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「シドニアの騎士 あいつむぐほし」、東亜重音トリオがDolby Atmosを語る

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

6月30日にグランドシネマサンシャインにて実施された、映画「シドニアの騎士 あいつむぐほし」舞台挨拶付き上映のイベントレポートが到着した。

舞台挨拶には、「シドニアの騎士」と同じく弐瓶勉 原作漫画による映画「BLAME!」の舞台挨拶以来となった<東亜重音トリオ>、吉平"Tady"直弘監督、瀬下寛之総監督、岩浪美和音響監督が登壇した。

左から岩浪美和音響監督、吉平"Tady"直弘監督、瀬下寛之総監督

「セカンドシーズンが終わったのが2015年でしょ? あいだ空きすぎじゃない?」と話す岩浪音響監督に、TVシリーズの第1期では編集、第2期で副監督をつとめ、完結編となる本作で監督をつとめたTady監督は「僕の成長を待っててくれてたんですよ、きっと」と受けつつ「自分自身がこの作品が愛着があって、(監督を)やりたいというふうに言っていたら、是非というような形で決まりました」と、監督をつとめることになった経緯を説明。

さらに、「『BLAME!』の公開時に「是非シドニアの続編やってください」といったファンの方からの声がたくさんあって、じゃあシドニアやろうよ、と」続編が決まった経緯を明かしたTady監督。

「『BLAME!』も、「シドニアの騎士」での劇中劇を作ったらファンの皆さんが盛り上げてくれたからこそ実現できて。『BLAME!』の時に「シドニアの3期はまだか」と言ってくださって、僕ら自身が「えーできるかな?」とか言ってたのに。本当に皆さんのおかげなんですよ」と語る瀬下監督に対し、「なので、ファンの方に背中を押してもらって出来た作品なんです」とTady監督は締め括った。

話題はDolby Atmosでの上映について。「ここの劇場は本当に音響が良くて、別の作品で調整に来たんですけど、何にもやることないですねっていうくらい本当に良い音です。平たく言うと日本一金がかかってますこの劇場!」とグランドシネマサンシャイン池袋をベタ褒めする岩浪音響監督。

Tady監督は「僕この劇場でシドニアを観たんですけど、映像もスタジオでチェックしているみたいだし、音もダビングでチェックしているみたいで、心が落ち着かないくらいでしたよ」と告白。「池袋は故郷、ここで生まれ育ったので池袋にこんな最高の劇場ができて幸せですよ」と語る瀬下監督は「良い音の劇場が増えるっていうのは、作り手からしたら最高ですよね」と作り手としての喜びを語った。

さらに岩浪音響監督から「Dolby Atmos祭りやろうよ。1日は俺祭りで。(手掛けたDolby Atmos作品が)8本あるので」と驚きの提案がされると、劇場からは拍手が巻き起こった。

「是非そういうのもやってほしい。せっかく素晴らしい劇場を作っていただいても、かける日本映画がないのがすごく残念で」と話す岩浪音響監督は「(Dolby Atmos作品は)邦画でまだ少ないから、もっと沢山作っていただかないといけないし、来ていただいたお客様にもアトモスいいぜ、もっと作品作ってって言ってくださったら一番です」と語った。

瀬下総監督はTady監督のDolby Atmosへのこだわりについて「試写で『シドニアの騎士 あいつむぐほし』を観てて、もうアトモス愛が強すぎる、この人の演出! と思いました。もし「あいつむぐほし」のコメンタリーとかがあるんだったら、“ここアトモス愛”っていうロゴが出てもいいくらい、あー、このカメラワークはアトモス愛だなっていうのを感じました」と話した。

それを受けたTady監督は「『BLAME!』の舞台挨拶の時に、アトモスをどうやったら使えますかっていうのを岩浪さんからちょこちょこ聞き出して、コンテマンにスピーカーがこことここの列にあるから、ビームはこっちからこっち側に向かって撃てって……」と細かく指示を出していたと言う制作時のエピソードを明かした。

そしてTady監督から岩浪音響監督へマニアックな質問が。「(音の捉え方として)オブジェクトというのがあって、それが動いて3Dの音響で音が移動していくんですけど、本作で一番オブジェクトが動いているシーンはどこですか?」との問いに対して、岩浪監督は「やっぱドッグファイトのところ。やっぱり宇宙で飛びながら宇宙船がビームを撃つシーンは、ぶっちゃけ一番回し甲斐があるよね」と答えた。

