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パイオニア、Dolby Atmos対応の最上位AVアンプ「SC-LX88」

USB DAC搭載。フェイズコントロール+Atmos。LX78も

 パイオニアは、AVアンプのフラッグシップモデルとして、ファームウェアのアップデートによりDolby Atmosに対応する2機種「SC-LX88」と「SC-LX78」を9月下旬に発売する。価格は「SC-LX88」が335,000円、「SC-LX78」が250,000円。

左から「SC-LX88」、「SC-LX78」

 発売後のアップデートにより、Dolby Atmosに対応可能。Dolby Atmosは、オーディオ信号にハイト(高さ)成分とメタデータ(位置・時間情報)を付加することで、リアルな音の移動を再現し、臨場感のある豊かなサラウンド空間を実現する最新の多次元サラウンドフォーマット。これまで映画館向けに導入を進めてきたが、家庭用のAVアンプでも対応モデルが各社から登場している。LX88/78では、後述するスピーカーの位相を揃える「フェイズコントロール」技術をDolby Atmos再生時でも利用でき、音の繋がりの良いサラウンド再生を可能にしている。

 LX88とLX78では、天井に設置するトップスピーカーに合わせ、7.2.2chのトップミドル2パターン(入力信号により自動切り替え)と、5.2.4chのトップフォワード/トップバックワード 1パターンの、合計3パターンが利用できる。

SC-LX88
SC-LX78
対応するDolby Atmosのパターンは3種類

 LX88は定格出力250W(4Ω)×9ch、LX78は230W(4Ω)×9chで、どちらも9.2chアンプ。全チャンネルイコールパワーのクラスD「ダイレクト エナジーHDアンプ」を採用している。半導体チップを基板に直結させた独自構造のパワー素子「Direct Power FET」や、シンプルでクリーンな回路構成などを採用する事で、音質やレスポンスを高めている。さらに、ルビコンと共同開発した高品位なPML MUコンデンサを採用し、透明感と開放感のある音質を実現するという。

 既発表のLX58などとの違いとして、Direct Power FETのドライバーIC(大電力部)と、アナログ小信号をPWM変換するオペアンプICを分けた回路設計を採用(LX58などは1チップ化されている)。これにより、より高品位な専用デバイスを選択でき、音質が向上するほか、小信号部と大電力部を空間的に離して構成する事で、相互干渉を排除。より理想的な信号処理ができるという。

Direct Power FETのドライバーICと、アナログ小信号をPWM変換するオペアンプICを分けた回路設計になっている
パワーアンプ基板
専用のDAC基板に搭載する事で、ノイズを受けにくくしている

 DACには、ESS製の8ch用DACであるSABRE 32bit Ultra DAC「ES9016S」を2基、専用のDAC基板に搭載。ノイズを受けにくい環境を作り、9.2chの全チャンネルに使っている。素子配置や配線の適正化などにより、DACの性能を引き出しているほか、JRCと共同開発した新型オペアンプも採用している。

 「アドバンスド クリーングランド思想」による設計で、すべての回路のグランドを1点アースとして安定動作させ、接続機器からのノイズを徹底的に低減。デジタル回路、アナログ回路、パワー部の電源を独立させた「アドバンスドインディペンデント・パワーサプライ設計」により、ノイズの発生も抑えている。プリ部、パワー部、電源部を鋼板で分離することで、各ブロック間の干渉を抑制する「3次元フレーム構造」も採用している。

 LX88のみの特徴として、独自のチューンを施した電源トランスを採用。筐体内で映像や音声に悪影響を与える磁束ノイズを大幅に低減したという。前述の「アドバンスドインディペンデント・パワーサプライ設計」と組み合わせる事で、さらにクリアな信号伝送が可能という。

LX88の内部構造

ハイレゾ再生機能も豊富

 DLNA 1.5に準拠したネットワークプレーヤー機能や、USBメモリなどに保存した音楽ファイルの再生機能を用意。192kHz/24bitまでのWAV/FLACや、5.6MHzまでのDSDファイル再生に対応。FLAC/WAVのマルチチャンネルファイル(96kHz/24bit 5.1ch)も再生できる。なお、DSD再生に関しては、フロントUSB端子とDLNAは5.6MHzまで、リア端子は2.8MHzまでの対応となる。AIFF、Apple Losslessの再生も可能で、ハイレゾファイルのギャップレス再生もサポートする。

