ビクター、バイアンプ駆動のウッドコーンコンポ
-セットで10~14万円の3機種。単品販売も
日本ビクター株式会社は、ウッドコーンを採用したコンポの新モデル3機種を9月下旬より順次発売する。スピーカーやプレーヤーの単品販売も行なわれ、様々な組み合わせが可能。iPod接続用ドックも用意している。価格はオープンプライス。店頭予想価格と発売時期は下表の通り。
発売時期 | 種類 | 型番 | 構成/説明 | 店頭予想価格 |
9月下旬 | セットモデル | EX-A150 | スピーカー 「SX-WD150」 + DVDオーディオ/ ビデオプレーヤー 「XV-A150」 + プリメインアンプ 「RX-A150」 | 14万円前後 |
スピーカー | SX-WD150 | バイアンプ接続専用 2ウェイブックシェルフ | 6万5,000円前後 | |
DVDオーディオ/ ビデオプレーヤー | XV-A150 | HDMI CEC USBメモリ再生 CD→USB録音 | 3万5,000円前後 | |
プリメインアンプ | RX-A150 | バイアンプと2ch駆動 切り換え可能 DEUS搭載デジタルアンプ K2テクノロジー FM/AMチューナ | 4万円前後 | |
iPodドック | AC-RS5 | アナログ伝送 RX-A150専用 | 1万円前後 | |
10月上旬 | セットモデル | EX-AR7 | 特別限定モデル 「EX-AR3LTD」の 一般量販店向け | 12万円前後 |
セットモデル | EX-AR5 | スピーカー 「SX-WD50」 + DVD内蔵メインユニット | 10万円前後 | |
11月上旬 | スピーカー | SX-WD50 | ネットワーク内蔵 通常アンプでドライブ可能 2ウェイブックシェルフ | 6万円前後 |
スピーカー | SX-WD30 | フルレンジコンパクト EX-AR3の単品スピーカー | 4万円前後 |
ビクターのウッドコーンスピーカーは、カバ材の丸太から切り出した厚さ約0.28mmの木製シートを、独自の成形工法技術でコーン型の振動板に成形した“ウッドコーンユニット”を使っている。
カバ材は、“響きの良さ”に繋がる、自然な減衰特性を持ち、伝搬速度と内部損失のバランスがアルミやポリプロピレン、紙パルプよりも理想に近いとされている。また、振動板上の伝搬速度が木目方向により異なるので、定在波が出にくく、共振ポイントも現れないといった利点が多い。一方で、ユニットの形に成形すると、ひび割れたり、時間が経つとそっくり返ってしまうなどの問題があった。
その問題を、スルメからヒントを得た“日本酒に浸す”工夫でクリア。日本酒の持つ保湿力を活用し、高温でプレスした際でも木材の水分が一気に蒸発してしまわず、割れない弾力性を持ったまま成形することが可能になった。また、形状を保つために木材専用の熱硬化性樹脂を使っているが、樹脂を使い過ぎるとプラスチックのような音になり、木材の良さが損なわれるため、木の音色を残す工夫が施されている。
■ EX-A150
EX-A150 |
2005年に発売されたEX-A10の後継モデルであり、A10の最大の特徴でもある、バイアンプ接続を踏襲しつつ、ユニットやエンクロージャーなどを改良している。そのためウッドコーンスピーカー「SX-WD150」はバイアンプ接続専用モデルで、ネットワークが入っていない。ドライブするためには、単体でバイアンプ駆動に対応したプリメインアンプ「RX-A150」と組み合わせるか、アッテネーターと複数台のアンプでドライブする必要がある。
●スピーカー「SX-WD150」
SX-WD150 |
ネットワーク回路を省くことで、歪を改善。立ち上がり波形も改善され、ウッドコーンの持つポテンシャルを引き出した再生が行なえるという。2cm径のツイータと11cm径ウーファを採用。ユニット自体にも改良が加えられている。
ウッドコーンはもともと、振動板の繊維方向の伝播速度が速い特徴があり、上下方向の音場の広がりが優れているのだが、横方向の広がりは繊維の向きが合わないため、伝搬速度が上がらず、不足するという難点があった。そこで、ウーファの振動板の裏にチェリー材で作った羽のような異方性振動板を装着。横方向の伝播速度を物理的に上げ、ワイドな空間表現を実現したという。
ほかにも、ウーファのセンターキャップの素材をチェリーに変え、繊維方向も上下から、左右の横に平たい形状に変更。振動板の水平方向の強度を向上させ、低域の解像度を高めた。さらに、磁気回路のボールピースにメープルの木片吸音材を上下方向に繊維がくるように配置。センターキャップを横に広くした弊害を吸収させている。
