3月最終週に薄型テレビが前年比3.5倍の売れ行き

エコポイントの駆け込み需要で、大画面の構成比高まる


ビックカメラのテレビ販売コーナーの様子('09年10月撮影)

価格やポイント還元率などは撮影時点のものであり、これらの価格およびポイント還元率、在庫の有無を保証するものではありません。

 政府の家電エコポイント制度が4月1日から改訂されたが、新たなエコポイント制度の施行を前にした3月最終週には、薄型テレビなどのエコポイント対象製品に駆け込み需要が集中した。

 4月からのエコポイント制度では、2010年3月31日までの制度では対象となっていた製品が対象外となるなどの変更がある。結果として、対象機種数が減少することになり、幅広い選択肢から選べる3月31日までに購入しようと、量販店店頭では駆け込み購入が相次いだ。

 3月27、28日の週末は、都内の量販店では購入手続きまでに2時間待ちといった状況になる店舗があったほか、最終日となる3月31日も、平日であるにも関わらず午後から多くの来店客が訪れ、購入手続きに追われる店員が、売り場の接客エリアよりも、事務処理エリアに集中するといった異例の様子が見られていた。

 また、31日午後には32インチ以下の製品を中心に、展示品のあちこちに「売り切れ」の札が張られる状況になっており、量販店の予想を上回る需要があったことを裏付けた。

 GfKジャパンの調べによると、最終週となった3月22日~28日の薄型テレビ全体の販売台数は、前年同週比259.0%と、実に3.5倍の販売台数になった。販売金額ベースでも193.8%増とやはり約3倍に伸びている。薄型テレビは、3月に入ってから駆け込み需要の様相が激しくなり、3月1~7日では販売台数で前年同週比2倍、3月15~21日では前年同週比2.5倍となっており、月末が近づくにつれて、販売台数が急激に増加していった。



■ エコポイント開始で40型以上の割合が上昇

 薄型テレビの販売動向を、液晶テレビとプラズマテレビに分けて見てみよう。

 薄型テレビの主力となる液晶テレビは、最終週となる3月22日~28日には、前年同週比273.5%増という大幅な伸びを記録した。

 エコポイント制度が開始されてから、高い成長率を維持し続けてきた液晶テレビは、今年1月以降、前年同週比60~70%増といった水準で推移。さらに、3月に入ってからは、制度変更前の駆け込み需要が増加したことで、前年同期比2倍以上の伸び率となり、最終週には実に約3.7倍の実績となったのだ。

 プラズマテレビも同様に駆け込み需要が見られている。2月には一時的に前年割れとなった時期もあったが、3月に入ってからは2桁の成長率を維持。3月22~28日の集計では、前年同週比98.4%増と約2倍の販売数量となっている。

 インチ別の需要動向をみると、2009年5月のエコポンイト制度開始以来、40型以上の構成比が上昇しているのがわかる。

 2009年4月まではほぼ20%前後の構成比で推移していた40型以上の薄型テレビの販売台数は、制度が認知された6月には24.8%と4台に1台の構成比まで上昇。2010年1月の集計では28.2%に、2月の集計でも27.9%となり、3月も24.6%と、大画面モデルの構成比が高まった。

 実際、3月22~28日の集計では、「40型以上46型未満」は、対前年成長率は399.2%増となり、前年同週比5倍。サイズ別の集計では最も伸び率が高くなっている。また、「46型以上」も、26型以上33型未満の298.8%増には及ばないものの、224.1%増と高い成長率を記録している。

 2月の集計では、「40型以上46型未満」の構成比は20.7%、「46型以上」の構成比は7.2%、3月の集計では、「40型以上46型未満」の構成比は19.6%、「46型以上」の構成比は5.0%となっている。

 エコポイント制度では、46型以上では3万6000ポイントが付与、40型~42型も2万3000ポイントが付与されることから、それ以下のサイズに比べて、付与ポイントが大きい。ポイントの大きさが大画面化を促進したといえよう。

【液晶/プラズマテレビの前年比推移】(単位:%)
数量前年比2010/1/42010/1/112010/1/182010/1/252010/2/12010/2/82010/2/152010/2/222010/3/12010/3/82010/3/152010/3/22
液晶197.73160.15166.31167.48173.57166.75155.56167.24208.26226.28259.25373.46
プラズマ173.86157.43142.21132.8125.81112.1195.4595.8121.99133.1148.74198.43

 

金額前年比2010/1/42010/1/112010/1/182010/1/252010/2/12010/2/82010/2/152010/2/222010/3/12010/3/82010/3/152010/3/22
液晶168.87140.14143.08141.66148.2139.85127.88135.37171.48184.71210.37315.04
プラズマ145.06126.99112.19106.13106.8293.3377.5478.24100.27109.76120.43169.28

 

【薄型テレビのサイズ別前年比推移】(単位:%)

