Androidでの地デジ視聴/DLNAなど最新組込み技術が展示
-「Embedded Technology 2009」。超解像の新技術も
国内外の半導体メーカーやソフトウェアベンダーなどが、最新の組込み技術を用いた製品やソリューションを紹介する「Embedded Technology 2009/組込み総合技術展」が11月18日~20日にパシフィコ横浜で開催された。
超解像など機器の高機能化を実現する技術展示や、Androidを採用することでコストを抑えた機器開発やプラットフォームの共通化を目指す展示のほか、リモコンなど家電機器の操作性を改善するための技術提案なども行なわれていた。
■ 超解像などの高画質化技術
超解像LSI「μPD9281GC」の評価ボード |
NECエレクトロニクスのブースでは、18日に発表した1枚超解像システムLSI「μPD9281GC」を使った高画質化デモを実施。LSIの主な機能は既報の通りで、従来品からの改善点として、液晶パネルで採用されているLVDSインターフェイスを搭載したことや、超解像処理の前にモスキートノイズの除去を行なえることなどが特徴となっている。
また、画素ごとに超解像処理の変化量を算出し、それに応じて処理量を非線形特性に変換して調整できるシュート抑制機能も装備。全体の輪郭を一律でシャープにするのではなく、映像のフォーカス位置などが自然になるように仕上げられる。4カ所までの矩形領域指定機能も備え、前述のノイズ除去やシュート抑制といった機能のON/OFFをエリアごとに指定できるという。
超解像のデモ。青線より上が処理前、下が処理後 | 青枠で囲まれた部分のみ超解像処理している | 処理するエリアは4カ所まで指定可能 |
日立アドバンストデジタルのブースでは、カメラレンズの収差特性に着目した画質復元技術を紹介。レンズの球面収差によるボケを復元し、元の風景の品質に近づけるとしている。プロジェクタやデジカメ、監視カメラ、プリンタといった製品への利用を想定する。
日立アドバンストデジタルの画像復元技術 | 左が復元前、右が復元後 | 日立のハイビジョンカメラプラットフォームをベースとした、高画質カメラの開発サービスも展開。BD/HDD/SDカードなどメディアに応じたドライバ開発などを行なう |
テクノマセマティカルは、独自アルゴリズム「DMNA」を用いた超解像技術をデモ。外部メモリ無しで、最大1,280×1,024ドットまでアップスケーリングし、高精細化できるとしている。画質の調整は無/弱/中/強の4種類から選べる。
テクノマセマティカルの超解像デモ | DMNAを用いた独自のビデオコーデック「DMNA V2」も紹介。MPEG-4 AVC/H.264に比べ高い圧縮率と、画質劣化の少なさをアピールしており、動画配信やセキュリティなどの分野に利用できるという |
■ Androidでの地デジ視聴やDLNA再生など
Android関連では、携帯端末以外に、STBなど据置き機器のプラットフォームとしての開発を行なう動きも活発化。テレビなど家電機器のソフトが高機能化/複雑化していることに伴い、低コストでも開発可能とするためにAndroidを用いた共通プラットフォームの開発も進められている。会場では、地デジ視聴に対応するSTBや、DLNA対応プレーヤーなどが提案されていた。
Androidをベースとした組込みシステム開発などを行なう企業で組織されるOpen Embedded Software Foundation(OESF)のブースでは、地デジ対応STBを実現するための共通プラットフォームを規定するワーキンググループの活動を紹介。システムソフトウェアのベンダーがOESFの仕様に準拠したSTBを構成するモジュールを開発し、提供できるようにするためのインターフェイスを規定し、STB製作に必要なソフトをライセンス可能にするという。
OESFブースでの、地デジ対応STBのデモ | OESF仕様に準拠したアプリケーションソフトのためのプラットフォームの規定を図る |
KDDI研究所による、Andoroid搭載STB試作機 |
同ブースにSTBの試作機を出展していたKDDI研究所は、Androidで携帯電話とSTBを連携させることを提案している。映像やWeb閲覧、アプリの利用などを1台のSTBで実現し、HD映像の再生にも対応。Transfer Jetで携帯電話とのデータ転送をワイヤレスで行なうなど様々な試みがなされている。STBの製品化時期は未定だが、携帯電話とSTBで共通のアプリを利用するための互換性テストなど、製品化に向けた検証を進めるとしている。
