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「Bluetooth 4.2」でIoTとスマートホーム加速へ。オーディオも進化
(2015/1/23 16:45)
Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)は23日、Bluetoothワイヤレス技術の最新バージョン「Bluetooth 4.2」などの動向について説明する記者会見を開催。「IoT」(Internet of Things/モノのインターネット)やスマートホームなどのトレンドに、Bluetoothが重要な存在となっていく点などをアピールした。
BluetoothもWi-Fiもまとめて接続。オーディオ関連の進化も
'14年12月時点のBluetooth SIG会員企業は現在25,000社以上で、前年比25%のプラス。2桁成長がここ3年ほど続いているという。特にアジア太平洋地区の'14年の成長率は世界平均よりも高い28%で、そのうち日本は中国の4,878社に続き2番目に多い1,197社がメンバーとなっている。'14年のBluetooth製品出荷台数は30億台で、'18年には49億台に達すると見込まれている(出典:ABI Research)。また、'18年までに、台数ベースで96%の携帯電話(スマートフォン/フィーチャーフォン合計)が省電力のBluetooth Smart Ready対応となる(出典:IHS Technology)という。ブランド&デベロッパー マーケティング シニアディレクターのエレット・クローター氏は、「利便性が高まったことで、“メーカーが消費者とつながる媒体”となっている」と述べた。
Bluetooth SIGは'14年12月に最新仕様「Bluetooth 4.2」を策定したことを発表。転送速度やセキュリティ面を向上させるほか、新たなプロファイルによりIPv6を介したインターネット直接接続も可能になるのが特徴。これにより、無線LAN機能や大きなバッテリを持たない機器でも、センサーなどで取得したデータをルーターに直接転送できるようになることから、IoT普及の加速が期待されている。
これを実現するため、Wi-FiやZigBee、Bluetoothといった通信規格の差をユーザーが意識せずに共通のアクセスポイントのように使える「ヘッドレスルーター」などを開発可能にするSDK(ソフトウェア開発キット)をNordic Semiconductorが既に提供開始している。
Bluetooth 4.2では、Bluetooth Smartデバイス間のデータ転送速度と信頼性を向上。既存の4.1に比べBluetooth Smartパケットの容量を10倍に増やしたことで、デバイスのデータ転送速度を最大2.5倍高速化。送信エラーの発生を減らし、電力消費量を削減するため、効率の高い接続を可能にしている。
高レベルのセキュリティ基準(FIPS)に対応することでプライバシー保護を強化しており、「例えば(活動量計の)Fitbitを着けてモールを歩いても、その動きがトラッキングされることはない。AES 128bit暗号化により、個人情報をスマートフォンやタブレットに伝送しても、暗号解読が極めて難しくなる」と説明した。
Bluetooth Smart(Bluetooth Low Energyのブランド名)の成長が期待される分野の伸び率('13年→'18年)としては、活動量計などの「ヘルス&ウェルネス」が77%、「ビーコン&小売」が106%、AV機器など「家庭用/電化製品」が107%とするのに対し、照明などを含む「スマートホーム」は232%と、3倍以上の成長が期待されるという(出典:IHS Technology)。
一方で、Bluetoothヘッドセットやスピーカーといった「Bluetooth Classic」と呼ばれる分野についても進化は続いている。例えばソニーはBluetoothオーディオ伝送時の新しいコーデックとして、従来のSBCの約3倍のデータ量により高音質伝送できる「LDAC」対応のウォークマンやスピーカー/ヘッドフォンを1月に発表しており、LDACの他社へのライセンスも検討中としている。今回のBluetooth SIG発表では、ソニー以外のLDAC採用といった動きについては案内されていないが、前出のエレット・クローター氏に尋ねたところ、「Bluetoothの伝送品質を上げる技術は、どんなものでも歓迎したい」とコメントした。
