ニュース
NHK、本格SFドラマ「火星の女王」12月放送。スーパーハイビジョンカメラ火星へ。宇宙・未来プロジェクト
2025年6月24日 17:26
NHKは、放送100年の節目を迎えた2025年に、宇宙・未来をテーマとして掲げ、12月にかけて様々な番組を放送する「宇宙・未来プロジェクト」を発表。最大の目玉として、人類が火星に移住して40年が経過した未来を舞台とした特集ドラマ「火星の女王」を12月に放送する事を明らかにした。89分×3本構成になる予定。
また、2026年度にはNHKがJAXAと共同開発したスーパーハイビジョンカメラが火星衛星探査計画「MMX」の探査機に搭載され、打ち上げられる予定。
「宇宙・未来プロジェクト」を担当する中井暁彦チーフ・プロデューサーは、「今年の12月にかけて、“これからの100年”、未来を考えるプロジェクトがあっても良いのではないか?と仲間達と考えて様々な番組を作っています。普段は未来や宇宙の事を考える機会はなかなかないものですが、ふとしたきっかけで宇宙を見上げて未来を考えるタイミングは誰しもあるはず。その時に、お届けできる番組があるようにしたい」と説明。
プロジェクトとしての囲みはあえてゆるくし、「その中で出していく番組は多様にしたい。“宇宙”や“未来”という言葉が番組の中で飛び交うのではなく、それぞれに未来を考えた番組が沢山あるなという空気を作りたい。ニュートリノの小柴昌俊さんが、“チャンスは誰にでも開かれているが、掴めるのは準備をした人だけだ”と仰っていたが、それと同じ想いで番組をお届けできたら」と抱負を語った。
放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK総合)
目玉となるのが、12月放送予定の本格SFドラマ「火星の女王」。舞台は2125年、人類が火星に移住して40年。支配を強めるISDA(イズダ/惑星間宇宙開発機関)と、自由を求める住民の間で緊張が続く火星社会に、突如“それ”が現れた。
誰が、何のために作ったのかも分からない未知の存在。視覚障害がある若き女性リリは、地球にいる青年アオトと交わした“ある約束”を胸に、旅立ちを決意していた。だが事件は、すべてを変えてしまう──。火星と地球を巻き込む謎、そして“それ”の正体とは。
原作は小川哲氏、脚本はヴァイオレット・エヴァーガーデンなどの吉田玲子氏。音楽は坂東祐大氏、yuma yamaguchi氏。
出演は台湾出身で、国際オーディションを経て起用されたスリ・リン氏。リリ-E1102役を演じる。音楽好きの22歳。生まれながらに視覚障害があり、火星のアカデミーを卒業し、地球に向かおうとしていた。ラジオ好きで、ラジオから流れた曲を聞いたことで地球のバンド「ディスク・マイナーズ」のファンとなる。
菅田将暉氏演じる白石アオトは、ISDAの日本支局に努める若手職員。鉱物について詳しい。ディスク・マイナーズのファン。火星で行なわれた研修でリリと出会い、互いにディスク・マイナーズのファンであることから意気投合。父が22年前に行方不明に。その原因がある科学者のせいではないかと疑い続けている。
演出を担当した西村武五郎氏は、「2125年を舞台にしたSFドラマで、どちらかといえばミステリー。見えないものを、無きものとしない戦いを描いた作品です。100年前から比較して、現代はAIが当たり前のものになり、民間がばんばんロケットを飛ばす時代になったが、その中で“次の100年を描きたい”と、小川哲さんと話す中で生まれてきた企画」と説明。
脚本の吉田玲子氏について、西村氏は「小川さんから、脚本家は吉田玲子さんが良いとお話があった。ヴァイオレット・エヴァーガーデンなどを観ていらして、僕にないものを、彼女に埋めて欲しいという要望で吉田さんにお願いすることになった」という。
