小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1216回

プロジェクタにAIを搭載して何ができる? JMGO「N3 Ultimate」
2026年4月8日 08:00
ホームプロジェクタに強いJMGO
中国メーカー主体で進む家庭用プロジェクタも、昨年は競争の激化とともに低価格・高機能化が進んできた。昨年はポータブルプロジェクタに面白い製品が多くあったが、今年最初に扱うプロジェクタはホームタイプである。
JMGOの製品を最初に使ってみたのは2024年だったが、今回は4月10日より発売が開始されるフラッグシップモデル「N3 Ultimate」をいち早くお借りすることができた。
通常価格は499,180円で、4月9日までの予約販売期間中は20% OFFの399,344円で購入できる。
N3 Ultimateのポイントは、AIが設置環境を判断して、最適な状態に調整してくれることである。これにより、設置場所を移動しても、マニュアルで投影位置や台形補正などを行なう必要がない。
現代は様々な製品にAIが搭載されつつあるが、プロジェクタにAIを搭載することで何が良くなるのだろうか。早速テストしてみよう。
シンプルにまとめたデザイン
JMGOの製品はほとんどが台座に本体を載せるという設計になっている。最初は珍しかったが、昨今は他社も追従し始め、中級以上のプロジェクタはこのスタイルになっている。
以前はハイエンドプロジェクタは天井から吊るすか、床に置いても簡単には移動しないものだったのだが、小型軽量化が進んだことで、設置場所を変える、あるいは見たいときだけ設置するという使い方が主流になったということだろう。
N3 Ultimateはこれまで展開してきたN1Sシリーズとデザイン的にはかなり近い。正面やや右寄りにレンズがあり、その脇には各種センサーを備える。
スタンドと本体は一体化されて分離できず、スタンド底部に端子類を備えている。端子は左からHDMI(eARC)、HDMI入力、USB 3.0、リモコン受光部、電源端子となっている。
底部にも台座の回転機構を備えている。また本体スタンドは全体がジンバル構造になっており、電動で動かせる。つまり電動でパン・チルトができる。
加えて光学ズームも可能なので、いわゆる電動パン・チルト・ズームができる「PTZカメラ」と同じ構造だが、光の向きは逆になる。
またレンズシフトが可能で、光学的に投影位置を動かすことができる。横方向に±53%、縦方向には±130%動かせるので、可動範囲は広い。もちろんそれに電動ジンバルの動きも加わるので、物理的な投影範囲はかなり広い。
光源は3色レーザーで、明るさは5,800 ISOルーメンに達する。投影方式は0.47インチの4K解像度DLPだ。Dolby Vision、HDR10に対応し、BT.2020色域を110%をカバーする。
スピーカーは両サイドに設置されており、12.5W×2のステレオ構成。Dolby Digital、Dolby Digital Plus、DTS:Xに対応する。
OSはGoogle TV 5.0で、Netflix、Amazon Prime Video、YouTube、U-NEXT、Disney+、Hulu、ABEMAといった日本でよく使われる動画サービスにはデフォルトで対応。すでにGoogleアカウントでこれらのサービスに紐付けされていれば、プロジェクタに表示されるQRコードを読み取るだけでログインできる。
リモコンも見ておこう。ショートカットはプライムビデオ、Netflix、YouTubeとなっており、右上のLive TVというボタンには設定で特定のサービスを割り付けできる。
リモコン自体にジャイロセンサーを備えており、一番下のボタンを押しながらリモコンを振ると、その動きに応じてプロジェクタが電動で動いて投影位置の調整が行なえる。
AIによる自動調整ができる
最初に設定する際には、投影位置を決めるための、4つのパラメータが出てくる。
最初に出てくる「レンズシフト」は、光学レンズによって縦横の投影位置を決める機能。ただ、ここで大きくいじるよりも、この後の「ジンバルモード」で物理的にプロジェクタを動かして大まかに位置決めし、そのあとレンズシフトで微調整するべきだろう。補正させる順番がこれではないのでは?という気がする。
「ズーム」も光学補正である。多くのプロジェクタは単焦点レンズなので、ズームはデジタル補正となる。光学でズームできるということは、わざわざズームレンズを搭載したということ。このタイプのプロジェクタとしては、かなり新しいアプローチだ。
「回転」はローテーション補正。プロジェクタの設置位置が水平ではないという場合には便利である。
これが終了すると、プロジェクタ設定にアクセスできるようになる。ポイントは「画面調整」機能だ。
「AI画像位置決め」は、部屋とスクリーンの状態をセンシングし、AIが最適な投影位置を割り出してくれる機能である。
ただ実際に試してみると、「画像がスクリーンを覆えません」というエラーが出る。同様に、「自動スクリーンアジャスト」も調整に失敗する。
どうやら、プロジェクタとスクリーンの距離が近いと使えないようだ。壁際に設置したスクリーンに対して、6畳間の反対側の壁ギリギリまでプロジェクタを離して再度設定したところ、ようやく自動で位置決めすることができた。
残念だが、これらの機能は想定されているスクリーンサイズと部屋のサイズが、日本の家庭に合わないように思う。現在市販されているスクリーンは100インチサイズぐらいが標準だと思うが、AIはそのサイズギリギリに投影しようとするので、部屋が6畳間では小さすぎることになる。
