小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1200回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

もはやアクションを超えたカメラ。DJI「Osmo Action 6」

前モデルよりも若干大型化したOsmo Action 6

今年も好調だったDJI

2025年もDJIは多くの製品を展開した。本連載で取り上げたものだけでも、「Mavic 4 Pro」「Osmo 360」「DJI Mini 5 Pro」「DJI Mic3」「DJI Osmo Nano」「DJI Neo 2」と6製品もある。夏頃にはミラーレス一眼タイプの製品を出すのではないかと噂がたったが、どうやらガセネタだったようだ。秋には「Osmo Pocket 4」を準備しているという噂も出たが、今のところまだ発表はない。

さらに今年ギリギリになって、DJIはアクションカメラの新型を投入する。11月18日に発表となった「Osmo Action 6」は、正方形のセンサー、またアクション系カメラとしては初となる可変絞り搭載など、一風変わった設計となっている。

アクセサリー違いで多くのコンボパックがあり、もっとも低価格なスタンダードコンボで61,270円、最も高価格なのがVlogコンボで、81,400円となっている。

さらに「6」専用アクセサリとして、マクロレンズ、NDフィルターセット、FOV BOOSTレンズも用意されるなど、アクセサリー類もかなり充実している。

今回はこれらのアクセサリーも一式お借りして、「Osmo Action 6」での撮影を試してみた。

微妙に変更されたデザイン

Osmo Action 6は前作Osmo Action 5 Proより全体に2ミリほど大きくなっただけで、サイズ感の印象はそれほど変わらない。すでに本体だけで20m防水であり、防水ハウジングなどのアクセサリはそれほどを共通化する必要がなくなったことで、サイズは毎回自由に設計できるようになっている。

デザイン的には、従来「ACTION」のロゴはレンズ下にあったが、今回は正面ディスプレイの下に移されている。またシルバーの銘版の「O」の字の中に色温度センサーが設けられていたが、今回はそうしたデザインはやめて、文字はシンプルなレリーフとなり、色温度センサーはその横に付けられた。おそらく色温度センサーを大きくした関係で、従来のデザインに収まらなくなったのだろう。

シリーズロゴの位置や形状が変更された

レンズカバーが本体からはみ出した作りは、初代から継承されているデザインだ。唯一の例外はDJI Action 2だけである。レンズは画角155度、35mm換算で8mmだが、歪み補正や手ぶれ補正などを加えていくと少しずつ狭くなる。

光学部の特徴としては、F2.0からF4までの可変絞りを搭載したことだ。これまでアクションカメラにはそうした機構はなく、DJIの過去のモデルもだいたいF2.8固定だった。ただユーザーがマニュアルでバリアブルに変えられるわけではなく、自動絞りの範囲を決めるか、F2.8またはF4が選択できるといった実装になっている。このあたりは後段で詳しく説明する。

センサーは1/1.1インチの正方形だが、画素数は非公開となっている。最大解像度は7,168×5,376なので、それ以上あるということだろう。なお4K解像度で最大120pを実現するなど、高速なセンサーである。

撮影モードとしては、写真、動画、スーパーナイト、被写体トラッキング、スローモーション、ハイパーラプス、タイムラプスがある。

以下に動画の撮影フォーマットをまとめておく。

モード縦横比画素数フレームレート
4Kカスタム3,840×3,84024/25/30/48/50/60fps
4:33,840×2,880100/120fps
3,840×2,88024/25/30/48/50/60fps
16:93,840×2,160100/120fps
3,840×2,16024/25/30/48/50/60fps
9:162,160×3,840100/120fps
2,160×3,84024/25/30/48/50/60fps
2.7K4:32,688×2,016100/120fps
2,688×2,01624/25/30/48/50/60fps
16:92,688×1,512100/120fps
2,688×1,51224/25/30/48/50/60fps
9:161,512×2,688100/120fps
1,512×2,68824/25/30/48/50/60fps
1080p16:91,920×1,080100/120/200/240fps
1,920×1,08024/25/30/48/50/60fps
9:161,080×1,920100/120/200/240fps
1,080×1,92024/25/30/48/50/60fps

アスペクト比からも分かるように、本機では正方形センサーを利用して、カメラを倒さなくても横と同じ解像度の縦動画が撮影できるのがポイントとなっている。もっとも背面液晶は横長なので、縦撮影の際には動画表示が小さくなるという難点がある。

手ぶれ補正としては、RockSteady 3.0、RockSteady 3.0+、HorizonBalancing、HorizonSteadyがある。HorizonBalancingは水平維持するモードだが、45度まで耐えたあと、ゆっくりカメラの傾きに合わせる動きだ。HorizonSteadyは限界まで水平を維持するモードで、こちらは正方形センサーの良さを生かして、60度ぐらいまで水平を維持できる。

