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RMEのモバイルUSBオーディオ「Babyface Pro」は8月18日発売。USB 3.0モデルも開発中

 シンタックスジャパンは、独RMEのUSBオーディオインターフェイス「Babyface Pro」の発売日を8月18日に変更した。当初、7月29日発売予定としていたが「生産が追いついていない」という。価格に変更はなく、オープンプライスで店頭予想価格は99,800円前後(税込)。29日に製品発表会を行ない、開発背景の説明や実機デモを行なった。

Babyface Pro

 同社のUSBオーディオインターフェイス「Babyface」('11年発売)のコンセプトを踏襲しつつ、外装や回路設計をすべてデザインし直した上位モデル。USBバスパワー駆動可能で、ノートPCなどと組み合わせてモバイルレコーディングを行なう録音エンジニアや、低価格でレコーディングしたいミュージシャン向けとする。オーディオ/ヘッドフォンアンプとしての利用も想定している。パソコン接続時の対応OSはWindows XP/Vista/7/8以降、Mac OS X 10.6以降。外形寸法は108×181×35mm(幅×奥行き×高さ)、重量は680g。

Babyface Pro(左)はBabyface(右)よりもやや大きめの外寸
XLR接続されたKS Digitalのパワードスピーカーと、ノートPCを使ったハイレゾ音源試聴も行なわれた

 外装はアルミブロックの削り出し成形。従来のBabyfaceよりも多くのパーツを内蔵するため、剛性の高いアルミを筐体素材に採用した。音質への影響にも配慮したという。表面は“Steel ball blasting”と呼ばれる方法を用いて圧縮加工することで堅牢性を高め、持ち歩いても傷がつきにくくした。下面にもアルミ素材を使用。底面にはネジ穴があり、マイクスタンドなどに設置して使える。

外装はアルミブロックから削り出して成形
別売のマイクスタンド「K&M 23250」に装着
裏面にネジ穴を切ってある

 初代Babyfaceと同じく大型のロータリーエンコーダを備える。ボタン数を増やすことで、従来必要だった長押し、二度押しといった操作方法を覚えることなく各機能・設定に直感的にアクセス可能。展示されていたBabyface ProとBabyfaceの操作感を比べると、ロータリーエンコーダはクリック感のないなめらかな回転になっており、ボタンの押し具合も「カチッ」という音や感触がなく、より静粛になっていた。

 視認性の高いLEDレベルメーターをステレオ入出力の4系統分装備。また、iPadなどと接続してオーディオインターフェイスとして使用する際のクラス・コンプライアント(CC)モードを、Babyface Proも引き続き搭載。iPadとPCの接続を切り替える際、LEDレベルメーターに「CC」、「PC」と表示することで、Babyface Proがどのモードで稼働しているか分かりやすくした。

iOSデバイスのオーディオインターフェイスとしても利用可能
CCモードにしたところ
PCモードに切り替えたところ

 回路設計もリニューアル。ADC/DACには旭化成エレクトロニクス製「AK5388」と「AK4413」を採用し、ステレオで最大192kHz/24bitに対応。SN比は最大118dBA。独自の「SteadyClock III」チップを搭載し、ジッターを大幅に低減。再生帯域外の超低域ノイズをカットするサブソニックフィルタをチューニングし、Babyfaceよりもさらにノイズレスな音質を追求した。

 SteadyClockは、1基の内蔵水晶発振器でオーディオデータとは独立したキャリアデータのクロックのみを受信するもの。デジタルPLLとアナログフィルタで構成する200MHzの高速な内部クロック回路を採用し、入力信号に対して正確に追従できるという。Babyfaceでは初代「SteadyClock」を採用しており、代を重ねて改良を加えた「SteadyClock III」をBabyface Proに採用した。なお、2代目の「SteadyClock II」は同社のフラッグシップ製品「Fireface UFX」のみ採用しているという。

XLRバランス入出力を装備

 新たにXLRバランス入出力を装備。ヘッドフォン出力は、標準プラグとステレオミニの2系統を備え、独立したドライバ段で構成。ローインピーダンスのヘッドフォンにも対応可能としている。光デジタル入出力も1系統ずつ備え、光デジタルにADATコンバータを接続することでアナログ入出力を最大12chまで拡張可能。ライン/Instrument入力は、エレキギターなどのハイインピーダンスの楽器を直接接続可能。MIDI入出力も備え、付属のブレークアウトケーブルで対応機器と接続できる。

ヘッドフォン出力は標準プラグとステレオミニの2系統
USB端子、MIDI端子、光デジタル入出力を各1系統装備
ライン/Instrument入力にエレキギターなどを直接接続できる
XLRバランス出力をパワードスピーカーにつないでいるところ

 別途ACアダプタを用意することで、パソコンを使わずに単体で利用できる「スタンドアローン・モード」も搭載。「AD/DAコンバート・モード」で、特別な設定無しでアナログ/デジタルの双方向変換でき、ステレオのコンデンサーマイクを使った高性能マイクプリアンプとして使ったり、CDプレーヤーなどと接続して音楽を聴くといった利用もできる。また、出力が十分なモバイルブースターでも動作することをアピール。設計においては、USB出力の5V電源をいかに効率良く内部で配分するか、というところに一番時間をかけたという。

 本体と付属のブレークアウトケーブルなどを収納できるケースが付属する。

付属のケースを持つRME プロダクト・マネージャのMax Holtmann氏
本体と付属のブレークアウトケーブルなどを収納可能

Babyfaceの人気の理由を紹介。USB 3.0採用モデルの開発も

 製品発表会では、RME プロダクト・マネージャのMax Holtmann氏と、RMEの創業者であり開発トップでもあるMatthias Carstens氏が登場。Babyface Proの開発背景やRMEの歩み、今後の展開について語った。

 RMEは1996年にドイツ・ミュンヘン郊外の街、ハイムハウゼンで創業。業務向けの「プレミアムライン」とコンシューマ層にも馴染みのある「プロライン」でオーディオインターフェイス製品の拡充を図ってきた。オーディオ用PCIカードの開発などを経て、2001年に同社の「Fireface」シリーズの最初期モデル「Multiface」を発売。RMEはハードウェアだけでなくドライバソフト開発も自社で手がけているのが特徴で、Multifaceのドライバも継続して開発されており、冨田勲氏が発売時から現役で使い続けている製品でもあるという。

Babyface Proを手にするMatthias Carstens氏
「Multiface」('01年発売)

 初代Babyfaceは、このFirefaceシリーズの製品として2011年に発売。Matthias氏は、当時はモバイルUSBオーディオインターフェイスが少なかったことや、低ジッタでドライバも安定していること、曲面を採り入れた外装デザインなどが世界中のユーザーに受け、人気を博したと述べた。

「モバイル製品でUSB 3.0モデルの需要があるか検討したい」と語るMax Holtmann氏

 Matthias氏は「Thunderboltなど、より高速伝送できる規格も存在する。しかしUSB 2.0でも十分な伝送バンドの幅があり、低レイテンシも実現できる」として、Babyface Proも従来モデルと同じくUSB 2.0を採用。しかし、今後の展開として詳細は未定ながら、BabyfaceシリーズのUSB 3.0モデルの開発も行なっているという。RMEでは据え置き型USB 3.0対応インターフェイス「ME MADIface XT」を世界で初めて製品化しており、Max氏は「モバイル製品で需要があるかどうか、またユーザーがオーディオインターフェイス製品に対してどんな問題を抱え、どんなソリューションがベストかもふくめて検討していきたい」とコメントした。

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(庄司亮一)