現在公開されているキャストは、スリ・リン氏と菅田将暉氏のみだが、西村氏は「日本人を中心にしているが、国際的なキャストも器用されている。ぜひご期待いただきたい」とコメントした。
CGも駆使した、映像面にも注目の作品。映像的な見どころについて、西村氏は「どのシーンも凄いものに仕上がっています。たとえば、火星の世界では、地表に危険が多いので、地面に向かって伸びる“グラウンドスクレイパー”(超高層ビルであるスカイスクレイパーの逆の意味)という空間があり、そこで人々が暮らしている。その映像にも注目して欲しい」と語った。
NHKスペシャル「ヒューマンエイジ」 (NHK総合)
12月放送予定のNHKスペシャル「ヒューマンエイジ」が迫るのは、繁栄を極める一方で、地球環境に危機をもたらしている「人間」。
それでも「もっと豊かに」という欲望を止められない。科学の進歩により地球全体に圧倒的な影響を及ぼすヒューマンエイジ、人間の時代。人間とは一体何者か?この先どこへ向かうのか?2023年から続くシリーズの最終章となり、宇宙開発など、未来に向けた人類の飽くなき欲望にも焦点を当て、未来を希望に変えるカギを探す。ナビゲーターは鈴木亮平。
夜ドラ「いつか、無重力の宙で」(NHK総合)
9月8日放送開始のドラマで、毎週月~木の午後10時45分~11時00分に放送。全32回/8週放送の予定。
高校時代、「一緒に宇宙に行こう」と夢を語り合った天文部の女子4人組。その約束が果たされぬまま大人になったある日、ふと忘れていたかつての“夢”と再会する。「超小型人工衛星だったら……今の私たちでも宇宙を目指せるかもしれない……!」あの頃の自分に背中を押されて、いま2度目の青春が始まる!
脚本は武田雄樹、出演は木竜麻生、森田望智、片山友希、伊藤万理華ほか。天の声(語り)は柄本佑。
「野口聡一・劇団ひとりの2030月面テレビ」(NHK総合)
「野口聡一・劇団ひとりの2030月面テレビ」は8月放送予定。月面、火星……人類はどこまで行けるのか?宇宙飛行士の野口聡一と劇団ひとりがMCを務める「2030月面テレビ」第3回は、7月12日から日本科学未来館で始まる特別展「深宇宙展」とコラボ。世界初公開となる有人与圧ローバーの実物大模型や、H3ロケットのフェアリング(最先端部分)などの展示とともに、月面探査のみならず火星・深宇宙の最新情報をお届けする。
「大切なことは火星がおしえてくれた」 (Eテレ)
Eテレで7月19日午後4時15分~4時58分放送の番組。古代ギリシャ時代から存在が知られてきた火星。人類と火星の関係を振り返ると、かつて「天動説から地動説」へ宇宙観が大きく変わり、地球外生命を強く意識するなど、人類の価値観が大きく転換した重要な局面に、たびたび登場する。
今、人類は火星へ到達しようと宇宙開発が活発化。火星の知られざる姿が明らかになりつつある。過酷な環境で生きる技術を手にした未来で、人類はどんな境地に達するのか。最新の成果と共に考えていく。
「3か月でマスターするアインシュタイン」(Eテレ)
7月2日放送開始、毎週水曜午後9時30分~10時00分放送で、全12回。「タイムマシンは夢じゃない!?」「時間がのびる?空間が曲がる?」「宇宙に果てはあるの?」など、常識を超えた謎に天才物理学者・アインシュタインの視点や発想で迫ると、新たな思考の扉が開ける。
番組をビゲートするのは、科学をエンタメに変える物理学者・東京学芸大学の小林晋平教授。難解なアインシュタインの理論に予備知識なしで挑むのは、3時のヒロイン・福田麻貴。視聴者と同じ目線からアインシュタインの不思議な世界をひもといていく。
「子ども科学電話相談 『深宇宙展』スペシャル!」(ラジオ第1)
8月4日午前8時30分~11時50分にラジオ第1で放送する子ども科学電話相談 「深宇宙展」スペシャル。夏休みの3時間半拡大版で、日本科学未来館で開催される特別展「深宇宙展」に子どもリポーターが潜入。世界初公開の有人月面探査車の実物大模型や、ソユーズ宇宙船の実機などイチオシ展示を生中継で紹介する。
