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立体音響の「Dolby Atmos」今秋ついに家庭へ。各社AVアンプを体験、モバイル展開も

 ドルビージャパンは21日、ホームシアター向け立体音響技術の「Dolby Atmos Home」(ドルビーアトモス ホーム)の技術説明と試聴デモを行なう体験説明会を開催。対応AVアンプなどを発売するメーカーがデモを行なったほか、新たな取り組みとして、タブレットとヘッドフォンを使った、モバイル向けのDolby Atmos技術を開発中であることも明らかにした。

Dolby Atmosのロゴ

各社の新AVアンプ登場、アプローチに違いも。秋に対応BD発売へ

 Dolby Atmosは、オーディオ信号にハイト(高さ)成分とメタデータ(位置・時間情報)を付加することで、リアルな音の移動を再現し、臨場感のある豊かなサラウンド空間を実現する最新の多次元サラウンドフォーマット。制作者が自在に配置し、縦横無尽に動かせる独立した音響要素「オブジェクト」を重ね合わせることで、リアルな音響体験を実現する。

 2012年4月に映画館向け技術として発表。その後、2014年6月に、AVアンプなどのホームシアター向けにも「Dolby Atmos Home」として展開していくことを明らかにした。

 ドルビーデジタルのような、従来のチャンネルベースのミキシング方式と、動きを持つオブジェクトベースのダイナミックなオーディオミキシングを組み合わせているのが特徴。対応AVアンプや、ホームシアター用の5.1/7.1chスピーカー、天井に設置したスピーカーなどを組み合わせて、視聴者にスピーカーの配置を意識させずに、自然でスムーズな音の移動を感じさせるというもの。BDで発売する際はドルビーTrueHDベースで収録され、対応製品を持っていない場合は従来のドルビーTrueHD音声が再生される。

 既報の通り、AVアンプでは既にメーカー各社が対応モデルを9月以降に順次投入/アップデート予定であることを発表。オンキヨー、パイオニア、ヤマハ、デノンの4社が対応の新モデル発売や、既存モデルのアップデート実施を予告している。スピーカーは、通常の5.1chや7.1chスピーカーに加え、天井に設置するスピーカーや、後述する「ドルビーイネーブルドスピーカー」を設置することで利用できる。

 なお、Dolby Atmos対応のBDビデオソフトの発売時期については、「まだ具体的なタイトル名などは言えないが、この秋からタイトルは発売され、2015年になると数も増えていく」(米Dolby ブレット・クロケット氏)とした。

天井スピーカー設置の例
ドルビーイネーブルドスピーカーで音を反射させるという方法も
オンキヨーのデモルーム

 オンキヨーは開発中のAVアンプ上位モデル「TX-NR3030」と「TX-NR1030」において採用するほか、9月には既発売のエントリーモデル「TX-NR636」と「TX-NR838」のアップデートによる対応も予定。

 さらに、天井にスピーカーが設置できない場合を想定した、アドオン型の「ドルビーイネーブルドスピーカーの開発も進めており、2014年の秋を目処に発売予定。同社のドルビーイネーブルドスピーカーはバッフル面が斜め上を向いており、手持ちのフロントスピーカーの上に置くことで、音を天井に反射させて、リスナーには「上から音が降ってくる」ように感じさせるもの。

 発表会場に設けられたデモルームにおいて、オンキヨーは開発中のAVアンプ「TX-NR3030」と7.1chスピーカーに、天井スピーカー4台を使った「7.1.4ch」で音を出す場合と、ドルビーイネーブルドスピーカー2台を使った「7.1.2ch」で出す場合の比較デモを行なった。天井スピーカーの数は「7.1.Xch」のように、最後に記載する。なお、ドルビーイネーブルドスピーカーを利用する場合も、他のスピーカーと同様にAVアンプとLRケーブルでダイレクトに接続。AVアンプ側の設定で、どのスピーカーから音を出すかを設定する方法となる。

AVアンプの対応モデル。右が開発中の上位モデル「TX-NR3030」
オンキヨーが秋の発売を目指すドルビーイネーブルドスピーカー
ドルビーイネーブルドスピーカーは、フロントスピーカーの上にアドオンする

 パイオニアは、9月上旬に発売するAVアンプ「SC-LX58」(178,000円)を、ファームウェアアップデートで対応させる予定。Dolby Atmosの音に、音場補正機能の「MCACC Pro」処理を加えて再生できることなどが特徴。

 デモルームでは、AVアンプのSC-LX58と、5.2chスピーカー、天井スピーカー4台の「5.2.4ch」。Dolby Atmosのデモコンテンツを「フルバンドフェイズコントロール」がOFFとONにした状態で比較した。各スピーカーの特性をそろえることで、リスナーにスピーカーの位置を意識させず、よりスムーズに音が定位することをアピールしていた。