背面のOLEDモニターは2.5インチ/712×400ドットでほぼ16:9、前面OLEDモニターは1.46インチ/342×342ドットの正方形である。

背面ディスプレイは2.5インチのOLED

内蔵ストレージメモリーは50GBに増強され、ほぼmicroSDカードは不要となった。

アクセサリー類も見ておこう。マクロレンズは、レンズガードを一旦取り外して付け替えるコンバージョンレンズで、無限遠とマクロまで可変できるリングが付いている。

マクロレンズを装着したところ

「FOV BOOSTレンズ」はいわゆるワイドコンバージョンレンズで、カメラ画角が182度まで広げられる。手ぶれ補正を使いながらも広い画角が維持できるというメリットがある。

FOV BOOSTレンズを装着したところ

ただFOV BOOSTレンズもマクロレンズも、ケースの外観が同じなので、開けてみるまでどっちがどっちか分からない。ケースにもレンズ名が欲しいところだ。

レンズの大きさが違うので、ケースの構造も違う
しかしフタを閉じると見分けがつかない

NDフィルターセットは、ND8、16、32の3枚セットになっており、こちらはレンズガードの上に被せるタイプである。

NDファイルター3枚セット

「Osmo Action 両方向バッテリーハンドル」は、内部にバッテリーを内蔵し、カメラとUSB-C接続することで給電とコントロールを実現するものだ。足を広げてミニ三脚としても使える。またUSB端子をカバーするため、フタ部分を差し替えて装着するプロテクターも同梱している。今のところ対応するのはAction 6だけのようだ。

USBによる給電機能もある「Osmo Action 両方向バッテリーハンドル」
USBプロテクターが付属

「Osmo Action 両方向ミニ延長ロッド」は、最大38cmぐらいまで伸ばせるロッド型ハンドルで、こちらも足を広げて三脚として使える。対応モデルはAction 6とOsmo Nanoとなっている。

延長して自撮り棒にもなる「Osmo Action 両方向ミニ延長ロッド」

「三連Osmo 多機能バッテリーケース 3」は、バッテリー3つを同時に充電できるケースで以前から出ているものだ。こちらはAction 3以降のモデルが対応となっている。Nanoはバッテリー交換できないので非対応だ。

Osmo Action 3以降のモデルで共通の「三連Osmo 多機能バッテリーケース 3」

コンパクト超広角カメラというポジション

では早速撮影してみよう。まずは画角だが、補正なしの35mm換算8mmスタートで、以下順次画角が狭くなっていく。

レンズモード:超広角、補正モード:なし、画角:8mm
レンズモード:広角、補正モード:なし、画角:10mm
レンズモード:自然な広角、補正モード:なし、画角:11mm
レンズモード:標準(歪み補正)、補正モード:なし、画角:14mm
レンズモード:標準(歪み補正)、補正モード:RockSteady、画角:15mm
レンズモード:標準(歪み補正)、補正モード:RockSteady+、画角:17mm
レンズモード:標準(歪み補正)、補正モード:HorizonBalancing、画角:15mm
レンズモード:標準(歪み補正)、補正モード:HorizonSteady、画角:17mm
レンズモード:標準(歪み補正)、補正モード:HorizonSteady、画角:FOV BOOSTレンズ
レンズモード:標準(歪み補正)、補正モード:HorizonSteady、画角:マクロレンズ

FOV BOOSTレンズは、17mmの状態で装着することで、補正なしの状態である画角155度ぐらいまで戻せることが分かった。またマクロレンズは、装着すると多少ワイドになるようで、17mm状態で装着すると15mm程度に戻ることが確認できた。

今回は4K/60pで撮影してみた。FOV BOOSTレンズはかなりワイドに撮れるので面白い絵が撮れるが、若干周辺が流れる感じがする。

オプションレンズも併用したサンプル動画

マクロレンズは、無限遠からマクロまで無段階で調整できるので、付けっぱなしでも問題ないだろう。マクロレンズで近景を撮ると、それなりに背景はボケる。ただこちらも、多少周辺が流れる感じがする。

マクロレンズ装着状態の無限遠側
マクロレンズ装着状態のマクロ側

また今回は、「フィルムトーン」として数種類の画質エフェクトが搭載されている。エフェクトのかかり具合は、それぞれ30、50、70、100%から選択できる。

エフェクトなし
CC:色白の肌向け
NC:やわらかな階調を持つクラシックネガフィルム
TR:自然な見た目を実現する美しい肌色
WT:鮮やかな色彩と暖色系の色合い
FE:シネマティックなルック
NV:古写真風のレトロな雰囲気

割と人肌のトーンを重視したエフェクトが多いことから、Vlogなど人物撮影を意識して用意されたものだと思われる。アクション撮りよりも普通のミラーレス動画カメラに近づきつつあるのかもしれない。

超広角カメラで「絞り」は有効か?

