第4回DEGジャパンアワードはレストアの名作「山猫」に

-スター・ウォーズを押さえ獲得。高度な修復に評価


受賞した各社の代表者と、審査員らDEGメンバー

 映像コンテンツメーカーや機器メーカーが加盟するデジタル・エンターテインメント・グループ・ジャパン(DEGジャパン)は15日、画質や音質に優れたBlu-rayビデオタイトルを表彰する「第4回 DEGジャパン・アワード/ブルーレイディスク大賞」の授賞式を開催した。

 2011年1月1日~12月31日の間に国内で発売・販売されたBD作品の中から、高画質や高音質、高機能などの“Blu-rayならでは”の特徴を活かした映像作品を表彰するアワード。審査員は、AV評論家や映画/ビデオソフト専門誌編集長、機器メーカー代表らで構成。AV評論家の麻倉怜士氏が審査委員長を務めている。

 発表された賞は、「ベスト高画質賞」、「ベスト高音質賞」、「ベストインタラクティビティ賞」、「ベストレストア/名作リバイバル賞」、「ベストBlu-ray3D賞」に加え、一般投票のみで決定された「ユーザー大賞」。また、各部門の中から、画質・音質など全ての面で優れた作品1点を「グランプリ」として表彰する。

 第3回からの変更として、新たに高画質賞の映画部門は邦画と洋画に分け、計9部門となった。エントリーしたのは全67作品。一般投票による「ユーザー大賞」には過去最多の4,921人の投票があった。

 授賞式には、審査委員長の麻倉怜士氏、審査委員の藤原陽祐氏、本田雅一氏らAV評論家、雑誌編集長から各受賞会社の代表者に記念盾が授与され、受賞作品の講評などが行なわれた。

グランプリとなった「山猫」。ベスト・レストア/名作リバイバル賞も受賞した

 第4回のグランプリ作品となったのは、「ベスト・レストア/名作リバイバル賞」も受けた「山猫」。ルキーノ・ヴィスコンティ監督による1963年カンヌグランプリに輝いた作品を、オリジナルネガから8K解像度でスキャンして4Kに変換、ノイズ除去などのレストアを12,000時間かけて行なったというHDマスターを使用。修復の資金は、イタリアのブランドであるグッチと、マーティン・スコセッシ監督率いるNPO「ザ・フィルム・ファウンデーションによるもの。こうした画質へ大きなのこだわりが、受賞の大きな要因になったという。

 これまで、グランプ作品は「ダークナイト」(第1回)、「崖の上のポニョ」(第2回)、「アバター」(第3回)といずれも新作だったため、異例の受賞となった。また、「スター・ウォーズ コンプリート・サーガ」や、「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」などの作品を押さえての受賞だったため、会場からも驚きの声が上がった。

 なお、受賞作の一覧については、別記事でも紹介している。



■ 旧作が躍進。スター・ウォーズはグランプリならず

グランプリを発表した審査委員長の麻倉怜士氏

 授賞に際して、審査委員長の麻倉怜士氏がコメント。「山猫が獲った、というのは衝撃。Blu-rayは、こだわりを入れれば入れるほど、それに応えてくれるメディアだというのが本当に分かった。実は私自身は6月頃にパナソニックのDLPで観てその画質にすごく感動したのだが、その時は心臓が止まるくらいの画質だった。昔観た人がすごいな、と思えて、今観る人も、昔の作品ってすごいなと思えるだろう。(ノミネートされた)「ウエスト・サイド物語」が下馬評は高かったが、ウエスト・サイドにしろ、ベン・ハーにしろ、旧作の素晴らしい作品、まさに世界遺産が、Blu-rayでここまで盛りあがったというのが素晴らしい。今回は、オリジナルネガから8Kでスキャンしているから、ビスコンティ監督しか見ていないその時のものが観られる。そういう意味ではBlu-rayの可能性がはっきりした。(DEGの)会員外ですけども、差し上げます。これを機会に会員になっていただければ」と笑いを誘った。

