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“世界最小 1.3gのワイヤレスイヤフォン”「GRAIN」クラウドファンディング

“世界最小ワイヤレスイヤフォン”を目指して開発が進められている「GRAIN」が、GREEN FUNDINGにおいてクラウドファンディングプロジェクトを開始している。目標金額は1,000万円で、7月24日現在は約590万円が集まっている。支援の受付は8月30日23時59分まで。支援プランの例として、通常価格から27% OFFの19,800円で購入できる限定300個のプランや、2個セットで30% OFF 38,000円の限定200個プランなどを用意している。配送予定時期は11月下旬~12月中を予定している。

GRAIN

多くのイヤフォンをデザインしてきたBATTLES DESIGNと、イヤフォンやIoT機器の企画開発を行なう岡田製作所がタッグを組んだ開発プロジェクト。最大の特徴はその小ささで、直径9.5mm、長さも18.5mmと、薬のカプセルとほぼ同じようなサイズ。完全ワイヤレスイヤフォンでは、ワイヤレス接続用のアンテナやバッテリーなどの部品を内蔵する必要があるが、それを搭載しながら圧倒的な小型化を実現している。

左が耳栓、右がGRAINの試作機。耳栓よりも小さい
中央がGRAINを収納・充電できるケース。口紅と同じようなサイズで、バッグの中でもかさばらない

超小型であるため、男女問わず耳の中に筐体がスッポリと収まり、イヤーピース以外の本体が耳に当たりづらく、痛みが出にくいという。また、耳穴に差し込みつつも、本体を少し横に寝かせるように装着する事で、耳の突起がストッパーになってホールド性を高めたり、装着したまま背もたれなどに耳を押し付けても痛みを感じにくいといった利点もある。

それを考慮し、採用しているイヤーピースはマッシュルーム型とした。この形状は、耳穴に対して垂直に挿入するだけでなく、少し寝かせる形でもフット感が良い形状だという。また、筐体のホワイトカラーを映えさせるために、透明度の高いクリアシリコンのピースになっている。

筐体のホワイトカラーを映えさせるために、透明度の高いクリアシリコンのピースになっている

重量は片耳約1.3g、両方合計でも2.6gと、1円玉3枚の3gよりも軽い。「装着していても着けていることを忘れるほどの小ささと軽さに仕上がっているので、ランニングなど身体を動かすようなシーンにも最適」という。

「トレンドとは真逆のイヤフォンを作ろう」

各社から様々な新製品が登場している完全ワイヤレスだが、機能や個性を多く盛り込むために、大型化しているモデルも多い。岡田製作所の岡田英之氏は、「そこであえて“皆の逆をやろう”を基本コンセプトに開発をスタートしました」と語る。

通話用のマイクや、ノイズキャンセリング機能などをあえて採用せず、シンプルさを追求。同時に、究極を追求するためにコストも考えず、「高精度な医療機器レベルのものも採用しています。通常のイヤフォンには“使っていてあたりまえ”な部品も、本当に必要なのか吟味し、最終的に同じ結果になるならば“不要だよね”と削減した」という。最終的には、「開発当初と比較して半分の数まで減らしている」という。

内部が見やすいようにスケルトン筐体を使った試作機

しかし、接続性や音質に手を抜いているわけではない。ユニットが小型なバランスドアーマチュアは、1つでは広い帯域が再生できないため、ダイナミック型をあえて採用。振動板に独自にコーティングを施し、応答性も向上させた。

また、既存の小型ドライバーでもGRAINに搭載するには大きすぎるため、さらに一回り小さい4mmのユニットを開発。小さくしつつも、音質を損なわない構造にするといった工夫も施されている。

左から4mmのダイナミック型ユニット、基板、バッテリ。指先と比べると小ささがわかる

音質や通信品質、低消費電力などを向上させた、QualcommのBluetoothチップ「QCC3026」を採用。対応するスマートフォンと組み合わせれば、左右イヤフォンと個別に通信するTWS Plusにも対応する。コーデックはSBC、AAC、aptX対応。プロファイルはA2DPをサポートする。

こうしたパーツを投入しつつ、小型化を実現するために、必要な部品を最も効率よく配置しつつ、全体の性能も下げないように工夫。開発スタート時点では基板直径は10mmだったが、試作を重ね、超高密度にICチップなど必要部品を実装する事で直径7.5mmまで小型化、約50%のサイズダウンも実現したという。

また、通常のアンテナを基板に実装すると接続が不安定で途切れるため、筐体の内側全周囲にLDSアンテナを内蔵。アンテナ強度を向上させると共に、接続安定性を高めた「QCC3026」を組み合わせている。筐体にボタンは無く、ケースから取り出すと自動ペアリングを開始するようになっている。また、IPX4相当の耐水機能も備えている。

バッテリー容量は片耳で19mAh。充電時間は約1時間で、再生時間は最大約3時間。充電ケースと合わせて約7.5時間の再生が可能。小さなイヤフォンがケースから取り出しやすくなるように、ケースカバーをスライドすると、イヤフォンの片側が持ち上がり、指でつまみやすいようになっている。

ケースカバーをスライドすると、イヤフォンの片側が持ち上がり、指でつまみやすいようになっている

国内製造にこだわり、開発、生産、組立、検品は国内で完結。サイズや搭載部品など、従来のイヤフォン開発の常識にとらわれない作り方をしているのが特徴で、「どうせ作るなら“馬鹿なことをやろう”とスタートした製品。今実現できる最高のものを、いち早く提案する事を目標に開発を進めています」(岡田氏)という。

収納・充電ケースを充電するためのクレードル試作機

音を聴いてみる

最終の音ではないが、試作機のサウンドをチェックした。耳に入れる前に驚くのはその小ささで、パッと見はイヤフォンに見えない。耳に挿入しても、この小ささ・軽さが効果を発揮する。イヤフォン自体の重さで外に抜けてこないため、首を振った程度では、イヤフォンが落ちる気配はない。

また、前述のように少し筐体を寝かせる事で、耳穴前のくぼみにイヤフォンが収まり、より安定度が増す印象だ。

4mm径ユニットの低域再生能力が気になるところだが、小さくて耳穴にしっかり挿入しやすいため、密閉度が高く、思いのほかしっかりとした低音が出る。また、耳全体にスッポリ蓋をするようなイヤフォン形状&サイズではないため、閉塞感も少なく、音にも広がりが感じられた。

とにかく軽くて小さいため、装着したまま横になるなど、リラックスした状態でも使いやすいだろう。音楽を聴くだけでなく、ラジオのようなトーク番組やASMR系のコンテンツ聴取などにもマッチするかもしれない。