ウッドドームのツイータも改良。ボイスコイルワイヤをCCAから6NOFCに変更したほか、エッジ素材をテトロンからシルクに変更。ドーム内側には反射音を吸収するため、木片吸音材も配置している。
エンクロージャ内部にも手を加え、響きをコントロールするチェリー響棒と、竹響板を導入。階段状の竹響板は5つの竹板で構成されており、ユニット側に向かって放射状に繊維の方向が揃えられている。これにより、エンクロージャの振動を制御。スケール感のある重心の低い低音再生が可能になったという。さらに、内部の吸音材も羊毛やフェルトから、細かな木製チップを袋につめたものに変更。素材も厳選し、メープルの木片を使っている。
エンクロージャはバスレフ。定格インピーダンスはウーファ/ツイータ共に4Ω。再生周波数帯域は50Hz~50kHz。出力音圧レベルは82dB/W・m。外形寸法は163×249×273mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は4.4kg。
比較試聴の様子 |
●従来モデルの不満点を解消
「A10」付属のスピーカーと比較試聴すると、音質の向上幅は大きい。従来モデルはウッドコーンの持つトランジェントの良さや、濁りの少ないニュートラルな再生音だと感じる一方、エンクロージャの存在を意識させる“抑えられた音場”だった。また、低域の沈み込みや量感も乏しかった。
SX-WD150に切り換えると、エンクロージャが消えたような開放感のある音場が広がる。環境音のソフトでは、小鳥の声や森の木の葉がこすれる音などが、スピーカーから離れ、かなり外側に定位する。レンジも拡大しており、ピアノの左手の描写が一段深く沈み込むのが確認できた。
●デジタルアンプ「RX-A150」
下がデジタルアンプのRX-A150 |
「DEUS」は従来と比べて広帯域化を実現。「EX-A3」の50kHz(-3dB/4Ω)から、80kHz(-3dB/4Ω)となった。ほかにも、低域のループゲインを20dB改善し、中低域でのスピーカー制動力が向上。歪率の低減やS/N比の向上なども行なっている。
独自の音質改善技術「K2テクノロジー」も導入。ウッドコーンスピーカーで最大限の効果が出るよう内部パラメーターを最適化しており、圧縮オーディオファイルの失われた高域を補間しつつ再生ができる。
筐体は3点支持で、インシュレータは内部に真鍮を使ったハイブリッドタイプ。底面に9mmのMDFボードを使ったアークベースを配置し、振動の影響を低減している。
入力端子としてアナログステレオ(RCA)×2、ステレオミニ×1、光デジタル音声×2を用意。出力端子はアナログステレオ(RCA)と、サブウーファプリ、ヘッドフォン出力を各1系統備えている。FM/AMチューナも内蔵する。
外形寸法は255×289×96mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は2.8kg。
背面。下部がアンプ。上部はプレーヤーのXV-A150 | インシュレータは内部に真鍮を使ったハイブリッドタイプ。写真はカットオフモデル。背後に見えるのがアークベース |
●iPodドック「AC-RS5」
iPodドックの「AC-RS5」 |
対応iPodは第4世代以降のiPodと、mini、nano、photo、video、classic、第1&2世代のtouch。iPodの充電にも対応する。
●プレーヤー「XV-A150」
アンプ部とプレーヤー部の改善ポイント |
CDに加え、DVDオーディオとDVDビデオの再生も可能なプレーヤー。MP3やWMA、WAV、JPEG、MPEG-1/2ファイルを記録したDVDメディアなども再生できる。USB端子も用意しており、MP3やWMAファイルの再生が可能。さらに、CDからUSBへのMP3録音(128kbps固定)機能も備えている。
HDMI端子を備え、HDMI CECにも対応。接続した対応テレビの電源ON/OFFを、プレーヤーと連動させることが可能。
ドライブのトレーに、ガラス入り樹脂を使った高剛性材料を使い、裏面にはハニカム構造リブを採用。トレー上面にスエード塗装を施すなど、振動による影響を最小限に抑えたという。
消費電力は11W。HDMI出力に加え、コンポジット出力、アナログ音声(RCA)出力を各1系統、光デジタル音声出力を2系統用意する。外形寸法は255×260×96mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は2.3kg。
■ EX-AR7
