第3回DEGジャパンアワードは「アバター」が獲得

-3D部門も新設。ユーザー投票は「ヱヴァ:破」


 映像コンテンツメーカーや機器メーカーが加盟するデジタル・エンターテインメント・グループ・ジャパン(DEGジャパン)は17日、画質や音質に優れたBlu-rayビデオタイトルを表彰する「第3回 DEGジャパン・アワード/ブルーレイディスク大賞」の授賞式を開催した。


アバター ブルーレイ版 エクステンデッド・エディション

 2010年1月1日~2010年12月31日の間に国内で発売・販売されたBD作品の中から、高画質や高音質、高機能などの“Blu-rayならでは”の特徴を活かした映像作品を表彰するアワード。審査員は、AV評論家や映画/ビデオソフト専門誌編集長、機器メーカー代表らで構成。AV評論家の麻倉怜士氏が審査委員長を務めている。

 第3回のグランプリに輝いたのは、20世紀フォックスの「アバター ブルーレイ版エクステンデッド・エディション」。Blu-ray 3D版の一般販売はまだ行なわれていないため、2D版の受賞だが、「映像のクオリティの高さは圧倒的で、群を抜いて優れている」と映像面で高評価を獲得。BDも「原作の素晴らしさを、余すところなくキープした」と評価された。


麻倉審査委員長

 麻倉審査委員長は「日本のDEGジャパンの賞という事もあり、できれば日本の作品にグランプリをあげたかった。なので、“アバター”には個人的にはあげたくなかった(笑)。しかし、映像のディテールが素晴らしく、2D映像でも、3D映像に感じるほどの素晴らしさ。内心で“あげたくない”と思っても、これに決まりです!!」とユーモアを交えてグランプリを発表。

 トロフィーを受け取った20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンの内藤友樹社長は「劇場ではタイタニックの記録を破り、BDのパッケージではグランプリを獲得できた非常に光栄な作品です」とコメント。


20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンの内藤友樹社長
 「キャメロン監督は“(アバターには)7歳から70歳までのファンがいて、そういう人達にBDの素晴らしさを伝える事が我々のミッションだ”と語っています。これから3Dも出てくる(一般向けBlu-ray 3D版)。そして、この映画は三部作でもあります。今回フォックスとして色々な賞を頂くことができたが、この素晴らしい資産を無駄にすることがないよう、BD普及に向けて精進していきたい」と喜びを語った。


部門受賞作品
グランプリ-アバター ブルーレイ版
エクステンデッド・エディション
ベストBlu-ray 3D賞- Disney's クリスマス・キャロル 3Dセット
ベスト高画質賞映画部門インセプション
ブルーレイ&DVDセット(3枚組)
ビデオ
(TV・ドキュメ
ンタリー・音楽)
部門
スペシャルドラマ 坂の上の雲 第1部
アニメ部門9<ナイン>
 ~9番目の奇妙な人形~
ベスト高音質賞音楽部門OZAWA 75th ANNIVERSARY BOX
映像部門ハート・ロッカー
ベスト・インタラク
ティビティ賞
-エイリアン・アンソロジー
:ブルーレイBOX
ベスト・レストア賞-サウンド・オブ・ミュージック
製作45周年記念
HDニューマスター版:
ブルーレイ&DVDセット
審査員特別賞(3作品)-ヒックとドラゴン
ブルーレイ&DVDセット
-マイケル・ジャクソン THIS IS IT
-Healing Islands OKINAWA 2
~宮古島~
ユーザー特別賞-ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
EVANGELION:2.22
YOU CAN (NOT) ADVANCE.



■受賞作品とコメント

 今年から新設された「ベストBlu-ray 3D賞」は、「Disney's クリスマス・キャロル 3Dセット」が受賞。「3Dとして大切なバランス感がとても良く、街の奥行き感や雪の立体的な浮遊感という、実に3Dとして完成度の高い洗練された絵作りが実現されている」と評価。「実写よりも、むしろ自然な3D感がある」という審査員の声もあったという。

 高画質賞の映画部門を受賞した「インセプション」は、「現代的でありながら、複雑なテクスチャーが交錯する複線的な画調が物語性を強めている。映像のキレ味がシャープ。夢の中で都市が浮かび上がるシーンや爆発シーンなど、CGの動きが細やかに綺麗に再現されている。水が吹き上がるシーンやカーチェイスシーンなど、力感のしっかりとした、しかも低ノイズでクリアな画像に仕上がっている。空想の世界であるのに、不思議なリアル感がある」と評価。

ワーナー エンターテイメント ジャパン ワーナー・ホーム・ビデオ&デジタル・ディストリビューションの福田太一ジェネラルマネージャー

 「インセプション」について、ワーナー エンターテイメント ジャパン ワーナー・ホーム・ビデオ&デジタル・ディストリビューションの福田太一ジェネラルマネージャーは、「映像にこだわる監督で、そのこだわりがBDプラットフォームを通して消費者の皆さんにも伝わったのではないかと思う」とコメント。

 なお、「インセプション」はBD+DVDのセットが2種類、DVD単品版が1種類の計3種類が発売されているが、福田氏によれば「DVD単品の売り上げが3割で、残りの7割がBDを含むパッケージという、パッケージ市場では驚くべき“DVD単品の割合の低さ”だった。BDの方がより作品が楽しめる、そんなBDの力が、世の中に伝わっているんだなという感慨を覚えた作品」と振り返った。

