【IFA 2010】東芝、「CEVOエンジン」でテレビ多様化へ

-東芝VP社 大角社長「裸眼3Dテレビは10月国内で発表」


 9月3日~8日(現地時間)に行なわれたIFA 2010においてCELL REGZAのエンジンを進化させた「CEVO(シーヴォ) ENGINE」を発表した東芝。2日に行なわれたプレスカンファレンス後に、日本のメディアに向けて欧州テレビ事業の強化などの戦略説明会が行なわれた。



■ 地域戦略で欧州シェア10%へ

 東芝は欧州のテレビ市場規模について「成長率こそ緩やかなものの、グローバル需要の1/4を占める大規模で安定的な市場」と位置付けており、'09年はグローバルで1億4,200万台、'10年は1億7,000万台、'11年は1億8,500万台の伸びを見ているなか、欧州は'09年が4,700万台、'10年予測は5,200万台、'11年予測は5,400万台としている。

東芝ビジュアルプロダクツ社長の大角正明氏

 一方、カテゴリ別で見ると、2012年度にLEDテレビの普及が85%と予測するなど、低消費電力モデルへの需要を重視している。また、欧州向けに動画/音楽/アプリ配信プラットフォーム「Toshiba Market Place」を2日に発表したが、テレビについても'12年には約半分がネット対応になると予測。そして、3D対応については40型以上で'10年が9%(液晶テレビ全体では1~2%)、'11年が35%、'12年が50%と見込んでいる。

 東芝の執行役上席常務であり、ビジュアルプロダクツ社の大角正明社長は欧州市場の特徴として「日本と同レベルでエコへの関心が高い市場」とし、LEDバックライト搭載などの低消費電力モデルの重要性を強調。「LEDは当然として、ネット対応、3Dといった高付加価値ゾーンを強化していこうというのが我々の考え」とした。

 欧州の中でも国によって液晶テレビの普及率は異なり、英国やフランスに比べ、ドイツ、ロシア(同社は欧州市場に含めている)は今後も成長が期待できるという。このため、同社は地域に適した差異のある製品の積極的な投入や、販売に関する地域別施策を強化する方針。

 具体的には、英国やフランスに比べ、(大手量販店ではない)独立系の販売店が力を持つドイツにおいては、量販店だけでなく、独立系や、(小売業者らが共同で購入する)バイイング・グループなどとの連携を強化。また、ロシアでは、パートナーとの協業で2011年春~夏にロシア国内でのテレビ生産を開始することを検討。競争力強化を図るという。

 さらに、“Japan Quality”をキーワードに高付加価値モデルを訴求するプロジェクト「mottoii」(もっといい)をドイツで展開しており、これを欧州全体へ拡大することを検討している。このプロジェクトには、バイインググループや専門店との信頼関係を向上することや、新規顧客の獲得、エントリーモデルだけでなく高付加価値製品までラインナップ拡大といった意味が込められており、プロジェクト名はドイツ人が考えたものだという。

 欧州における現在のシェア(GfK調査)は、英国が8.5%、ドイツ10%、フランス5%、ロシア8%だが、こういった取り組みで、2011年度に欧州市場全体を押し上げ、トータルで10%のシェア獲得を狙う。

テレビの欧州マーケット規模国別のテレビ普及率ドイツから展開を開始するmottoii戦略


■ 欧州に最適化させた「CEVOエンジン」

欧州向けに開発されたCEVOエンジン

 前述のような多様性のある欧州では、地域のニーズに合った技術を用いた「戦略的商品」が重要だと大角氏は語る。こういった背景もあり、今回のIFAで発表されたのが、日本や米国における「CELL REGZA」のエンジンの進化形である欧州向けの「CEVO ENGINE」だ。製品の形では「ZL1シリーズ」として来年早々に欧州で発売するとしている。なお、現在は日本など他の地域で展開する予定は無い。

 同社は「テレビにおけるエンジンは人間でいう頭脳、PCではCPUなどが搭載されたマザーボード。半導体&ソフトウェアを組み合わせた高性能エンジンが、地域最適化仕様と、差異化商品を生み出す。テレビにおけるエンジンは、高画質/高機能を具現化するためのもっとも重要なデバイス」と説明する。

 CEVOエンジンについては「基本的なこだわりはCELL REGZAと変わらない」とするが、大きな違いは、チップとしてのCELLを載せず、CELL REGZAで培ったソフトウェアの部分を使った新エンジンであること。高画質や2D-3D変換技術、ネットワーク機能など日本で培った技術に加え、新たに高集積化によるエンジンのコンパクト化と低消費電力化を実現。特にデザインや環境に対する意識の高い欧州にマッチした製品が投入可能だとしており、同社テレビのプレゼンス向上を図る。

 また、デザイン面でもデンマークのJacob Jensenとのコラボレーションにより、日本におけるF1シリーズと同様に、欧州でもデザイン性を高めたモデルを投入することについて大角氏は「本家である欧州で最も力を入れ、成功したい」と述べた。

 そのほか、IFAでも注目された10.1型のタブレット端末「FOLIO 100」 については、「(アプリを配信する)Toshiba Market Placeで、タブレットとテレビの連携を進めていきたい」とした。欧州ではフランスからスタートするほか、それ以外の地域では「アメリカでは開始するだろう」としたが、日本での発売については未定だという。



■ 裸眼3Dテレビは10月発表へ

裸眼3Dテレビ開発について

 日本で8月に報道された「裸眼3Dテレビ」についても言及。商品化については「小型グラスレス3Dテレビを検討中」との姿勢だが、10月に日本で何らかの発表を行なうことを明らかにした。

 視聴角度に応じて最適な映像で表示するための複数の映像を生成する「多視差映像変換技術」を用いており、「精度の高い映像変換を実現し、いち早い市場投入を目指す」という。

 画面サイズの詳細は未定だが、「近い時期に発売するのは、東芝モバイルディスプレイが開発しているパネルに限る」としており、販売は日本から始めるとしている。



(2010年 9月 9日)

[AV Watch編集部 中林暁]