2008年10月に発売された、一体型メインユニットとフルレンジスピーカーのセット「EX-AR3」。2008年秋には、そのスピーカーに、前述の異方性振動板を追加。メインユニットの天面に、振動を抑えるためのウッドトップベースを装着した特別限定モデル「EX-AR3LTD」が流通・数量限定モデルとして発売された。
EX-AR7のスピーカー。異方性振動板が表に貼られている |
前述の異方性振動板、シルクエッジ、木片吸音材、竹響板、チェリー響棒などの音質向上技術に加え、スピーカーのボイスコイルにウッドシートの削りだしを使った“ウッドボイスコイルボビン”を採用。通常は紙を使うが、その代わりに職人が技と時間をかけて削る、80μm±10μm厚という、向こう側が透けてみえるほど薄いウッドシートを使用しており、「音の伝送ロスを抑え、解像度を飛躍的に高めた」とする。フルレンジユニットの口径は9mm。スピーカーの外形寸法は120×264×161mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は2kg。
EX-AR7 | 非常に薄いウッドシートをボイスコイルボビンにしている | 右がウッドボイスコイルボビン |
背面 |
メインユニットのドライブはDVDオーディオ、DVDビデオ、音楽CDなどで、MP3/WMA/WAV、JPEG、MPEG-1/2などを保存したDVD-R/RWの再生にも対応する。USB端子も備え、MP3/WMA/WAVの再生ができるほか、CDから128kbps固定でMP3録音もできる。
K2技術を採用しているほか、FM/AMチューナも内蔵。入力はアナログステレオ音声(RCA)×2、光デジタル×1。出力はD2×1、コンポジット×1、S映像×1、アナログ音声(RCA)×2、光デジタル音声×1、サブウーファプリ×1、ヘッドフォン×1。スピーカーターミナルは金メッキ仕上げ。
メインユニットの外形寸法は246×283×114mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は4.4kg。消費電力は45W。
■ EX-AR5
2ウェイのウッドコーンスピーカー「SX-WD50」と、DVDオーディオ、ビデオ再生対応メインユニットをセットにしたモデル。スピーカーは単品販売もされ、前述の「SX-WD150」とは異なり、ネットワークを内蔵。通常のアンプでドライブできる。ユニットサイズはウーファが11cm径、ツイータが2cm径で「SX-WD150」と同じだが、エンクロージャが若干小さくなっている。
ネットワークを搭載した影響を抑えるため、回路を改善。ウーファをフルレンジとして使い、そこにツイータを加えるような帯域分割を行ない、ピークを聴き取りにくい帯域へと追いやる手法を採用している。周波数帯域は55Hz~50kHzで、クロスオーバー周波数は11kHz。異方性振動板やシルクエッジ、ユニット内部の木片吸音材など、高音質化技術はSX-WD150と同様のものを取り入れている。インピーダンスは4Ω。再生外形寸法は149×249×262mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は4.1kg。
メインユニットの仕様は、EX-AR7の仕様とほぼ同じだが、天面のウッドトップベースは備えていない。しかし、天板を固定するワッシャを、全て銅製のワッシャに変更するなど、音質改善は行なわれている。外形寸法は246×283×104mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は3.8kg。消費電力は45W。
EX-AR5 | 背面 | 単品発売もされるスピーカー「SX-WD50」 |
■ SX-WD30
SX-WD30 |
2008年10月に発売された「EX-AR3」のスピーカーを単品発売するもの。
9cm径のフルレンジで、天然無垢チェリー材のキャビネットを採用。竹響板やメイプルの木片吸音材などの音質改善技術が投入されている。
バスレフ型で、定格インピーダンスは4Ω。再生周波数帯域は55Hz~20kHz。外形寸法は120×267×161mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は2kg。
■ 試聴会も実施
新製品の発売に先立ち、9月18日と19日の2日間、丸の内ショールーム「ケンウッド スクエア・丸の内」にて、特別試聴会も実施される。入場無料だが、電話での予約制となり、各日店員は30名。
(2009年 9月 9日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]