本機は光学絞りが搭載されたことがポイントとなっている。露出Autoの状態では「自動」としてF2-F4、F2.2-F4、F2.4-F4、F2.6-F4、F2.8-F4の5パターンが選択できる。要するに下限はF4で、上限だけ決めている格好である。ただ基本的には「自動」なので、上限を設定してもそこまで至らないことはあり得る。昼間に露出オートで撮影していると、だいたいF3からF4ぐらいになるようだ。

絞り設定には固定モードもあり、この時はF2.8かF4の2パターンが設定できる。露出をマニュアルにすると、絞り設定は「自動」が選択できなくなり、F2.6、2.8、4のいずれかを選択することになる。

絞りの違いによって画質などに変化が出るのか何度もテストしてみたが、違いはほとんどわからなかった。

絞りとNDフィルタによる露出変化

一般的に絞りを調整するのは被写界深度のためである。だがここまでのワイドレンズで、しかもパンフォーカスなので、そもそも被写界深度がめちゃめちゃ深い。そこに多少の絞りが変わったからといって、映像に対して劇的な変化が生まれるわけではない。

おそらく明るいレンズとセンサーを搭載したが、逆に明るすぎて使いづらいのではないかということから、可変絞りの搭載になったのではないか。

個人的には、搭載レンズを28mmとか35mmとかにして、最高F16ぐらいまでバリアブルにユーザーが設定できるようにならない限り、絞りに起因する積極的な効果は出ないのではないかと思う。

今回はNDフィルターも用意されている。これを装着することで、絞りが開けられたり、シャッタースピードが下げられたりする効果が期待できる。こちらも順次試してみたが、もちろん暗くはなるのでマニュアル露出の場合はその影響が出る。

ただ動画撮影には絞り優先モードはなく、露出オートでは結局シャッタースピードやISO感度で露出を合わせこんでしまうので、絞りに対しては影響を与えられない。

静止画撮影の場合はシャッタースピードがかなり下げられるが、ND64を使っても昼間ではシャッタースピードはせいぜい1秒程度である。

NDは8、16、32の倍々で用意されているだけだが、長時間露光撮影するような用途で使うのであれば、8、32、128ぐらいの間隔で良かったのではないだろうか。実際DJI Mini 5 Pro用のNDフィルターはこの間隔である。

通常の静止画撮影
ND32でシャッタースピードを1秒に設定した静止画撮影

夜間撮影もテストしてみた。4K/30pによるSuperNightモードによる撮影では、ISO感度が51200まで上げられる。F2というレンズの明るさもあり、かなり明るく撮影できる。

ただ少しNRが効きすぎて画面の端にブロック状の崩れが見られるところだ。またレンズフレアもかなり出やすい。カバーガラスを外してみたが、フレアは変わらなかったので、レンズユニット内で起こっているものと考えられる。

夜間撮影のサンプル

絞り効果としては、F4に設定すると6点のスターバーストが撮影できるというので、試してみた。確かに点光源に対して6本のバーストが発生するが、まあこれを効果とするかノイズとするかは、受け止め方次第である。

F2で撮影
F4で撮影

総論

すでにアクションカメラ市場は、いわゆるアクション撮りとしては飽和しており、昨今は旅行の様子を撮影したり、テレビ番組ではタレントに持たせて自分撮りさせるカメラとして活用したりという例が増えている。

そうした用途の変化を敏感に捉えたのが、今回のOsmo Action 6と言えるのではないだろうか。もちろん手ぶれ補正は強力なので、従来どおりアクション撮影も可能なのだが、コンバージョンレンズなどを装着した状態で、追突したり吹っ飛んだりする可能性のあるアドベンチャーな現場で使用したいとは思わないだろう。もう少し腰を落ち着けて撮影できる小さなカメラ、という位置づけにシフトしたように思う。

ただ鳴り物入りの可変絞りは、こちらが勝手に想像したような絞り効果が得られるわけではなく、明るすぎるレンズとセンサーを、昼間の撮影においてカバーするためのもの、というのが正しい解釈ではないかと思う。NDフィルターもそうだ。

個人的には、アクションカメラとしてのみ使いたいのであれば、Osmo Action 5 Proの方が使いやすいように思う。Vlogや旅の記録、登山のお供といったゆったりとした使い方なら、Osmo Action 6といった使い分けかと思う。ただ、6は色味がちょっとベッタリした、ちょっとくどい感じの絵作りになっている。このあたりはフィルムトーンで納得できるカラーを選択してねという事だろう。

これだけアクセサリーも充実しているのなら、このサイズで28〜35mmぐらいの落ち着いた画角でF16ぐらいまで絞れるカメラがあったら、街歩きや旅用にちょうどいいのではないかと思う。コンバージョンレンズは広角よりも望遠が欲しいところだ。

「それはなんていうRX0ですか」という声も聞こえてくるが、ソニーはまた早すぎた。小型カメラの用途が変化した今なら行けるんじゃないかと思う。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。