ
・UEFAヨーロッパリーグ
・リーグアン(フランス)
・スュペル・リグ(トルコ)
・ラ・リーガ サンタンデール(スペイン)
・セリエA TIM(イタリア)
・コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)
・FAカップ(イングランド・カップ戦)
・DFBポカール(ドイツ・カップ戦)
・クープ・ドゥ・フランス(フランス・カップ戦)
・テュルキエ・クパス(トルコ・カップ戦)
・Aリーグ(オーストラリア)
・エールディヴィジ(オランダ)
4K対応などJリーグは高画質化。ダウンロード機能、ゴールシーンは見つけやすく
試合中継以外にも、プレビューやレビュー、ハイライトのほか、マルチ画面で楽しめるF1 ZONEなどのオリジナルコンテンツ、SNS連携などを強化していく。
2018年の技術関連の進化については、通信量を抑えるデータセーバー機能や、リマインダー機能、好きなチームのフォロー機能などを実装してきた。2019年には、当初予定より延期となっていたダウンロード機能を利用可能にすると説明。そのほか、スタッツ(チームや個人の成績)が試合を観ながら確認できる機能も予定。
DAZNは多くの4K対応テレビにアプリを提供しているが、4K/HDR対応など高画質化の予定について質問したところ、「技術的には可能で、Jリーグの数試合でテストも行なっている。『全試合をすぐに』とはならないが、今年は特に再生クオリティを高めていく。特にJリーグの画質は良いものになる」とした。
さらに、再生位置を示す画面下のシークバーで、ゴールシーンなど主要な場面をスムーズに探せる「ピックアップシーン」を提供。そのほか、同時開催されている複数の試合をライブで同時に楽しめるマルチスクリーン対応も進める。既にApple TVで提供している機能だが、他のデバイスでも利用可能にするという。
決済の方法も拡大を続けており、既報の通り1月にはオンライン決済のPayPal(ペイパル)に対応するなど、クレジットカード以外の決済も強化してきた。
2019年には、携帯電話キャリア支払いへの対応を強化。既にNTTドコモとはパートナーシップにより、月額980円で観られる「DAZN for docomo」を展開しているが、それ以外のキャリアとも連携してDAZN利用料を携帯料金とまとめて支払えるようにする。NTTドコモ以外とも連携することについてジョーンズ氏は「キーパートナーはこれからもNTTドコモ」として、特別な関係を継続することを強調した。
Jリーグとの連携については、土日だけでなく金曜日にも試合を行なう「フライデーナイトJリーグ」を支援することで、DAZNライブ視聴者も前年比80%増を実現。J1平均観客数は、10年ぶりに1万9,000人を超えた。また、J1観客の平均年齢は初めて前年比マイナスの40.1歳(前年40.8歳)となった。2019年のフライデーナイトJリーグは2月22日のセレッソ大阪VSヴィッセル神戸を皮切りに、年間13試合を予定している。
2018年は、海外の大物選手の加入も注目された。イニエスタ選手デビュー後のヴィッセル神戸は視聴数が1.8倍、トーレス選手デビュー後のサガン鳥栖は1.8倍に増加。海外からの視聴にも影響し、神戸に加入したポドルスキ選手の効果でドイツ(DACH)ではヴィッセル神戸の視聴数が8倍、J1リーグ後半戦の視聴が1.4倍まで増えるなど、国内外で影響があったという。
前述の通りユーザー数は公開していないが、ジョーンズ氏は「順調に伸びており、次の18カ月がビッグステップになる」と2020年オリンピックや2019年ラグビーワールドカップなどでのスポーツ全体の盛り上がりに期待を寄せる。DAZNはオリンピックの配信権は持っていないが、「消費動向やテクノロジーの進化にもインパクトがある」と好影響への期待を述べた。
日本市場については「ライトファンが多く、他に比べてライトファンと、(スポーツにお金を支払う)コアファンの差が大きい。日本で高めてきた認知を、いかに購買欲へつなげるかが課題。他のプラットフォームとの連携なども検討する。中長期的には、日本のコンテンツを他の国に展開することにもフォーカスする。日本市場のスポーツを盛り上げることは、OTTサービスだけでなくスポーツ業界全体で取り組む問題。DAZNとしても、ライト層とコア層のギャップを埋める取り組みの一役を担いたい」とした。