NHK、22.2ch音声対応のヘッドフォンと小型マイクを開発
-市販ヘッドフォンで対応。スーパーハイビジョン制作に
22.2ch音響のスピーカー配置 |
日本放送協会(NHK)は20日、「スーパーハイビジョン」(SHV)映像向けの22.2ch音響制作用途として、多数のマイクを1カ所にまとめた小型ワンポイントマイクを開発したと発表した。
また、市販のヘッドフォンでも22.2chを正確に再現できるというヘッドフォンプロセッサも開発。いずれも4月20日~23日に米国ラスベガスで開催される放送機器展「NAB Show 2009」で公開する。
■ 22.2chワンポイント・マイクロフォン
マルチチャンネルの収録には多数のマイクを必要とするが、1カ所で効率的に集音できるようにマイクを放射状に配置した従来のアレイシステムは大型になってしまうため、場所によっては使用できないという問題があった。
今回開発されたのは、遮音板を用いて1カ所の空間を複数に区切り、それぞれのスペースに小型マイクを配置する構造のワンポイントマイク。コンパクトなサイズながら、隣接するマイク同士の干渉を避け、3次元の音響収録を可能とした。マイクアレイ部分の直径は、従来システムの約2mから、60cmまで小型化されている。
NABでは試作機を会場近くの屋外中継ポイントに設置。集めた音声をSHVカメラの映像とともに会場内のSHVシアターに生中継する。今後、フィールドテストを重ねながら音響特性の把握と運用性の検討を行ない、SHVの実用化に向け研究開発を進めるとしている。
開発されたワンポイントマイク | 従来のマイクアレイシステム。それぞれのマイクを離して配置する必要があった |
■ 22.2chヘッドフォンプロセッサ
頭部伝達関数を求めるための測定の様子 |
音が前後左右や上下に広がる22.2chの3次元音声を、市販のヘッドフォンでも忠実に再生するというもの。従来、22.2ch音声を正確に聴くためにはスピーカーを多数配置したスタジオなどに限られており、中継現場で収録した音声をその場で確認することができず、効率的な番組制作が困難だったという。
開発されたプロセッサでは、音源から耳に伝わるまでの変化量を表す頭部伝達関数(HRTF)を利用することで、立体的な音の広がりをヘッドフォンでも再現できるという。多数のスピーカーを使用できない中継車でも、22.2ch音声を手軽に聴くことができる技術として、NABでも試聴コーナーを設けている。
(2009年 4月 20日)
[AV Watch編集部 中林暁]