ミニレビュー

映画見るなら輝度は重要。「VITURE Luma Ultra」を試す

VITURE Luma Ultra XR グラス。価格は89,880円。下位モデルに64,880円の「VITURE Luma XR グラス」もある

サングラス型ディスプレイもずいぶん数が増えてきた。まだまだメジャーな製品と言えるところまで来てはいないと思うが、それでも、中国市場などの旺盛な需要を背景に、どんどん新製品が登場する。メーカー同士の競争も激しい。

今回紹介するのは、本日11月18日より発売される、VITUREの「VITURE Luma XR グラス」だ。中でも上位機種に当たる「VITURE Luma Ultra XR グラス」について試していこう。

サングラス型ディスプレイでXREALを追うVITURE

サングラス型ディスプレイの構造は、基本的にどれもよく似ている。

マイクロOLEDを目の上に来る部分に搭載、そこからの光をなんらかの光学系で90度曲げ、目に届ける。USB Type-CでPCやスマートフォンなどの外部機器と接続、DisplayPort Altモードで出力される映像を両目に表示する、という形だ。

メーカーは「XRグラス」「ARグラス」と呼称する場合があるが、グラス自体XR系の機能が搭載されている例は少ない。接続する機器との連携によっては「空中に映像が浮いて見える」形になるもので、基本的には「目の前に大きな画像を表示するサングラス型のディスプレイ」と考えて良い。

ただし、各社当然、いろいろな進化と付加価値を考えている。VITUREの戦略については、以前連載で記事にしている。

以前には同社製品の「VITURE One」のレビューもしている。

商品戦略として、同社の方向性に大きな変化はない。「より明るく鮮明なディスプレイ」を目指しつつ、外付け機器である「VITURE Proネックバンド」(44,800円から)と組み合わせることで付加価値を出す、という形である。

別売のAndroidデバイス「VITURE Proネックバンド」(44,800円から)。発売済み

今回テストした「VITURE Luma Ultra XR グラス」(以下VITURE Luma Ultra)の場合、視野角と輝度向上、VITURE Proネックバンド連携が強化されている。

トランスルーセントデザインに変更。全機能活用にはVITURE Proネックバンドが必要

ではライバルである「XREAL One Pro」、旧モデルに当たる「VITURE Pro」と比較しながら見ていこう。

VITURE Luma Ultra
前モデルの「VITURE Pro」
ライバルのXREAL One Proとも比較。写真のモデルでは、別売の「XREAL Eye」も組み合わせている

前出のように、基本はディスプレイだ。付属のーブルを使い、PCやスマホと接続する。

マグネットで接続する専用のケーブルを使い。USB Type-CでPCなどと接続

従来モデルはソリッドなデザインだったが、Luma Ultraはいわゆるトランスルーセントな仕上げになっている。

VITURE Luma Ultraはボディが透明に
前モデルのVITURE Proはソリッド
XREAL One Proもソリッドな仕上げ

前モデル・VITURE Proに比べると左右の幅が広くなり、少しゆったりつけられるようになった。そして、メガネの部分を3段階に傾ける機構も搭載された。この機構はライバルであるXREALが採用したもので、VITUREも追いかけた感じである。

VITURE Luma Ultraには角度調整機能が搭載に
つけてみたところ。これはVITURE Luma Ultra
VITURE Proにはオレンジのロゴがあった
XREAL One Pro。質感はVITUREより少し安っぽく感じる

XREAL One ProとVITURE Luma Ultraを比較すると、レンズ部にやはり大きな違いがある。XREAL One Proは薄くなっているが、一方で、視力補正にはインサートレンズが必須。VITUREは一貫して近視用の視度調整機能を内蔵している。

Luma Ultraの場合には-4.0まで。VITURE Proが-5.0までだったので、範囲は狭くなった。強い近視や乱視についてはインサートレンズで対応する点に変化はない。

左が旧機種、右がVITURE Luma Ultra。横幅が少し広くなった。どちらも視度調整機能付き
左がXREAL One Pro。接眼部は薄いが、視度調節機能は入っていない

外観を見ると、メガネの両端にカメラがある。ただこれは、単体では利用できない。VITURE Proネックバンドと連携した際に、いわゆる6DoFでの位置把握やハンドジェスチャーの認識などに使う。