動画配信サービスの利用イメージ | テレビと携帯電話で同じアプリが動作 | Transfer Jetを使ったデータ転送も想定する |
富士通ソフトウェアテクノロジーズの、Androidによる地デジ視聴デモ |
富士通ソフトウェアテクノロジーズは、車載機器など小さな画面で地デジを視聴するネットワーク接続型のデバイスを展示。カーナビ向けLSIと、携帯機器向けフルセグ/ワンセグ受信モジュールを組み合わせて、Androidのアプリケーションで視聴するデモを行なっていた。小型機器向けに、フルセグ映像を縦横各半分の解像度にダウンスケーリングする処理をハードウェアで行ない、CPU負荷を軽減。アンテナ入力を2基設け、ダイバーシティ受信にも対応するほか、受信感度に応じてワンセグとの自動切換えも可能。テレビ以外にフォトビューワやWebブラウザの機能も備えている。
また、同社ブースではDLNA対応プレーヤーの試作機も展示。汎用の組込みソフト「Inspirium HomeNetworkライブラリ for AV」を搭載したDMP機器で、LAN HDD(DMS)に保存された動画/静止画/音楽を、別の部屋にある機器で再生するといった利用をイメージしている。
左のボードに車載向けLSIを、右のボードに地デジ受信モジュールを搭載している | DLNA対応プレーヤー試作機で、右のサーバーにある動画を再生。キッチンなど他の部屋での視聴を想定 |
■ 家電の操作性向上に向けた取り組み
日立ソフトのDLNA技術展示 |
日立ソフトは、DLNA対応テレビを利用して、YouTubeやニコニコ動画などパソコン向け配信動画を専用ブラウザ無しで視聴するというデモを実施していた。これは、OSGi(Open Service Gateway initiative)のフレームワーク上で稼動するサービスアプリケーションで、動画サイトのデータを、テレビやメディアプレーヤーなどで視聴できる形式に変換して再生。
GUI上では、家庭内のサーバーにある動画と同様の操作で再生が行なえ、配信サービスによって専用ブラウザを立ち上げる必要が無いことが特徴。「最近再生した動画」や「評価の高い動画」など、各配信サービスのメニューも同様にGUI上に表示可能としている。
配信サービスの動画が、あたかもLAN内にあるサーバーのように表示され、その中にある動画が再生できる | 「次世代メディア認識ソリューション」として、Rovi(旧Macrovision)のLASSOを紹介。CDのメタデータ以外にBlu-rayやDVDにも対応しており、視聴しているBDビデオに関連する作品をレコメンドするといった機能をプレーヤーに実装可能としている |
ユビキタスは、無線LANモジュールと小型液晶に同社ソフトを組み合わせたシンプルな構成で実現する、単機能で低コストな無線LANデバイスを提案。使用例として、サーバーにある音楽をワイヤレスで受信できるスピーカーや、小型のTwitterビューワ、宅内のモニタリングを行なうための小型カメラなどを展示していた。
無線LANで、サーバー内の音楽を再生できるワイヤレススピーカーのデモ。右は無線LANモジュール部 | 同じく小型無線LAN機器のデモ。左はカメラ、右はTwitterビューワ |
同社ブースの目玉となる展示は、AndroidやLinuxを1秒で起動できる「QuickBoot」。ハイバーネーション方式に比べ大幅な短縮が注目されている。レコーダやテレビなどへの採用も想定しており、例えば起動時にレコーダの録画予約など特定のメニュー画面を最初に表示することも可能だという。
「QuickBoot」のデモ。左のハイバネーション方式との圧倒的な速度の違いをアピールした | 同社のデータ通信プロトコル「DataStream」によるデータ共有のデモでは、複数の機器で管理している楽曲にシームレスなアクセスができるという実演も。DJプレーヤーに接続したUSBメモリの楽曲を、LAN接続した別のプレーヤーからも再生した |
NECエレクトロニクスブースでの、振動力発電を使った「電池レスリモコン」のデモ。試作機はやや厚みがあるほか、ボタンを強めに押し込む、または2回続けて押すなど少々コツが必要だったが、実現が期待される技術として、多くの来場者が注目していた。今後はボタン配置など改良を進めるという |
(2009年 11月 20日)
[AV Watch編集部 中林暁]