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SOULNOTEとスフォルツァート、「耳で作った」オーディオ通信プロトコル「USS」

USSは「徹底的な試聴の繰り返し」で作ったという通信プロトコル。SOULNOTEでは「Z-3」などで対応アップデートが予定される

SOULNOTEとスフォルツァートは、PCやNASなどからLANケーブル経由でPCM/DSDデータをDACに伝送するオーディオ用通信プロトコル「USS(Ultimate Sound Stream)」を共同開発した。「徹底的な試聴の繰り返しにより、耳で作った通信プロトコル」だという。なお、利用にはネットワークトランスポートなどオーディオ機器側の基板交換といったメーカー作業が必要になる。

SOULNOTEではネットワークトランスポート「Z-3」をUSS対応にするバージョンアップを予定。メーカー側で作業が必要となるが、USSインプット専用モードと、UPnPやROONなどが動作するモードを、ユーザーが任意に切り替えられるようになるという。その後はLAN DACの開発といった製品展開も予定している。

スフォルツァートで開発を進めているUSS対応製品の内部基板

スフォルツァートでも、LAN DACの開発をはじめ、USSアウトプット機器として、MacやRoon OS搭載機器のように、ASIOドライバーで対応できない機器向けのソリューションや、Amazon Music、Qobuzなどに対応したUSSアウトプット機器の開発を予定しているとのこと。

USSは、PCやNASなどをレンダラーとして、PCM/DSDデータを、LANケーブル/ネットワーク経由でDACに伝送するためのプロトコル。「PCとUSBケーブルでつなぐDACをUSB DACと呼ぶが、LANでつなぐDAC、LAN DACを実現するためのLAN伝送プロトコル」だという。

USSプロトコル自体は、UDP(User Datagram Protocol)上で動作し、データを可能な限り小さな単位で、頻度を上げて伝送することで、受け側の負荷変動を極力小さくし、高音質を目指すもの。SOULNOTEとスフォルツァートの共同開発プロジェクト第1弾「ZERO LINK」と同じく、「負荷を限りなくゼロに、負荷変動を限りなくゼロに」がコンセプトだという。

USSプロトコルの受信機能を持つインプット機器については、規格をオープンにする予定はなく、SOULNOTEとスフォルツァートの2社のみが製品を展開する。

一方で、USSプロトコルで送信する機能を持つアウトプット機器については、規格を無償提供。「すでにUSSアウトプット機能の搭載を前向きに検討しているメーカーもある」とのこと。

USS対応のASIOドライバーをインストールすると、オーディオ出力に「USS protocol」が表示される
USS対応のASIOドライバーでは、バッファなども細かく設定可能できる

アウトプット機器としては、Windows端末も利用可能。対応製品のホームページからASIOドライバーをダウンロード・インストールすることで、USSプロトコルを利用できる。ASIOドライバーが使えないmacOS向けには、上述のように“USB in USS out”の外付けボックスなどの展開が予定されている。

こうしたオーディオ用のLAN通信プロトコルとしては、SOULNOTE/スフォルツァートの製品でもサポートしている「Diretta」や、Roon独自の「RAAT」などが存在している。

SOULNOTEの加藤秀樹氏(左)とスフォルツァートの小俣恭一氏(右)

しかし、両社は「Direttaはすぐれた音質をもたらす素晴らしい技術であるものの、技術詳細はブラックボックスであり、自分たちで手を入れることができない」と説明。スフォルツァートの小俣恭一氏によれば、「音質を突き詰められないもどかしさ」もあったといい、両社で協力して新プロトコルの開発に至ったという。

なお、SOULNOTEの加藤秀樹氏によれば「いつかプロトコルを作りたいよね、という話をしたのが2年前くらい。開発作業は1年くらい」とのこと。

ソフトウェア開発は、以前から2社と協業しているソフトウェア開発会社のユニテックが担当。ユニテック社内にSOULNOTEのZ-3や、SACDプレーヤー「S-3」といった機材を持ち込んだ試聴室を設け、ソフト開発中に処理やパラメータをひとつ調整するごとに再生音について協議しながら開発を進めた。

ユニテック・中村卓登氏

開発を担当したユニテック・中村卓登氏は、「Direttaはプロトコルを開発した会社と(機器に)組み込む会社が別々にあると思いますが、USSはプロトコルも弊社が開発しましたし、そのプロトコルの出し側・受け側も弊社で開発しました。どちらも弊社が実装者なので、分からないことが何も無い」ことがDirettaとの大きな違いだと説明。

そのため「USSのアップデートした場合、その改良に合わせて、出し側・受け側もアップデートできるのが強み」だとした。

説明会で用意されたUSS対応済みのZ-3。写真では青く写ってしまったが、USS受信時、本体のINPUT・LANのLEDが白色に光る

音質について、SOULNOTEとスフォルツァートは「音の違いは聞いていただければ誰の耳にも明らか。今までわれわれのプレーヤーを使ってDirettaで聴いていた音が実は何枚もベールをかぶっていたのだと認識させられる、そんな音をUSSは聞かせてくれる」とする。

「ただし、これは必ずしもUSSがDirettaに対して優れたプロトコルであるということではありません。Direttaは競合他社技術であり、我々のプレーヤーに組み込む際Direttaとその周辺のソフトが、それぞれの内容を秘密にしたままデータの受け渡しを行なう作りになっており、これが本来必要のない余計な処理が入る原因となっています」

説明会で用意されたUSS対応前のZ-3。上写真はRAAT受信時でLEDは黄色、下写真はDiretta受信時でLEDは紫色に光っている

「すべての無駄な処理を取り除いて、徹底的に音質追及するためには入り口から出口まですべて一貫して開発する必要がありますが、競合他社の技術であるDirettaの内容は知り得ないため、全部自社開発したのがUSSプロトコルです。

「USSプロトコル自体が優れた伝送方式であることももちろんですが、USSで入力された音楽データをZERO LINKで出力するところまで一貫してソフト作成し、試聴を繰り返しながら音質劣化につながる一切の無駄な処理を省くことがきたことが、大幅な音質向上の要因です」

なお、SOULNOTEとスフォルツァートは10月17日~19日の「2025東京インターナショナルオーディオショウ」にて、USSに関するデモを予定しているとのこと。