左上が、パイオニアから9月上旬発売のAtmos対応予定AVアンプ「SC-LX58」
デモルームのスピーカー構成
天井スピーカーを使用

 ヤマハは、AVアンプ「AVENTAGE」の新モデル「RX-A2040」(9月中旬発売/180,000円)、「RX-A3040」(9月下旬発売/250,000円)において、ファームウェアアップデートで対応することを明らかにしている。7.2chスピーカーに、天井スピーカー4台を加えてデモを行なった。

 同社AVアンプは、以前から音場再現技術の「シネマDSP」で空間表現力の向上を図っており、「3Dモード」により音の高さ表現にも取り組んでいる。シネマDSPはDolby Atmosと併用はできないが、同社は「方法は違うが、向いている方向は同じ」としており、今後も、これまで同社が培った技術を活かして立体音響に取り組んでいくという。

ヤマハは、右上のAVアンプ「RX-A2040」がアップデートでAtmos対応予定
天井に4台のスピーカーを設置
AVアンプ側の設定で、ドルビーイネーブルドスピーカーを加えた構成も選択可能

 デノンは、9月中旬発売の7.2ch AVアンプ「AVR-X4100W」(150,000円)において、発売時点からDolby Atmosに対応する。これに合わせて、DSPはアナログデバイセズ製の32bit「SHARCプロセッサ」を4基に強化。これにより「Dolby Atmosのパフォーマンスを余すことなく発揮できる」としている。デモルームは、AVR-X4100Wと5.1chスピーカー、天井スピーカー4台の「5.1.4ch」を設置。AVR-X4100Wのアンプのみでは最大5.1.2ch再生ができるほか、外部アンプを使って5.1.4chや7.1.2chに拡張できることなどをアピールした。

デノンが9月中旬発売のAVアンプ「AVR-X4100W」で対応
天井スピーカーを4台設置
スピーカー構成例

劇場では'15年の実写版パトレイバー長編で対応。タブレットへの応用も

 説明会には、3月にドルビージャパンの社長に就任した大沢幸弘氏が登壇。また、米Dolby Laboratoriesのアドバンストテクノロジーグループ リサーチサウンドテクノロジー シニア・ディレクターのブレット・クロケット氏が技術の概要や特徴を解説した。

ドルビージャパンの大沢幸弘社長

 大沢社長は、ドルビーの活動が従来のオーディオ技術だけに留まらず、広がり続けていることを説明。年初に発表した映像のハイダイナミックレンジ技術「Dolby Vision」について「テレビやネットワークサービスを通じてこれから広がっていく」との見方を示したほか、ビジネスの現場でも、電話会議で「誰が話しているかが分かる」という技術を開発しており、既にブリティッシュテレコムが欧州の電話会議サービスに採用していることをなど紹介した。

 Dolby Atmos技術については、世界の劇場で650スクリーンに採用され、日本でも10の劇場で導入されている(稼動中は8劇場)など、急速に広まっている現状を説明。映画作品では、2015年のゴールデンウィーク公開予定「THE NEXT GENERATION パトレイバー」長編劇場版において採用される「今まで聴いたことのないような映画の音響体験。映画で体験した最新音響がこの秋から、家庭にもやってくる」と述べた。

各分野におけるドルビーの技術
Dolby Atmos導入例(世界統計)
日本での展開
Dolby Laboratoriesのブレット・クロケット氏

 米Dolby Laboratoriesのブレット・クロケット氏は、Dolby Atmosの取り組みをシンプルに表す「聴覚をハックする」という言葉で説明。「頭上を宇宙船が越えると思って、観客が思わず身をかがめてしまう」というように、映画製作者が自由な表現方法を獲得することで作品のストーリーによりリアルさを加えられることなどを強調した。

 Dolby Atmosは、オブジェクトを最大128まで再現できるが、家庭用のDolby Atmos Homeにおいても「失うものは何一つ無く、この128オブジェクトを再現できる」と説明。映画館では、シネマプロセッサのレンダラーで360度どこにでも音の位置を付けられる。家では、AVアンプの『オブジェクトオーディオレンダラー』で同じように音を移動させることができる。レンダラーに、“いくつスピーカーを置いたか”、“どこに置いたか”などの情報を与えることで、映画館と全く同じように、制作者の意図通りの音を届けられる」と自信を見せた。

 さらに、新しい取り組みとして、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末とヘッドフォンを組み合わせた形で、立体音響を実現するバーチャルヘッドフォン技術を開発していることも明らかにした。従来のバーチャル音響技術のように、スピーカーの5.1chや7.1chを疑似化するのではなく、頭部伝達関数(HRTF)を応用して、音が聴こえる方向を知覚できるようにし、天井からの音を含めて360度方向の音を再現できる技術を開発中。

 会場にデモ機として、開発中のソフトウェア技術をDSPへ書き込んだタブレットのKindle Fire HDX 8.9を用意。ヘッドフォンの「HD598」(ゼンハイザー)を接続して、音の移動感を体験できるデモコンテンツを再生していた。モバイル向けには、ドルビーデジタルプラスのストリーミングに適用できるため、インターネット配信コンテンツに採用できることも大きいという。

タブレットとヘッドフォンを使った展開も予定
会場に用意されたデモ機のタブレットとヘッドフォン

(中林暁)