約50万円のプロジェクタを6畳間で使うなよ、という意見はまったくその通りではあるのだが、スクリーンサイズ全域に表示してほしいわけではなく、投影距離に応じて適度なサイズでうまいことやってくれるのがAIというものではないのか。特に日本の住宅は狭くて物が多いため、設定の難易度が高い。だからAIが必要になる。そうした事情も加味して、機能のアップデートを期待したい。
効果が高いのは、「光学画像最適化」だ。これは細かな補正をなるべく光学補正を使ってやってくれるので、デジタル補正を使わずに高画質を確保できる。この機能はスクリーンに近くでも動作する。
最適化が完了すると、どれぐらい明るさと鮮明度が最適化されたか? が確認できる。同じ位置でも、部屋の明るさが変わるときなどには再度最適化したほうがいいだろう。
興味深い機能としては、「ジンバル体感リモコン」がある。これはリモコンの一番下のボタンを押し続けることで、リモコンを振る角度に応じてジンバルを動かすことができる。すなわち投影位置が動くということである。ボタンから指を離すとそこで停止する。
ただこれ、何に使うんだよおおぉ、というのが正直な気持ちである。プロジェクションの位置を、ドローンみたいにリモコンでインタラクティブにガンガン変えたいというニーズが実際あるのだろうか。ビルの壁に向かって打つとかだったら遊びとして面白いかもしれないが、部屋の中でやっても仕方がないだろう。
設置位置については、5つまでプリセットが持てる。リビング、寝室など置き場所を決めて登録しておけば、設定を呼び出すだけで最適な投影状態になる。多少置き場所がズレても自動的に補正するので、マニュアルで毎回補正する必要がない。
コンテンツに応じてトーンが選べる
設定はこれぐらいにして、実際にコンテンツを視聴してみよう。今回視聴したのは、Netflixで配信中の「ルシファー」である。
派手なドンパチがある作品ではないが、暗部に浮き出す照明のハイコントラスト感が印象的だ。特に赤の発色が非常に深く、いわゆる黒赤のような色も無理なく出せる。
こうした作品を見る際に利用したいのが、「シネチューナーマスター」だ。「ロマンス&ドラマ」、「スリラー&ミステリー」など、5つのジャンルがあり、これらを選ぶといかにもそれっぽいカラートーンに変えることができる。
もちろん、作品の方でもそうした傾向に寄せてカラーを作っているわけだが、それがさらに強調される印象だ。フェイストーンなども結構変わるので、作品にもう一歩積極的に踏み込んで鑑賞できる。
ただ、ネット配信サービスではその作品のジャンル分けも行なわれている。AIを搭載しているのなら、そうした情報を読み取って自動的にトーンを変更するぐらいのことはしてほしかった。これは次の課題であろう。
本機ではデフォルトでフレーム補間(MEMS)がONになっているが、時折設定が外れて元のフレームレートに戻るときがある。気になる人は、OFFにしたほうがいい。設定の場所がわかりにくいが、[クイック設定]-[表示]のずーっと下にある。[デフォルトに戻す]ボタンよりもさらに下にメニューが続くというのは、UIとしてあまり見たことがないため、このあたりもアップデートでわかりやすくして欲しい。
本機で特徴的なのは、音だ。デフォルトの状態ではまあそんなもんかなと思っていたのだが、設定で「ドルビーオーディオ処理」をONにすると、ドコスコ低音が出る。サブウーファーもなしにどこから出ているのかとびっくりするぐらいだ。設定に「低音を減らす」という項目があり、そこまでいるかなぁと思っていたのだが、「ドルビーオーディオ処理」を使うなら低音を減らした方がいいだろう。
マンションにお住まいの方は、床に直接置くと下の階の人にご迷惑かもしれないので、何か台の上に載せたほうがいい。それぐらいドッコドコだ。ただ脚部の下に吸音用のふかふかしたものを敷いてしまうと、ジンバルが回らなくなるのでご注意願いたい。
ユニットはフルレンジなので、低音を出しすぎるとセリフの声が聞きづらくなる。海外作品は字幕で見るのでそれほど影響ないが、日本語のアニメやドラマなどではうまくバランスをとってやる必要がある。
総論
N3 Ultimateは、3色レーザーを使って5800 ISOルーメンという明るさと発色、高コントラストを叩き出すハイエンドモデルである。さらにAIや電動ジンバルを積んで機能強化を図ったというのは、非常に新しいアプローチだ。
こうしたハイエンドプロジェクタでもサイズ的には中型なので、移動していろんな部屋で使うのが前提になってきた、ということだろう。ハンディやモバイルとはまた考え方が違う、移動に対する一つの解である。
製品構造としては、リモートカメラであるPTZカメラと似たような設計になっている。PTZカメラも昨今はAIによる自動追尾といった機能を備えるが、そうした機能をプロジェクタに搭載するというアイデアが光る製品である。
AIの実装は、AI機能を前面に出すのではなく、自動化や最適化の一環として採用されるにとどまっている。今後はもう少しコンテンツ側に踏み込んだ、インタラクティブなAIを搭載するとどうなるだろうか。
同じディスプレイ装置でも、テレビはもはや進化が頭打ちになっているように見えるが、プロジェクタの進化のスピードには目を見張るものがある。テレビコンテンツはネット経由でも見られるようになってきた現在、「テレビの次」のポジションを埋めるものがプロジェクタ、ということではないだろうか。




