 音声信号を32bitまで拡張処理する「Hi-bit 32 Audio Processing」も搭載。Apple Lossless、AIFF、FLAC、WAVにも適用できる。

 また、LX88ではUSB DAC機能も搭載。192kHz/32bitまでのPCMデータと、2.8MHzまでのDSD(DoP)データが再生できる。PC側のクロックと同期しないアシンクロナス伝送にも対応、ジッタを排除した再生を可能にしている。

 2機種ともAirPlayに対応。iOS端末内の音楽ファイルをワイヤレス再生する事もできる。MHL 2.0に対応したHDMI入力もフロントに備え、対応するAndroid端末からのフルHD動画、7.1ch音声の再生も可能。インターネットラジオポータルのvTunerも利用できる。無線LAN接続には、別売の無線LANコンバータ「AS-WL300」が必要。

 自動音場補正技術「MCACC Pro」により、周波数と音圧レベルに加え、時間軸の要素を加えた音場補正が可能。低域の再現力を向上させる「デュアル サブウーファーEQ補正」も利用できる。全帯域の位相を揃える「フルバンドフェイズコントロール」、マルチチャンネルコンテンツのソースに由来する低音のズレを全自動でリアルタイムに補正する「オートフェイズコントロールプラス」も利用可能。

LXシリーズに採用されているMCACC Proと、下位モデルのAdvanced MCACC、MCACCの機能比較

 2台のサブウーファが接続できる「Dual Subwoofer」出力端子を備え、Advanced MCAACに新開発の「Subwoofer-EQ調整機能」も追加。遅延を抑えたオートEQアジャストメントを開発したほか、ユーザーがマニュアル調整する事も可能。2つの出力は独立して調整できる。

 LX88では、ディスプレイでスコア表示を見ながら、ミリ単位の精度でスピーカー位置を調整できる「プレシジョン・ディスタンス」機能も利用できる。

4K/60p/4:4:4の伝送が可能

 スマートフォンやタブレットからAVアンプを制御できるアプリ「iControlAV5」も用意。ネットワーク接続したAVアンプを制御できるほか、プッシュプレーヤー機能により、端末内の音楽をワイヤレスで再生する事も可能。操作だけでなく、より直観的な操作ができるUIにもなっているという。

 設定や操作をサポートする「AVナビゲーター」も本体に内蔵し、LAN経由で様々な端末から操作方法を読む事ができる。

 HDMI端子は9入力(フロント×1、リア×8)、3出力を装備。4K/60p/4:4:4の伝送が可能なHDMI 2.0対応のHDMI端子を備え、4K映像のパススルーや、SD/HD映像の4Kアップスケーリング出力も可能。4K映像やHD映像のノイズを軽減する「トリプルHDノイズリダクション」機能も備えている。なお、HDCP 2.2には対応していない。

 同社のBDプレーヤーとHDMI接続した場合には、圧縮音楽を高音質化する「オートサウンドレトリバー」機能と、圧縮動画のノイズを低減する「ストリームスムーサー」が利用可能。独自のPQLS技術に対応したBDプレーヤーと接続した場合は、ジッターレスでの伝送も可能となる。

 付属のリモコンも刷新。操作が複雑な面切り替え(アンプ→ソース機器など)が必要なボタンを削減し、主要機能のダイレクト操作が可能になったという。機能毎にボタンの色も変え、視認性を改善。印刷色の視認性もアップしているという。

リモコンも刷新
LX88の背面
LX78の背面
モデル名SC-LX88SC-LX78
定格出力250W×9ch(4Ω)230W×9ch(4Ω)
最大出力360W×9ch(4Ω)340W×9ch(4Ω)
HDMI入力9
HDMI出力3
音声入力光デジタル×2、同軸デジタル×2
アナログ音声×2
アナログAV×4
アナログ7.1ch入力1系統
映像入力コンポジット×4、コンポーネント×3
音声出力アナログ9.1ch×1、光デジタル×1
アナログAV×1、マルチゾーン×2
マルチゾーン用サブウーファ×1
映像出力コンポジット×1、コンポーネント×1
マルチゾーン用コンポジット×1
マルチゾーン用コンポーネント×1
HD ZONE用HDMI×1
消費電力370W(待機時0.1W)
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
435×441×185mm
重量18kg17.6kg

(山崎健太郎)