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Grell Audio、元ゼンハイザーのエンジニアが手掛けた「OAE2」。独自の「FSFM」で自然な定位

OAE2

アユートは、かつてゼンハイザーで革新的なヘッドフォンを手掛けた、アクセル・グレル氏が率いるドイツのヘッドフォンブランド・Grell Audio(グレル・オーディオ)のオープン型モニターヘッドフォン「OAE2」を7月3日に発売する。価格は99,000円。独自開発の「FSFMテクノロジー」を搭載しているのが特徴。

アクセル・グレル氏

アクセル氏は、ドイツで生まれ、12歳の時に初めてスピーカーを自作。中等学校を卒業後、最初は歴史学と社会学を学んだが、その後電気工学と音響学に転向。在学中は、フロント・オブ・ハウス・ミキサーとしてサウンドデザインの経験を積む。

1991年にゼンハイザーに入社し、ヘッドフォン設計における革新的なアプローチで知られるようになり、数十年にわたるキャリアを通じて、名機を手掛けてきた。その後独立し、2019年に設立したエンジニアリング企業「grellaudio consulting」にてオーディオ業界の著名企業向けにヘッドフォンを開発。2023年に自身のブランド・Grell Audioを設立し、オーディオ業界のベテラン専門家からなる小規模なチームと共に、プレミアムヘッドフォンを開発している。

アクセル氏の設計哲学である「可能な限り自然で正確なサウンドの実現」を体現するべく、徹底的なテストと改良を重ねることを信条とし、リスニング体験を損なう歪みや色付けを排除することに注力している。

最大の特徴は、アクセル氏が独自に開発したフロントサイド・サウンドフィールド・モジュレーション(FSFM)を搭載していること。

従来のヘッドフォン設計では、「耳が音を自然に整える作用を迂回し、音が直接外耳道へと放射される」という。その結果、現実の鼓膜では起こり得ない周波数のディップやピークが生じ、それがしばしば、「ディテールの豊かさと誤解されがち」だとする。

コンサートや会話の場、自宅でステレオスピーカーシステムを聴く際、音を正面から来る。そのため、音が横から聞こえてくると、人間は本能的に頭を向け、再び音が正面から聞こえるようにする。これは聴覚の働きに合致しており、音を正確かつ歪みなく知覚するために必要なことだという。

しかし、従来のヘッドフォンでは、振動板が耳の左右から直接音を届けるように配置されている。これにより、耳のすぐ横に音場が形成される。本来、音は耳に届くまでに歪みが生じ、外耳介による“意図された音の成形”が行なわれるものだが、従来のヘッドフォンではそれが失われる。

そこで、イヤーカップごとに1つずつ、計2つの振動板が、耳の正面に来るよう、斜めに配置。こうすることで、「あたかも私たちの正面にある音源から音が発せられているかのように音波を放射する」。人間の耳は、前方からの音を最適に処理するように設計されているため、このFSFM技術を用いて聴くことで、個々の耳の形状が活用され、鼓膜に届く周波数特性が調整され、「ヘッドフォンを使用しても、可能な限り自然な音として音を感知できる」という。

ユニットが耳の正面に来るよう、斜めに配置

この技術により、「真に正確な高周波再生という理想に一歩近づく。人工的な要素を一切加えず、何も省略しない。ニュートラルで、自然で、誠実なサウンド」が得られる。「レコーディングスタジオそのものに身を置いているかのようなリスニング体験を創り出す」とのこと。

フロントサイド・サウンドフィールド・モジュレーション(FSFM)のイメージ

さらに、ハノーバー・ライプニッツ大学の通信技術研究所(IKT)と連携し、連邦経済・エネルギー省の支援を受けながら、音の入射角が耳の形状によって周波数特性にどのような影響を与えるかを研究。この研究から、新しいダンピング構造が生まれ、共振周波数は従来のダイナミック型ヘッドフォンの70Hzに対し、40Hzまで低減。力強い低音域再生を可能にした。

全周波数帯域にわたる自然な音のバランスを実現するために、すべての音響部品を慎重に選定し、微調整。耳の自然な形状とフロントサイドの振動板の相互作用により、疲れにくく、かつ非常に詳細な中高域再生を実現。低音再生は、低周波数を聞くだけでなく、心理音響効果によって物理的なインパクトを感じさせるようにしている。

振動板は40mmで、バイオセルロース製のコーンを使用。特に大きな放射面と十分な振幅を実現。「繊細な高音と力強い低音の完璧なバランスが得られる」という。

振動板周囲のバッフル部分は、構造上の理由で大きな反射面がとなり、音を歪ませるものだが、OAE2のバッフルは同等製品の約2倍の開放面積を持ち、ドイツ製精密ステンレスメッシュで覆っている。これにより、低音と高音の優れたバランスを実現している。

ハウジングには、ポリアミド製の支持構造を投入し、音響部品を固定。不要な振動を抑えている。構造は開口率60%の穿孔スチールシートで覆われ、バッフルと振動板を保護しつつ共振を防いでいる。

形状は、さまざまな頭の形に合わせて人間工学的に最適化。伸縮式スライダーは、大きな頭にも小さな頭にもフィットするよう、スムーズに調整可能。締め付け力は、圧迫感を与えずにしっかりとフィットするように調整された。

イヤーパッドは音響特性を定義したフォームに、高級ベロアを張り付けて製造。音響要素として共振を防ぎ、全体の音のバランスを改善している。また、振動板がイヤーパッド内にまで延びており、極端な前方配置を可能にしている。

ヘッドパッドは通気性のあるベロアと高品質メモリーフォームで構成。柔軟なポリマーとスチール板バネの組み合わせで、締め付け力を最適化した。ヘッドバンド内部にはダイキャスト亜鉛製スライダーが2つあり、サイズ調整が可能。ヨークと接続し、イヤーカップを保持しながらジョイントが回転可能。

ヘッドフォンの両側に、4極2.5mmソケットを備え、左か右の片出しケーブルでの接続に加え、両出しのケーブルも使用可能。なお、両出しケーブルは別売となる。

付属ケーブルは、超極細の銀メッキOFC銅線4本で構成。マイクロフォニックノイズが少なく、取り扱いやすい設計になっている。

ケーブルは2本付属し、1本は3.5mmコネクターとスクリューロック式6.35mm変換アダプター付きケーブル、もう1本はバランス接続用4.4mmケーブル。レザーキャリングケースも付属する。

インピーダンスは38Ωで、周波数特性は6Hz~46kHz。音圧レベルは100dB@1KHz/1VRMS。最大連続入力電力は、500mW(IEC 60268-7準拠)。ケーブルを含まない重量は約378g。