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パナソニック4K有機ELテレビの世界初Filmmaker ModeとDolby Vision IQは何が凄い?

パナソニックは、「CES 2020」において、4K有機ELテレビの新フラッグシップシリーズ「HZ2000シリーズ」を発表。映像の新規格である「Filmmaker Mode」と「Dolby Vision IQ」の両方に世界で初めて対応することで、「視聴環境に合わせた最適な設定で、映像制作者が意図する画をそのまま表現する」点を最大の特徴としている。欧州で発売予定のほか、日本市場も「検討中」というHZ2000シリーズの進化点について、同社に聞いた。

HZ2000シリーズの65型(左)と55型(右)

65型「TX-65HZ2000」と55型「TX-55HX2000」の2つをラインナップする同シリーズの特徴をシンプルに表現すると「“HDR全部入り”で、どんな映像が来ても“プロ画質”で表示できること」とパナソニックは説明する。

“HDR全部入り”とは、Dolby Vision、HDR10+、HDR10、HLGのすべてをカバーしていることを指し、さらに「Filmmaker Mode」と「Dolby Vision IQ」に対応したのが大きな進化点。一方でハードウェア的には“ファインチューニング”と表現している。

有機ELパネルは、昨年モデル「GZ2000シリーズ」で初めて導入した、“自社組立”の方式を引き続き採用。ハリウッドのトップカラーリストがチューニングを行なった有機ELパネル「Master HDR OLED Professional Edition」とし、従来パネルに比べてピーク輝度が約20%向上したという。

映像処理プロセッサー「HCX PRO Intellgent Processor」を引き続き搭載。動画表示の解像度や輪郭再現の精度を高め、ノイズの少ない高精細な画づくりを可能にしたという。

音質についても、テクニクスブランドで培った音響技術を活かした高音質スピーカーを引き続き搭載。Dolby Atmos再生時は、内蔵スピーカーだけで天井反射も活用して立体音響を再現する。

「Dolby Vision IQ」は、テレビのある部屋の明るさに合わせて画質を最適化するという技術。HDR対応テレビを買った人が、実際に映像を観た時「(HDRコンテンツではない映像を明るい部屋で観て)画面が暗い」という声があったことを受け、実装したもの。

新しいHZ2000(左)は、Dolby Vision IQにより明るい部屋でも暗く感じないように自動調整
Vision IQの設定画面

コンテンツに含まれるVision IQのメタデータと、テレビの照度センサーをドルビー指定の範囲内で活用し、画面を最適な明るさに自動で調整。テレビには、以前から「周囲の明るさに合わせて画面の明るさを調整する機能」が存在していたが、それは“消費電力を抑える”エコ視点だったのに対し、Vision IQは、高画質化の観点から取り組んだのが大きな違い。「(マニア以外の人に向けても)HDRのハードルを下げる」狙いがあるという。

もう一つの「Filmmaker Mode」は、映画やテレビ番組を、制作者の意図した画質でテレビに表示するという画質モード。モーションスムージング(動き補間)などの後処理を無効にして、フレームレート、アスペクト比などについて元の素材に近い形で表示可能としている。

クリストファー・ノーランや、ジェームズ・キャメロンなどのクリエイターの声をきっかけに起きた動きで、UHD Allianceに参加するパナソニックやLG Electronics、VIZIOが同モードのサポートを発表している。

制作者の意向に合わせて、主にノイズリダクションやジャダー(フィルムの24p特有のカクカクした動き)の2つの処理をせず、“もっと映画っぽく”見せることを目的としたもの。逆に、これら2つの処理以外については比較的メーカーにとっての自由度が高く、色再現などについては規定はない。パナソニックのHZ2000シリーズでは、このモードでもテレビの照度センサーを活用して画質を調整する機能も備える。

HZ2000シリーズのFilmmaker Mode(左)でも、部屋の明るさに合わせた自動調整を行なう
Filmmaker Modeの設定画面。映像モードを選ぶように設定できる
映画以外のコンテンツもデモ。従来のGZシリーズと同様に、プロセッサーの処理能力を活かして明るさと色についても高精度に表現。水泳の水しぶきが光に当たった部分も鮮烈な明るさ
音質は引き続きテクニクス監修。基本的な構造はGZシリーズと共通だが、さらに音質チューニングを行なったとのこと

テレビの高機能化で複雑さも増している一方、コンテンツについては放送やUHD BDだけでなくネット配信作品のHDR対応も増え、体験できる機会は拡大しつつある。こうした中、4K/HDRそのものの良さを、マニア以外の人もわかりやすく感じられるように“HDRのハードルを下げる”機能が有機ELテレビの最上位シリーズに搭載されたことは、4K/HDRテレビの成熟を指す一つの動きと言えそうだ。