ソニー、2010年度第1四半期決算は大幅増益に

-営業利益670億円。テレビ黒字化。PS3は240万台


加藤優CFO

7月29日発表


 ソニーは29日、2010年度第1四半期決算を発表した。売上高は、前年比3.8%増の1兆6,610億円。営業利益は670億円、税引前利益は789億円、純利益は257億円。前年同期の営業損失257億円から大幅に損益改善した。

 液晶テレビを含むコンスーマー・プロフェッショナル&デバイス(CPD)分野と、ゲームを含むネットワークプロダクツ&サービス分野(NPS)が営業損益改善に大きく寄与した。同社執行役 EVPの加藤優CFOは、「主力のエレクトロニクスが、業績改善の牽引役になり始めたことを示すことができた」と語り、販売好調なデジタルカメラ「NEX」や3Dの導入事例などをアピールした。

 なお、4月1日の事業再編により、旧B2B&ディスク製造事業のプロフェッショナルソリューション事業をCPDに統合。さらに、Samsungとの液晶合弁会社S-LCDの投資損益もCPD分野に含まれるようになった。ディスク製造分野はその他分野に統合した。

 好調な第1四半期決算を受け、5月に発表していた2010年通期業績予想も上方修正。売上高は変わらず7兆6,000億円だが、営業利益は13%増の1,800億円、純利益は20%増の600億円を見込む。想定為替レートについては、ドルは90円前後で変更無いが、ユーロは110円前後と、5月予想より15円円高方向に修正した。

2010年度第1四半期業績セグメント変更について各セグメントの売上高・営業利益

 


■ テレビは販売台数60%アップで黒字化

CPDの営業利益増減要因

 CPD分野の売上高は7%増加の8,895億円。営業利益は501億円で、89億円の損失を記録した昨年同期から大幅に改善。売上高の増加は、主に液晶テレビの販売増によるもの。利益増については、売上原価率の改善や増収による売上総利益の増加などが貢献したとする。

 第1四半期の液晶テレビ売上台数は510万台で、ビデオカメラは140万台、デジタルカメラは600万台。年間販売目標は液晶テレビが2,500万台、ビデオカメラが530万台、コンパクトデジタルカメラが2,300万台、ブルーレイレコーダが90万台、ブルーレイプレーヤーが550万台、DVDプレーヤーが1,100万台、デジタルミュージックプレーヤーが730万台。

 テレビの売上台数510万台は、前年同期比で60%の大幅な伸びで、売上高も前年比20%増の2,920億円となった。営業損益についても、販売増と共にコスト削減や事業構造改革の成果により、前年同期の80億円の赤字から110億円改善し、30億円の黒字になった。「為替の注意は必要だが、商品力も強化され、地域特性に合わせたモデルで2,500万台を達成。通期での黒字化を目指す(業務執行役員 SVP 神戸司郎 広報センター長)」とした。

 テレビ事業の回復について、加藤CFOは、「商品力そのものが上がったことが大きい。モノリシックデザインやLEDなどの製品が揃い3Dも導入した。地域別では日本の売上は想定を上回り、北米は少し下回った。その他地域はほぼ想定通り」と説明した。ただし、「第一四半期は需要が旺盛で、供給が少し逼迫した部分もあった」という。

 今後の上方修正の可能性については、「この勢いで第2、3四半期もいきたいが、まず、2,500万台を達成し、シェアをきっちり戻す。そのためにデザイン、LED、3Dのラインナップを揃え、秋以降は“インターネットテレビ”も用意する。ただ、第3四半期の最大の商戦期を越えないと修正の判断はできない」とした。

 コンパクトデジタルカメラは前年同期比横ばい。為替と価格下落の影響、広告費の増加などで売上は大きく変化していないが、材料費削減などの費用改善で、若干の増益となっている。ビデオカメラは為替と、価格下落で減収となっている。

 デジタルカメラのヒット商品は、ミラーレスデジタル一眼カメラの「NEX」。日本では6月に導入したところ、「一時的にだがシェアは30%程度まで上がった。通常10%程度だが、3倍程度にまで伸びている。初速ということもあり、全体感はもう少したってから報告したい」とした。

 


■ PS3などゲーム事業も損益改善

NPSの営業利益増減要因

 NPSは、売上高が前年比32.4%増の3,259億円、営業損失は38億円の赤字となった。売上台数が伸張したPCの増収と、PlayStation 3のハード/ソフトウェア売上増によるゲーム事業の増収により、売上高は大幅増となった。

 営業損益では38億円の損失となっているものの、前年同期に比べて329億円改善。PS3のハードウェアコスト改善や、PCの売上増が主な要因としている。

 ゲーム機の第1四半期売上台数はPS3が240万台、PSPが120万台、PS2が160万台。2010年度通期の見通しはPS3が1,500万台、PSPが800万台、PS2が600万台。PCは、第1四半期売上台数が190万台で、年間の見通しは880万台。

 なお、ネットワークサービスの現状については、「売上は2009年で400億円、今年は800億円程度を目指している。収益貢献はまだだが、来年あたりにブレイクイーブン以上の成果が出ると考えている。今は、インストールベースを増やして、コンテンツの数を増やす段階。まだやることはたくさんある(加藤CFO)」とした。

 映画分野の売上高は、前年同期比22.3%減の1,321億円。営業利益は58.2%増の29億円。「ベスト・キッド」の米国劇場収入が好調だったが、昨年の「ターミネーター4」や、「天使と悪魔」に比べると小粒で大幅減収となった。ただし、米国外のテレビネットワークにおける広告収入や視聴料収入の増加により、増益になっている。

 音楽は、売上高が前年同期比1.3%増の1,103億円。AC/DCの「アイアンマン2」(サウンドトラック)、米国のテレビ番組「Glee」の楽曲集などがヒットした。営業利益は前年同期比39.4%増の75億円。

 金融分野は、売上高が前年同期比25.7%減の1,690億円、営業利益が37.8%減の300億円。持分法適用会社のソニー・エリクソンは売上高が前年比4.4%増の17億5,700万ユーロ、純利益は700万ユーロと黒字転換している。

 なお、リチウムイオン電池の自動車向け市場の参入については「検討中だが、5~10年ぐらいの時間軸で事業化を鋭意検討しているという段階。新しい産業領域に入るときには、特徴ある商品をそろえてやっていく。設備投資型の大きな資金/設備をつぎ込んで参入するのでなく、デバイスを磨き上げて入っていくという考え。その考えの下、どういう風に展開できるか検討している」とした。


(2010年 7月 29日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]