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“日の丸液晶連合”ジャパンディスプレイが、台湾・中国企業から800億円の支援

ジャパンディスプレイ(JDI)は12日、台湾のタッチパネル大手であるTPKと、中国・台湾の投資会社から構成されるSuwaコンソーシアムから、最大800億円の金融支援を受けると発表した。これにより、INCJ(旧産業革新機構)は筆頭株主ではなくなり、台湾・中国企業の傘下となる。

JDIは、INCJ、ソニー、東芝、日立の出資のもと、ソニー、東芝、日立の中小型ディスプレイ事業を統合して発足。液晶ディスプレイの“日の丸連合”として、2012年に事業を開始。ディスプレイの高精細化、低消費電力化、狭額縁化を実現するLTPSバックプレーン技術に強みを持ち、これをコアとした高性能液晶ディスプレイを開発・生産。スマートフォンメーカーや車載機器などに採用されている。

しかし、スマートフォンやタブレットのディスプレイでは、近年バックライトを使わない事で薄型化が可能なOLED(有機EL)ディスプレイへの置換が加速。JDIもOLEDへの経営資源の投入を図り、事業分野としての確立を目指しているが、「事業化のタイミングにおいて取組みを先行してきた競合他社に後れを取る状況」だという。

主要顧客はOLEDを採用したスマホ新機種の投入に積極的であるため、「顧客への販売が減少する可能性が生じている。また、スマートフォン市場の成長を牽引してきた中国経済の減速やスマートフォンの買い替えサイクルの長期化等により、スマートフォン市場の世界的な成長鈍化が生じており、当該成長の鈍化は今後も継続することが見込まれる」という。

また、中国の競合ディスプレイメーカーがOLEDを含めた技術の急速なキャッチアップや政府支援による生産能力の拡大により攻勢を強めており、スマホ向けディスプレイ市場における価格競争は激化。

こうした状況下で、JDIは2019年3月期通期において当期純利益で赤字を計上する見込み。「今後もこのような業績悪化が継続する場合には、更なる純資産の毀損が生じる可能性がある」ほか、足元の業績低迷に伴ってキャッシュ・フローも急激に悪化。「財務的安定性が中長期的に低下していくことが予想される」とし、「大規模な資本性資金の注入による抜本的な資金繰りの改善を実行しない限り、このような危機的な状況を解消することが困難であると判断した」という。

スポンサーの選定は、入札方式を採用。提供可能な資金の金額、その実施時期・実現可能性、スポンサーとして参画した後のJDIの経営・事業に関する考え方、中長期的な事業継続などを検討したという。

その中で、Suwaコンソーシアムが総額500~600億円の資金提供を実施する意向を表明。TPKとの液晶ディスプレイビジネスに関する業務提携、Harvest Techとの蒸着方式OLEDディスプレイの量産計画に関する業務提携により、JDIの課題であるスマホ向けビジネスの改善、蒸着方式OLEDディスプレイの事業化、コスト構造の改善などにも、当社と協力して取り組む意向も表明したという。

また、さらにJDIの資金繰りと収益性は悪化した中で、Suwaコンソーシアムは資金増額の要請にも応え、最大で800億円までの資金提供が可能と回答。JDI、Suwaコンソーシアム、INCJとの間で協議した結果、Suwaコンソーシアムをスポンサーとして選定することを決定したという。

Suwaコンソーシアム

今後はTPKとLCDの業務提携を行ない、互いのサプライチェーン、顧客基盤、製品ポートフォリオを活用・補完。両社LCDビジネスの強化・拡大を図る。

Harvestとは、OLEDで業務提携。JDIの技術を生かした競争力あるOLED事業の立ち上げに向け、Harvestと協議を開始する事で基本合意した。

一方で、INCJへの既存債務を長期性・資本性資金に切替え、財務体質を改善。大規模な長期性・資金の注入・リファイナンスによる財務的安定性を確保し、中長期的な事業の成長による企業価値向上を実現するとしている。

なお、資金の使用用途は、運転資金に380億円、研究開発費用に約92億円、蒸着OLED開発に50億円、VR/センサーなどの開発に約42億円、設備投資に320億円、蒸着OLED量産化に100億円、車載量産化投資に120億円、新事業設備投資に100億円を予定している。

資金の使用用途