邦画5社がアクトビラで映画配信「まるまる映画」開始
-角川、松竹、東映、東宝、日活が参加。HD版も
邦画会社5社は、デジタルテレビ用ポータルサイト「アクトビラ」を使った映画配信サービス「まるまる映画」を26日より開始する。
5社が協力し「まるまる映画」を立ち上げ |
まるまる映画に参加するのは、角川映画株式会社、松竹株式会社、東映株式会社、東宝株式会社、日活株式会社の5社。各社が厳選した名作や話題作を毎月6作品ずつ更新し、ストリーミングで配信する。視聴期間は1作品当たり48時間で、価格はHD作品の場合630円、SD作品の場合420円となる。映像形式はMPEG-4 AVC/H.264で、ビットレートはHDが約6Mbps、SDが約3Mbps。
第1弾として3月26日から配信開始するのは、角川映画の作品が「犬神家の一族(1976年版)」と「汚れた英雄」、松竹が「CASSHERN」、東映が「バトル・ロワイヤル」、東宝が「大学の若大将」、日活が「鷲と鷹」。
次回更新となる5月1日のラインナップは、“怪獣特集”で角川映画が「大怪獣ガメラ」、松竹が「宇宙大怪獣ギララ」、東映が「極道の妻たち」、「宇宙からのメッセージ」、東宝が「空からの大怪獣 ラドン」、日活が「大巨獣ガッパ」。
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5社が協力することで、合計12,000本のライブラリの中から、5月の怪獣特集のように編成に独自色を出し、邦画の魅力をアピールしていくという。なお、ダウンロード型での配信については「現時点では予定はない」としている。
東映は犬神家の一族と汚れた英雄を3月に配信 | 松竹はCASSHERNを用意 |
東映はバトル・ロワイヤル | 東宝は加山雄三主演の「大学の若大将」 | 日活は石原裕次郎の「鷲と鷹」 |
■ 邦画5社の代表がネット配信への意欲を説明
角川映画 荻野常務 |
東宝本社で開催された、記者会見には5社の代表が参加し、新サービスについての意気込みを語った。
角川映画の荻野和仁常務取締役は、「映画業界は、シネコンが浸透したとはいえ、興業的には2,000億円程度の規模。ビデオソフトの売り上げも2008年には前年比で縮小した。テレビもスポット収入が落ちてしまっている。ネット配信はこれらに続く、第4のマーケットとなる可能性がある。ビジネスのもう一つの柱になってほしいと期待している」とまるまる映画への期待を語った。
さらに、「視聴者により近い位置での配信サービスを考えてきたが、同時に業界の皆が同じようなことを思っていた。だから、共通ブランドを立ち上げてやっていこうとなった。映画会社自ら手掛けるのが“まるまる映画”。視聴者に直接日本の名画をお届けできるプラットフォームになればと考えている」とアピールした。
松竹 野田専務 |
松竹の野田助嗣専務取締役は、「ネット配信には比較的早くから取り組み、かつ早い段階で作品を配信に出してきた。まだ、DVDを置き換えるには至っていないが、配信が伸びるのは間違いないと、期待している」と語った。
東映の古玉國彦常務取締役は、VODサービスのシネマプラスなど、同社のネット配信への取り組みの歴史を説明。「ネット事業の立ち上げ時にはビジネスになるかはわからなかったが、頑張ってきた。事業に取り組んでから8年目を迎え、まるまる映画を用意していただけた。画期的な取り組みだと思う。映像配信は将来成熟していくだろうが、ビジネスになるよう頑張っていきたい」とした。
東宝の千田諭専務取締役は、「2002年ごろからネット配信については研究してきた。東宝は約2,000のタイトルをもっているが、マーケットが有益に形成されるかがポイントになる。2時間の映画をパソコンで見るというのはなかなか馴染まない。やはりテレビに配信されることで、この市場が伸びるだろうと思っていた。5社が力をあわせれば将来的には広がっていくだろう」とした。
日活の由里敬三取締役は、「2011年の地上デジタルテレビ移行に向けて、大画面テレビの普及が予想される。映画は大きな画面があってこそ。より個人的にパーソナルに楽しむという流れもある中で、あえてお茶の間に回帰するというコンセプトに共感した」と参加の理由を語った。
東映 古玉常務 | 東宝 千田専務 | 日活 由里取締役 |
アクトビラ 澤根社長 |
アクトビラの澤根浩一代表取締役社長は、現在のアクトビラ対応テレビの数を「約80万台。そのうち動画対応は27万の接続がある。つまり、すでに27万台がリモコンだけで映画を見られるようになっている。現在、映画、音楽、ビデオなど7,000タイトルが配信されているが、ここに日本映画が一斉に追加される。VODという新しい形態が、普及していくいいタイミングで、将来に期待している」とした。
(2009年 3月 25日)
[AV Watch編集部 臼田勤哉]