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デノン最上位ターンテーブル復活「DP-3000NE」。サウンドマスター山内チューニング

DP-3000NE

デノンは、アナログターンテーブルの最上位モデル「DP-3000NE」を10月上旬に発売する。価格は385,000円。サウンドマスター・山内慎一氏が開発初期から携わったターンテーブルとなる。カートリッジは別売。

デノンはもともと、“デンオン(DENON)”として業務用オーディオ機器メーカーとしてスタート。当時、放送局で音楽を流す時はアナログプレーヤーが使われていたが、放送局でレコードの再生が止まると、放送事故に直結するため、何よりも信頼性が求められていた。デンオンは、こうした放送局の厳しい要求事項をダイレクトドライブなどの技術でクリアし、NHKをはじめ、全国の放送局の99.9%以上の納入占有率を誇った。

そして、放送の現場で圧倒的な信頼を得ていたカートリッジ「DL103」をもって、1970年に民生市場に参入。民生市場でも人気を獲得し、その後、矢継ぎ早にアナログプレーヤーを発売。それが放送局用ダイレクトドライブサーボターンテーブル技術を民生用にアレンジした「DP5000」だった。

DP5000は技術的な優位性と、当時としてはユニークなデザインで大きな話題となったが、大学初任給が46,400円だった時代に、68,000円と高価でもあった。そこで「音楽という文化をたくさんの日本人へ」という信念から、1973年にDP5000/DP5500の性能を維持しながら、約40%のコストダウンを実現した「DP3700」を発売。このモデルが爆発的なヒットとなり、デンオンブランドのオーディオコンポーネントの基礎を築いた。

それから50年が経過し、「空席であったプレミアムレコードプレーヤーを、これまで培ってきた業務用アナログオーディオ機器の技術に基づいて造る。そして、より多くのアナログ愛好家が楽しめる価格で実現する」という想いのもとで開発されたのが、今回の「DP-3000NE」となる。

DP-3000NE

DP-3000NEも伝統に沿って、ダイレクト・ドライブ方式を採用。ダイレクト・ドライブには、回転ムラや振動が少なくクイックスタート、全回転数で負荷による速度変化がない、長時間安定動作、操作ミスをしても壊れにくいなど、様々な利点があるという。

最新モデルのDP-3000NEでは、3相16極のDCブラシレスモーターを採用。モーター制御方式は空間ベクトル・パルス幅変調(SV-PWM)方式で、回転制御はソフトウェアで行ない、ボリュームようなハードウェアによる調整は行なっていない。

回転数は、33 1/3回転、45回転および78回転に対応。LP盤やEP盤だけでなく、稀少なSP盤も再生できる。

トーンアームは新型で、白河工場にある膨大な量の設計図を見直し、OB設計者にもアドバイスをもらいながら新たに設計したという。精度を徹底的に追求しつつ、プレーヤーとして美しく見えるシンプルな外観にもこだわった。

アルミニウム製のアームパイプはデノン伝統のS字型。トラッキングエラーを最小化するために、カーブも入念な検討を経て新たに設計したとのこと。板バネを用いた接手によってアームパイプはフローティングしており、周波数特性におけるピークおよびディップを解消している。

カウンターウェイトは、16gまでのカートリッジに対応し、付属のサブウェイトを追加すれば、最大26gまでのカートリッジを使用可能。高さ調整機構も備えており、使用するカートリッジの高さやマットの厚みに合わせてアームを最適な高さにできる。アンチスケーティング機能には、トーンアームの軸に機械的に接触しないマグネット式を採用しているため、アームの感度に影響を与えないとのこと。

ヘッドシェルはアルミ製で、ユニバーサルタイプを採用。付属のアルミ製デノン・オリジナルヘッドシェルは、デノンのMCカートリッジにマッチするほか、市販のMMまたはMCカートリッジにも使用できる。

直径305mmのプラッターの素材はアルミダイキャスト。共振を抑えるために、裏側には3mm厚のステンレス板を銅メッキねじで固定した。プラッターの質量は約2.8kg。

チューニングはデノンのサウンドマスター・山内慎一氏が担当。裏側に取り付ける素材は、制振のためにゴムからスタートしたが、音が鈍くなるため、異種金属に変更。鉄や亜鉛、ステンレスに候補が絞られ、エンジニアの推奨は亜鉛だったが、山内氏が試聴の末にステンレスに決定。決定してからも厚み、サイズ、固定方法を試行錯誤し、現在のカタチになったという。ターンテーブルでも、山内氏が目指す“Vivid and Spacious”なサウンドを追求したとのこと。

キャビネットにはダーク・エボニー(黒檀)仕上げを施した高密度MDFを採用。共振に強いMDFの採用に加え、キャビネットの構造をボックスタイプではなく、基板やモーター、配線を収める部分だけを切削加工でくり抜いたソリッドタイプにすることで、共振を抑制した。

インシュレーターにも特徴があり、スプリングを使用したフットを新開発。接地面からの影響を抑えられ、あまりシビアにセッティングしなくても、良い音が楽しめるよう工夫されている。

電源部にはSMPS電源を採用。リニアトランスを使わないため、振動を避けられ、待機時の消費電力も削減。ワイヤリングにもこだわり、フリーワイヤーで5回転ねじりを採用。チャンネルごとにスポンジで固定か、フリーワイヤーか? など、様々な手法を試したという。

コンデンサーも徹底した試聴を繰り返し、電源用モーターと、モーター用デジタルライン/ゲートドライバーのコンデンサーを変更している。

ダストカバーも付属。外形寸法は500×394×185mm(幅×奥行き×高さ/ダストカバー含む)。重量は18.5kg(ダストカバー含む)。消費電力は4W以下。