さらに、岩浪監督はDolby Atmosを備えた劇場の音響について「ざっくり説明すると、スピーカーがいっぱいあるでしょ? スクリーンの後ろにも5本入ってるんです。普通のスクリーンだと3本。天井にもついてるでしょ。これが1,000×1,000×1,000のグリットで組み合っていると。この劇場の中に10億個くらいのピンポン球くらいのものがびっちり詰まっているとして、その一個ずつに音を置くことが出来るんですよ。それくらい緻密に音が置けるんです」とその繊細さについて解説。場内で「うんうん」とうなずく観客が続出した。

また、Tady監督は劇中の隠れポイントを披露。「僕に似た操縦士が出てきます。操縦士のバリエーションが作れなくなってきて、お顔をください、とグラフィックのスタッフが作ってくれたんですけど、目立たないようにそっとモブで写っています」と話した。

「Tadyさんの顔はどの辺にいるんですか? ある程度ターゲットを絞っておかないと見つけられないじゃん」と岩浪監督。Tady監督が「扱いはモブですよ、たしか(スクリーンに向かって)左端かな?」と話すと、「皆さんもう1回観るしかないね」(岩浪監督)、「Tadyさんの解説付き上映会やればいいいじゃない? レーザーポインターで指しながら……」(瀬下監督)との提案に、再び拍手が巻き起こった。

イベントの後半にはTVシリーズ第1期の監督を務めた静野孔文監督からのビデオメッセージが到着。瀬下総監督がこの舞台挨拶のために撮影したメッセージ動画が上映された。

「Tadyさん、岩波さん『シドニアの騎士』大ヒットおめでとうございます。Tadyさんが第1期で編集をしていただいたことを懐かしく感じます。あの編集があったからこそ、この完結編が素晴らしいフィルムに出来上がったと感じました。本当にありがとうございます。岩浪さんも第1期から完結まで、素晴らしい音を本当にありがとうございます。劇場の皆さん、これからも『シドニアの騎士』の応援をよろしくお願いいたします」(静野)

瀬下監督は「静野さんと一緒に『シドニアの騎士』を観て、当時のスタッフ以外の新しいスタッフも居ますけど、本当によく頑張っているから、シドニアの系譜を継いでいってくれる流れがとても大切だし、シドニアの世界が物語と同時に続いていって欲しいなという、僕も一家族の気持ちでいるので、静野さんも喜んでいるし、同じ気持ちで応援しているという気持ちなんです」と『シドニアの騎士』シリーズへの気持ちを語った。

舞台挨拶最後のコメントでは、岩浪監督がまず「年内あと数本劇場作品をやります。発表になってないものもあるけど1本はアトモスで作ります。たぶんここでもかかるので、良い映画ばかりなのでぜひ観に来てください。よろしくお願いします」と話した。

続いて瀬下監督が「今日はお集まりいただいて感動しています、ありがとうございます。僕は個人的にやりたいことがありポリゴン・ピクチュアズを退社して3年が経ちますが、思い出すのは皆で頑張ってシドニアを作っていた頃ばかりです。いまも新作をこつこつ作っていまして、当時感じた楽しさを力にしながら、皆さんに少しでも喜んでもらえるものを作り続けています。また『シドニアの騎士』の関連を作品つくるとかになったら、とにかくずっと応援し続ける、外堀を埋めていくスタッフでありたいと思っていますので、今後もポリゴン・ピクチュアズと『シドニアの騎士』を何卒お願いします」。

最後にTady監督が「今日、やっと念願叶って皆さまの前でお話しさせていただけることになりました。『シドニアの騎士』は自分にとって特別な作品だったし、何よりも周年を燃やして作ってきた作品です。それを皆さんが10回も観たとか、たくさん気に入ってくださったり、コメントを書いて下さったり、コロナの時代で舞台挨拶がやりにくい中で、皆さんの気持ちを受け止めています。ありがとうございます。ちょっとずうずうしいかもしれないのですが『BLAME!』の時に言ったら叶ったので、皆さんの応援で「シドニアの騎士」スピンオフとか作りたいなと思いますので、引き続き温かく応援してくださったらと思います。今日はありがとうございました」と語り、イベントを締めくくった。