数量前年比2010/1/42010/1/112010/1/182010/1/252010/2/12010/2/82010/2/152010/2/222010/3/12010/3/82010/3/152010/3/22
合計195.47159.88163.98163.75168.66160.96149.44160.68200.15218.04250.15359.03
1型以上、26型未満195.21147.91151.89159.46153.63145.47137.88154.54172.94185.63213.66310.88
26型以上、33型未満195.43157.3169.69165.25172.54171.32162.03166.53215.71236.17279.95398.82
33型以上、40型未満119.0995.1199.65102.13102.7794.9888.5298.78128.82149.14168.67220.85
40型以上、46型未満265.8229.1209.31210.9222.98208.23189.57214.73270.52301.64341.25499.22
46型以上213.33212.59220.2201.64216.69188.71151.67149.11203.18192.64197.6324.13

金額前年比2010/1/42010/1/112010/1/182010/1/252010/2/12010/2/82010/2/152010/2/222010/3/12010/3/82010/3/152010/3/22
合計165.44138.2138.42135.85141.61132.18119.81126.72160.17173.37197.36293.76
1型以上、26型未満155.89119.95123.71127.43124.99118.49111.45124.23140.58150.85173.88259.75
26型以上、33型未満167.31134.86141.19136.93141.18137.97130.02132.55168.89185.65221.59319.85
33型以上、40型未満102.6281.3983.1784.6386.0277.8473.0679.93104.12119.03131.72180.87
40型以上、46型未満210.84176.77164.28164.37172.31160.25142.93158.69199.36218.18250.99383.82
46型以上177.19171.75174.79158.67170.82149.41121.2119.11158.5155.45157.26254.98

【薄型テレビサイズ別構成比】(単位:%)

数量構成比Sep-08Oct-08Nov-08Dec-08Jan-09Feb-09Mar-09Apr-09May-09Jun-09Jul-09Aug-09Sep-09Oct-09Nov-09Dec-09Jan-10Feb-10Mar-10
1型以上、26型未満24.0324.6322.820.4822.1825.1230.1728.0822.9421.6719.6220.1722.0322.9421.1618.5420.8823.527.22
26型以上、33型未満39.0438.8638.6540.7340.438.2637.1337.6340.4241.9842.894340.9240.639.9441.7741.4140.2240.39
33型以上、40型未満14.914.9315.6815.8416.5614.112.2612.0812.1511.5112.0711.4210.2210.1310.210.469.548.387.84
40型以上、46型未満15.9615.515.7416.4715.0915.9514.6515.8716.9417.0917.8818.6519.4218.8820.0821.6120.9220.7119.58
46型以上6.066.087.136.485.776.575.86.347.557.757.546.767.417.448.627.617.257.194.97

金額構成比Sep-08Oct-08Nov-08Dec-08Jan-09Feb-09Mar-09Apr-09May-09Jun-09Jul-09Aug-09Sep-09Oct-09Nov-09Dec-09Jan-10Feb-10
1型以上、26型未満11.0111.2710.299.3510.5611.614.3713.0810.19.438.589.069.7110.439.318.179.4310.81
26型以上、33型未満31.5631.6330.6231.8532.1530.9431.7132.3632.5732.9232.733.0431.9532.5831.1231.9932.7432.28
33型以上、40型未満18.8118.6519.0419.2720.2517.4716.0815.4515.4914.9515.4614.6712.6812.2812.3312.7711.7810.56
40型以上、46型未満24.3523.723.5924.523.3424.1823.1623.5824.9825.726.5627.7928.8627.7928.3830.2429.7429.36
46型以上14.2714.7516.4515.0313.715.8214.6815.5316.871716.715.4316.7916.9118.8616.8216.316.98

 一方で、エコポイント制度の効果が限定的とされていたエアコンや冷蔵庫も駆け込み需要が見られている。

 GfKジャパンによると、セパレート型エアコンでは、3月22~28日の販売台数実績が前年同週比52.3%増。販売金額ベースでも50.6%増。冷蔵庫では販売台数が28.2%増、販売金額では40.1%増という高い伸びが見られている。いずれも、やはり3月に入ってからの伸び率が高くなっており、こちらも駆け込み需要が見られている。

 政府では、4月1日以降、家電エコポイント制度を一部改訂するとともに、2010年12月末まで期間を延長し、制度を実施する。ただ、これまでの制度に比べて、対象機種数が減少しており、選択の幅が狭まったのは確か。これが、継続的な需要にどう結びつくかが注目される。

 GfKジャパンでは、「3月におけるエコポイント対象製品の販売台数構成比は85%となっており、これが4月には90%以上に上昇している」として、4月に入ってからもエコポイントが需要の牽引役を果たしていることを示しながら、「3月末の駆け込み需要ほどの伸びは見られないものの、エコポイント制度により、引き続き高い成長率を維持することが想定される」とする。

 「5月以降は、成長率という点で比べると、4月以前と比べて大きく下がることが予想される」(GfKジャパン)と見られるものの、業界筋では、今年春から夏にかけてのワールドカップ需要や、3Dテレビの発売といった追い風が期待されている。さらに、12月末のエコポイント制度終了の駆け込み需要が再度見込まれており、薄型テレビの年間販売台数は過去最高に達するとの見方が支配的だ。

 いずれにしろ、引き続き、エコポイント制度がテレビ需要に追い風となるのは間違いない。



(2010年 4月 6日)

[Reported by 大河原克行]