クローター氏によれば、オーディオ関連ではLGが新しい活用例として、マルチルームのBluetoothスピーカーを使ったデモを行なっていたという。例えばスマートフォンを持った人がリビングからキッチンに移動すると、これまでリビングのスピーカーから流れていた音楽が、キッチンのスピーカーに自動で切り替わるというもので、ユーザーが特に操作することなく、人のいる場所で音楽が流れるのが特徴。2015 International CESの展示では、ワイヤレスのマルチルームスピーカー提案も目立っていたが、こうした動きとの連携も今後期待できそうだ。
Bluetoothでスノボ上達や高機能おもちゃなど。傘の持ち忘れ防止も
発表会場では、Bluetooth SIGメンバー企業による展示も行なわれていた。Cerevoは、Bluetooth通信モジュールやセンサーを内蔵したスノーボード・バインディング「SNOW-1」を展示。スノーボードのバインディング(ブーツをボードに取り付けるための器具)にBluetooth 4.0 LE(BLE)通信モジュールや8箇所の荷重センサー、3軸加速度センサーなどを搭載。SNOW-1装着中に計測したデータを、Bluetooth連携したスマートフォンにリアルタイムで転送され、自分の滑りを分析できる。さらに、専用アプリで滑走中の動画を撮影することで、荷重状態などのグラフと動画をオーバーレイで表示可能。どんな動きをしているときにどういった荷重バランスになっているかなどが分かりやすくなっている。
MiPowは、Bluetoothスピーカー内蔵のLED電球「PLAYBULB COLOR」などを展示。電球の調光と色の変更などがスマートフォンから行なえ、最大5つまでのPLAYBULB COLORを1つのグループとして一度に操作可能。グループの作成数は無制限となっている。
このほかにも、MiPowは日本で3月発売の新モデルとして、Bluetoothヘッドフォン「M3 Pro」と「M3」を展示。Bluetooth 4.0に対応し、スマートフォンの音楽のワイヤレス伝送や、ハンズフリー通話などが可能。ハウジング部のボタンでボリューム調整や曲送り/戻しなどの操作も行なえる。巻き取り式のステレオミニケーブルも備え、バッテリが切れた場合も有線接続のヘッドフォンとして利用可能。
おもちゃも高機能化しており、例えばBluetooth Smartモジュールなどを展開するアプリックスは、同社製品を使ってタカラトミーが発売した「nanoblock motion チョロQ」などを紹介。スマートフォンでチョロQの操作が行なえるもので、'14年の日本おもちゃ大賞で、「ハイターゲット・トイ」部門の優秀賞を受賞。アプリックスはBluetooth 4.2で低消費電力化することにより、小型化や、ウェアラブル機器などの開発なども期待できる」としている。
ランニングエレクトロニクスは、Bluetooth Low Energyの通信や制御を学習できるロボットキット「うおーるぼっと BLE」を展示。磁石の力で壁を垂直に走れるタイヤ付きのロボットを作れるもので、スマートフォンからのコントロールや、あらかじめ指定した動きで自走させることが可能。手軽にプログラミングを始められるキットとして、教育やホビー業界などを想定。加速度センサーやジャイロセンサーなどを使って、ウェアラブル端末などの試作も可能としている。1月発売で、価格は2万円。
Nordicは、Bluetooth 4.2機器のIPv6接続のデモとして、エスプレッソマシンをリモートで操作するという例を紹介。既存のエスプレッソマシンにBluetoothモジュールなどを接続して通信できるようにしたもので、PCからの操作でメニューなどを選んで抽出し、これまで作った回数なども表示して管理できる。Wi-FiやBluetoothといった異種ネットワークを一括して接続することで、IoTが、さらに現実的になっていくことが期待される。
マクニカは、Bluetooth Smart機器の開発モジュール「Koshian」を使った試作機などを展示。雨の日に傘の持ち忘れを防ぐアクセサリ「PICK」は、スマホからYahoo!天気で情報を取得し、必要な場合はLEDライトを点灯させて通知する。ハッカソンで生まれたもので、試作機は3Dプリンタで制作。今後はクラウドファンディングでの製品化も目指すという。