VITURE Luma Ultraにはカメラセンサーが搭載されたが、VITURE Luma Ultra単体では有効活用されない

ここはXREALと大きく考え方が違う。

XREALは単体で3DoFに対応、「空間にディスプレイが浮いている」ような形になる。一方でVITUREは、VITURE Proネックバンドを使うと同じような体験になるが、グラスだけだとODoF。つまり「常に目の前に画像が張り付いて表示される」ような感覚になる。

VITURE Proネックバンドはいろいろな機能を持っている。動画再生などはもちろん、ゲームの表示も可能。Androidデバイスなので、かなり自由度は高い。

VITURE Luma UltraとVITURE Proネックバンドをセットで

一方で、デバイス自体が5万円程度と高く、その割に操作感は良くない。

セットでいろいろなことができる、というのは良いが、グラスとセットで15万円近く、という価格に見合う体験か……と言われると、現状は首を傾げざるを得ない。もう少しスペックが上がって快適に使えるデバイスになるまで、強くお勧めはしない。

輝度が高く鮮明。映画を見るなら画質が最優先

ではLuma Ultraがダメな製品かというと、まったくそんなことはない……というのが面白いところだ。

視野が広く映像が明るく鮮明なので、「コンテンツをシンプルに視聴するディスプレイとしての満足度が非常に高い」のだ。

解像度で言えば、XREALなどの製品や、VITURE Proは1,920×1,080ドットだ。それに対してLuma Ultraは1,920×1,200ドット。この差は劇的か、というとそこまでではないのだが、映像を見てみると、「広い」と感じる。

また、Luma Ultraの水平視野角は52度。VITURE Oneが49度、XREAL One Proが57度なのでそれには劣るのだが、意外とその差は感じづらい。

数字で示すのは難しいが、Luma Ultraは輝度が大きく変わっている。輝度は1,500nits。旧モデルのVITURE Proが「実感で1,000nits」とされていたのでかなり明るくなった。XREAL One Proが700nitsなので、差は大きい。

そうしたスペックはともかく、輝度が上がり表示がすっきりしたおかげで、映画などを視聴する時の体験が劇的に上がった。

旧モデルのVITURE Proとの差もあるが、XREAL One Proとの差も大きい。XREALは視野を広げる一方で輝度や発色が犠牲になっている。VITUREはそこで「鮮明さ重視」を変えなかった。

サングラス型ディスプレイ・スマートグラスはまだまだ若い製品ジャンルである。求められる機能の全てを満たしたものはない。

「自然な体験」という意味では、単体で3DoF、XREAL Eyeをセットにすれば6DoFができるXREALの方が上と言える。

だが、こと「映画を楽しむデバイス」としては、VITURE Luma Ultraの方が体験は良い。「画質が良い」ことは大きな差別化要因だ。今回、海外出張の機内で映画を見るのに使ったが、間違いなくこの用途では、VITURE Luma Ultraの方が良い。

なお、PCやMacと接続してディスプレイとして使うから、VITURE公式の「Space Walker」アプリを使うと、仮想的なワイドディスプレイ・3画面ディスプレイとして使える。空間での位置安定はXREALの方が一方上であるように思うが、画質や鮮明さで勝るので、PCディスプレイとして使うのも悪くない。この際にはグラス内蔵のカメラが有効になり、6DoFで動作する。

「Space Walker」アプリを使うと、PCやMacのワイド画面を仮想空間内で大きく表示できる

現状、テクノロジーとしては、独自チップで「メガネ単独の3DoF」を実現しているXREALが先行している、と言っていいだろう。だが、現状での製品としての美点はまた別のところにあり、「映画用に選ぶ」なら、筆者はVITURE Luma Ultraの方をお勧めする。なお来年1月には、XREALの製品と同じくグラス単独で3DoFに対応、視野角が58度になる「Beast」の発売が決定している。輝度は1,250nits、解像度は1,920×1,080ドットに落ちるが、こちらが気になる場合、今から予約しておこう。

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また、下記のリンクから公式サイトに飛ぶと、ディスカウントコード入力不要で以下の3製品を10%OFFで購入できる。
VITURE Luma XRグラス:64,880円
VITURE Luma Ultra XR/ARグラス:89,880円
VITURE Beast XRグラス(予約販売):82,880円

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西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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