 受賞した山猫の発売元であるIMAGICA TVから、伊藤明社長が登壇。「画質は素晴らしく良くて、相当頑張っていることが分かった。ただ、Blu-rayの機能を全部は活かしておらず、音についてはモノラルで、まさか大賞をいただけると思っていなかったので、感激している。ビスコンティ監督だけでなく、レストアされた、マーティン・スコセッシ監督のザ・フィルム・ファウンデーションにも感謝したい」と述べた。

 一方、グランプリ受賞を逃し、審査員特別賞となった「スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX」の発売・販売元である20世紀FOX ホーム エンターテイメント ジャパンの川合史郎氏は「何が足りなかったのだろうと思っている」と苦笑い。「去年の9月に発売して、1年間の売上がBDで一番となり、洋画部門のカタログで40%を占めるという日本のファンに支えられたいい作品。獲れなかった言い訳をどういえばいいのかと思っている。グランプリの原稿しか用意していないんだから」と笑顔の中に悔しさをにじませた。それでも「3月の16日から、エピソード1の3D公開が始まり、そのタイミングで全国でもう一度このサーガを店頭に出すと聞いているので、まだご覧になってない方は、観ていただければ。今回はありがとうございました」と述べた。


IMAGICA TVの伊藤明社長20世紀FOXの川合史郎氏FOXは昨年アバターでグランプリを獲得したが、本命とも言えるスター・ウォーズでの受賞はならなかった。写真は審査員特別賞の3作品


本田雅一氏

 審査員特別賞を発表したAV評論家の本田雅一氏は、スター・ウォーズについて「エピソード4では、ドルビーステレオを導入、6では当時のサラウンド技術への情熱を感じた。1ではデジタルシネマカメラ、そして3では最新デジタル映像が楽しめる。このようにスター・ウォーズは、映画技術の歴史を表す側面がある。コンプリートボックスという形で発売するという意義は大きい」と評価した。

 全体の評として麻倉氏は「邦画が素晴らしかった。新しく邦画部門を作った結果、邦画関係の応募も増えてよかったと思っている。また、“BDM”(浜崎あゆみの24bit/48kHz BD)という新しいメディアがついに出た。BDというペアレントメディアがあって、そこから新しいブランディングができるんじゃないかと思う。特に音声が24bit/192kHzのものがこれから出てくるといい。個人的な希望だが、懸念しているのは、DVDの時代は映画、アニメ、音楽が3:3:3で丁度良かったが、Blu-rayでこんなに音質がいいのに音楽作品がなかなかグランプリを獲れていないこと。何か一つ、音楽作品賞のような部門もあれば。ぜひ音楽をBlu-rayで取り上げていきたい。とにかく今年も大激戦だった。来年もぜひ市場を盛り上げていただきたい」と述べた。

 各賞の受賞作品は、下表の通り。

受賞作品
グランプリ山猫
ベストBlu-ray 3D賞塔の上のラプンツェル
ベスト高画質賞
(4作品)
【映画部門】(洋画)
ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1 DVD&ブルーレイ セット(3枚組)
【映画部門】(邦画)
相棒 -劇場版II- 警視庁占拠! 特命係の一番長い夜
【ビデオ(TV・ドキュメンタリー・音楽)部門】
Healing Islands OKINAWA3 ~沖縄本島~
【アニメ部門】
カーズ2
ベスト高音質賞
(2作品)
【音楽部門】
佐渡裕 指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 武満徹:フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
【映像部門】
バーレスク
ベスト・レストア/名作リバイバル賞山猫
ベスト・インタラクティビティ賞浜崎あゆみ/FIVE
審査員特別賞
(3作品)
ソーシャル・ネットワーク
ヴェルディ:歌劇≪椿姫≫英国ロイヤル・オペラ 2009
スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX
ユーザー大賞トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン ブルーレイ+DVDセット

ユーザー大賞を獲得した「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン ブルーレイ+DVDセット」ベストBlu-ray 3D賞「塔の上のラプンツェル」ベスト高画質賞の洋画部門「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1」


(2012年 2月 15日)

[AV Watch編集部 中林暁]