 高画質賞のビデオ部門では、NHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲 第1部」が受賞。30pのプログレッシブ撮影された画質が「テレビのドラマ画質の金字塔と言っても過言ではない。特にフィルム的な、コントラスト表現を追求した画調が、これまでのビデオ撮りのドラマにはなかった新境地」と高評価。「時代ならではの埃っぽい雰囲気など“リアルな明治”が非常に巧みに描かれており、衣装のぼろぼろ感、くたびれ感など、細部までのこだわりが画質で表現されている」と、細かなディテールへのこだわりも評価された。

 高音質部門では、音楽部門を「OZAWA 75th ANNIVERSARY BOX」が獲得。「大編成のオーケストラのスケール感と、繊細さを十分再現している。また、ホールの響き感も余す所無く表現されている」と評価されると共に、「わが国を代表する大指揮者のハイビジョンの集大成は、芸術的にも、クオリティ的にも非常に意義がある。特にプレミアム感のあるBOXでの発売を評価したい」と、BOXの内容そのものも支持された。


ポニーキャニオン映画部の植田龍太郎部長

 映像部門の「ハート・ロッカー」は爆弾処理をテーマとした映画だが、処理に向かう際の緊張感を高める音楽や効果音の“静と動”を使い分けた巧みな演出が審査員の心をつかんだという。ポニーキャニオン映画部の植田龍太郎部長は「ローバジェット(小規模予算)の作品だが、非常にクオリティが高く、我々もBD化の際には無音部分と爆音の差に注意して作った。インディペンデントな映画でも、技術面で評価してもらえて非常に嬉しい」と喜びを語った。

 高機能なソフトに贈られる「ベストインタラクティビティ賞」は、「エイリアン・アンソロジー:ブルーレイBOX」が獲得。本編映像に重ねるように、特典映像や情報を表示する“マザー”モードや、ユーザーが好きなシーンを登録することで、関連した特典映像を後からまとめて再生する機能、シリーズのディスクを連続して再生している際は、冒頭のワーニング表示を出さずに本編がすぐに楽しめる「ディスク・アンバウンド機能」など、ユーザーフレンドリーな機能の数々が評価された。


サウンド・オブ・ミュージック 製作45周年記念 HDニューマスター版:ブルーレイ&DVDセット
 「ベストレストア賞」は「サウンド・オブ・ミュージック 製作45周年記念 HDニューマスター版:ブルーレイ&DVDセット」が獲得。「歴史的名作をここまで歴史的なほど画質を向上させ、ホームエンターテイメントの歴史に偉大な足跡を残した。オリジナルはこれほどの情報量があったのか。完璧に修復された結果、光と影のダイナミックな抑揚感が、映像に魅力と魅惑と意義を与えている。精細感ももちろん高いが、それに加えフィルム的な柔らかさとアナログ的な美しさも素晴らしく、マスターポジを見たことがない人にも、もしかしてこんな絵だったのではないかと想像させる力がある」と絶賛され、商品としても写真集やオルゴールなどを含むコレクション性の高さが評価された。


本誌でもお馴染み、本田雅一氏

 審査員特別賞は、「ヒックとドラゴン」、「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」、「Healing Islands OKINAWA 2 ~宮古島~」が獲得。AV評論家の本田雅一氏は「ヒックとドラゴンはヌケが良く、作品も丁寧に作られており、審査で“この作品に出会えて良かった”と思わせてくれた。BDがマスターと近いクオリティになっているからこそ、審査員の心を捉えることができた。サウンドデザインも優れており、ファンタジーの世界に現実感を加えている」と評価。

 「THIS IS IT」については「リハーサルの様子を繋げたものだが、音が非常に良く、その場の雰囲気をよく作っている」と解説。「Healing Islands OKINAWA 2 ~宮古島~」については、レンズの片ボケを現場で修正しながら撮影するなど、映像にこだわるスタッフが撮影を行なっているエピソードを紹介。「音も鮮度が高く、今回の作品も表彰したい。“高画質なビデオというのはこういうものなんだ”というものを、具現化している」と絶賛した。


キングレコードの執行役員でスターチャイルドレコード本部長兼ライツ企画グループ長の森山敦氏

 ユーザーの投票によって決定する「ユーザー大賞」は、約3,200人以上からの投票の結果、アニメ「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE」が獲得。「圧倒的な票を集めた」という。キングレコードの執行役員でスターチャイルドレコード本部長兼ライツ企画グループ長の森山敦氏は「庵野秀明総監督ほかスタッフが、劇場公開から10カ月のリテイク作業を経て、新たに創りあげたBD。劇場での感動を、BDで新しく提供したことも高く評価されたのではないかと感じている」と語った。

 最後に麻倉審査委員長は、「3回目になり、作品の水準が画質、音質、インタラクティブ性のいずれの面でも上がっている。そして3Dも出てきており、クリスマスキャロルは3Dの将来性を頼もしく思わせてくれた。BOXセットとして魅力あるタイトルも増えており、(BOX全体で)世界観を表現し、それを所有する事を“人生の生きがい”と感じさせる事が、今後のパッケージメディアが大事にしなければならない事だろう」と分析。

 さらに麻倉氏は「今度はポップス系のライヴ盤にも頑張って欲しい。例えばAKBにも出てきて欲しい(笑)。そして、邦画にも頑張って欲しいと感じている。また、これまでのアワードで(名前が)出てこないメーカーからも、(クオリティの高い作品が)ぜひもっともっと出てきて欲しい」とエールを贈った。


(2011年 2月 17日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]