NTT、音楽の残響成分を利用したサラウンド技術を開発

-「Revtrina」。Pro Tools用プラグインとして製品化


NTT コミュニケーション科学基礎研究所の中沢 憲二氏

11月17日発表


 NTTは17日、音楽CDなどに収録されている音を分析して、残響成分を分離するという世界初となる技術「Revtrina」(レブトリーナ)および、同技術を利用したサラウンド再生音の生成技術を開発したと発表した。

 また、NTTラーニングシステムズ株式会社も同日に、このRevtrina技術を用いたサラウンド再生用音楽ソースを生成するソフトウェア「NML RevCon-RS」を発表している。

 同ソフトウェアは、DAWのPro Tools用プラグインとして展開予定で、放送/業務用途に2010年4月より国内外で販売を開始するとしている。価格は12万円程度を想定しているという。なお、18日から千葉・幕張メッセで開催する国際放送機器展「InterBEE 2009」に「NML RevCon-RS」を参考出品する。


■ 残響成分を分離する「Revtrina」

残響について

 Revtrinaは、発せられた音が直接マイクなどに届く「直接音成分」と、発せられた音が壁や天井に反射して届く「残響成分」を分離する技術。NTTのコミュニケーション科学基礎研究所が開発した。直接音から予測した残響成分を取り出すことで、直接音と残響を分離することができるという。分離だけでなく、直接音/残響成分の低減や強調といった操作も可能。

 また、Revtrinaを用いて、サラウンド再生用音源を生成する技術も開発。分離して取り出した直接音成分を前方のスピーカーから、残響成分を周囲や後方のスピーカーから出力し、サラウンド感の高い再生音を実現可能で、同社では「あたかも音楽ホールの客席で鑑賞しているような自然な響きを再現できる」としている。

音楽ホールの客席のような自然な響き直接音成分と残響成分の分離サラウンド再生用音源の生成

 発表会では、同技術を用いたデモを実演。オリジナルの2ch音楽ソースの再生の後に、サラウンド生成した5.1chソースを再生し、その違いをアピール。「サラウンド感の高い再生を実現し、音に含まれる空間を立体的に表現できる」(NTT説明員)とした。


■ サラウンド再生音生成ソフト「NML RevCon-RS」

NTTラーニングシステムズの佐藤和彦取締役

 NTTラーニングシステムズは、Revtrinaを利用したサラウンド再生音生成ソフト「NML RevCon-RS」を開発。基盤技術であるRevtrinaに同社のポストプロダクション業務で培ったノウハウをつぎ込んで製品化したもので、DigidesignのDAW「Pro Tools」上のプラグインとして展開。映像・音楽・放送業界向けに提案していくとする。

 NML RevCon-RSは、既存の2ch音楽ソースから、5.1chサラウンド再生用音楽ソースなどを制作できるソフトウェア。既存の2ch音楽作品を5.1ch化して再販したり、地上デジタル放送などに対応するために、過去の番組を5.1ch化するなどといった使用方法を提案。また、2ch作品を制作するのとほぼ変わらない負担で、5.1ch音源/番組が制作できるという「新しい制作スタイル」としての提案も行なうとしている。

サラウンド再生音生成ソフト「NML RevCon-RS」を開発映像・音楽・放送業界向けに提案していく

今後の展開

 今後の展開として、NTTラーニングシステムズは、「NML RevCon-RS」を2010年4月より販売し、Pro Tools以外の音声編集ソフトウェアへの転用も目指していくとした。またNTTはDSPを用いたリアルタイムサラウンド化技術の研究などを進めていくとしている。



(2009年 11月 17日)

[AV Watch編集部 大類洋輔]