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配信、五輪、4K/8K。各社年頭挨拶から見る'16年の放送

NHKはパラリンピック強化。「テレビ離れは現実」

 2015年はオンデマンド配信も充実し、NetflixやAmazonなどの海外勢の日本参入が大きな話題となり、'16年も大きな動きが予想される。日本における最大のコンテンツ製作者ともいえる、各放送局のトップの年頭挨拶・訓示から、今年の放送、コンテンツ業界の取り組みをまとめた。

 NHKの籾井会長の年頭挨拶では、質を大事にしながら、視聴率も重視する姿勢を示すとともに、特に59歳以下の現役世代の視聴率が低いという課題を指摘し、NHKグループでの改善を訴える。また、リオ五輪については、スーパーハイビジョン(4K/8K)試験放送を行なうとともに、パラリンピック放送を重視する方針を強調。パラリンピックを録画だけでなく中継も取り入れ、2020年の東京大会を視野に、「パラリンピックに対して考え方を抜本的に変えるとき」と語っている。

 日本テレビは、'15年に全日帯・ゴールデン帯・プライム帯で「年間視聴率三冠王」を2年連続獲得。視聴習慣を大切に「習慣日テレ」と銘打ち、レギュラー番組を主体にした編成が評価されているとする。

 グループ各社においては、動画配信事業を行なうHuluの利用者が100万人を「大きく突破」。オリジナルドラマ制作にも挑戦するなど拡大を図っている。また、スポーツクラブ「ティップネス」は、放送に留まらない「豊かな時を提供する企業」としてのシナジー効果を発揮しているとする。'16年は、麹町新スタジオ棟建設に着手。「非常時にも絶え間なく放送を行なう報道機関としての社会的責任を果たすもの。同時に日本テレビ発祥の地・麹町の再開発事業の第一歩」と位置づける。

 TBSテレビ武田社長の年頭挨拶では、TBSテレビ放送60周年とともに、「下町ロケット」の好調などを報告。リオ五輪では女子マラソンなど重要種目を獲得し、「強運を実力に変える年」と位置づける。

 テレビ朝日の早河CEOの年頭挨拶は、「変化を創りだす」がテーマ。HUT(総世帯視聴率)の低下による「テレビ離れ」は、「10年以上にわたり、特に若い世代の間で現実」と言及。NetflixやAmazonの動画配信、キー局による「TVer」の取り組みなどにより、「『テレビは大きな転換期』、『曲がり角』と言われるが、その途中経過的な見方は取るべきではない。テレビは転換期を通り過ぎ、曲がり角も曲がり終え、新しい次元に入っている。60年余り続いた『テレビの時代』ではなく、インターネットの新しい影響を受けた新しいメディアの時代を歩いている」という現状認識を示している。

 その上でテレビ朝日が「インターネットを取り組んだ『新しい時代のテレビ』」への挑戦と位置づけるのが、サイバーエージェントと共同で立ち上げる「Abema TV」。多チャンネルを基本無料で楽しめるテレビ型サービスと位置づけ、4月に正式に開局。「変化の流れは乗るものでなく、自ら創るもの」と語る。

 スカパーJSATは、'16年の大きなトピックとして、4機の衛星の打ち上げとともに、110度右旋や左旋放送、4K/8Kロードマップのフォローアップ対応などを挙げる。衛星会社設立から30周年、他チャンネル放送パーフェクTV!開局から20年目で、イノベーティブな会社「スカパーJSAT WAYを創りあげる」としている。

 WOWOWは、「国内有料放送市場における圧倒的シェア獲得」、「収益力、コンテンツ制作/獲得力強化」を最大の目標に掲げる。特にオリジナルコンテンツについては、すでに評価を確立した「ドラマW」に並ぶ、社会から支持され、クリエータが表現したいと集まってくるようなオリジナルブランドを10年であと3ジャンル確立することを目指すという。

(臼田勤哉)