スタジオにはレギュラー回答者でブラックホール研究の第一人者、本間希樹先生(国立天文台教授)をはじめ、天文・宇宙分野担当の先生が大集合。さらに「深宇宙展」監修者の戸梶歩がゲスト回答者として加わり、子どもたちの疑問・質問に全力で答える。
「ミドリ・デイルのアルトコロニーラジオ」 (ラジオ第1)
12月放送予定のラジオ番組。舞台は、2125年火星。そこにはすでに10万人の人類が移住し、「アルトコロニーラジオ」はそんな「火星人」の心の支えとなっている。火星で暮らす人たちはどんな悩みを抱えているのか?火星にとって地球はどんな存在になっているのか?科学的な裏付けも入れつつ、私たちの未来に思いをはせていくエンターテインメント番組。視聴者やイベントコラボなど、双方向の仕掛けを入れていく。
「クローズアップ現代」 (NHK総合)
定時番組でも宇宙を特集。「クローズアップ現代」 (午後7時30分~7時57分)では、宇宙ビジネスの機運が高まり、日本でも企業が次々に名乗りを上げている状況を紹介。宇宙分野には縁が無かった大企業や、中小企業までも参入に積極的で、国も10年で1兆円という規模の予算を投じて後押しする方針。大きな成長が見込まれる宇宙ビジネス、日本の勝ち筋は?「あさイチ」、「天才てれびくん」をはじめ、多彩な番組で盛り上げる予定。
イベントとも連動
前述の通り、特別展「深宇宙展~人類はどこへ向かうのか」とも連動。アポロ計画からおよそ半世紀。再び月に宇宙飛行士を送り、将来的に火星の有人探査を行なうという人類の夢が現実のものになろうとしている。
イベントでは、JAXA、国立天文台、東京大学をはじめとする日本の主要な宇宙研究開発機関、宇宙開発に携わる多くの企業・団体の協力により実現。世界初公開となる、「アルテミス計画」のために日本が開発している有人月面探査車の実物大模型や大画面で体感する火星ツアーなど、最新宇宙探査技術とその成果が一堂に集結する。
スーパーハイビジョンカメラが火星へ
火星衛星探査計画「MMX」において、2026年度に打ち上げ予定の探査機に、NHKがJAXAと共同開発したスーパーハイビジョンカメラ(4K・8Kカメラ)が搭載される。
開発したカメラを用いて、火星と火星の衛星フォボス・ダイモスの4K・8K撮影に挑み、「MMXを鮮明なスーパーハイビジョンで記録・映像化するとともに、放送などのメディアで広くお伝えすることを目指す」というプロジェクト。
JAXAでは、火星の衛星の起源や火星圏の進化の過程を明らかにすることを目的に、2026年度の打ち上げを目指して探査機の開発を進めている。MMXでは、火星と火星の衛星フォボス・ダイモスの科学観測を行なうとともに、フォボスに探査機を着陸させ、その表面から表層物質のサンプルを採取し、地球に持ち帰ることを目標としている。
NHKがJAXAと共同開発したスーパーハイビジョンカメラは、探査機の進行方向を撮影するための8Kカメラと、探査機の進行方向に対して側面方向を撮影するための4Kカメラの、2台の超高精細カメラで構成。
配置としては、「進行方向だけでなく、着陸時に降りている様子をうまくとらえられるように配置を工夫している。比較的広角なカメラを搭載しているので、様々な場所を高解像度で確認できるとのこと。
ロケット打ち上げ時の振動・衝撃や宇宙空間での過酷な環境に耐える設計となっており、JAXAの規定に基づく耐環境試験をクリア。火星と地球との間の通信速度の制約から、データ量の大きな4K・8K映像をそのまま送ることは難しいため、撮影間隔は10秒に1回とし、連続的に撮影した静止画を地球へ伝送した後に滑らかな映像に変換する方式を採用。
完成したスーパーハイビジョンカメラは、既に探査機に取り付けられており、現在は様々なテストを行なっているとのこと。