リン、新ネットワークオーディオDSMシリーズを紹介

-HDMI/iPhone無線再生。若年層に“シンプル”訴求


5月発売の「MAJIK DSM」(旧称MAJIK DS-I)

 リンジャパンは10日、新しいネットワークオーディオ機器「DSM」シリーズの紹介イベントを開催した。

 リンでは昨年、DSMシリーズとしてネットワークプレーヤー機能とプリアンプ機能を備えた「KLIMAX DSM」(252万円)と、「AKURATE DSM」(89万2,500円)を発売。さらに既報の通り、今年の5月にエントリーモデル「MAJIK DSM」(旧称MAJIK DS-I/47万2,500円)を発売する。各モデルの詳細は、以前の記事を参照の事。




■DSMシリーズの特徴

 DSMシリーズの特徴は、従来のDSシリーズと同様に、ネットワークHDDに保存したWAV、FLAC、Apple Lossless、AAC、MP3などの音楽ファイルを再生できるネットワークオーディオプレーヤー機能を持ちつつ、iTunesやYouTubeなど、様々な音声の再生にも対応している事。

KLIMAX DSMAKURATE DSMMAJIK DSM
SONG CAST appで出力するDSMを選んでいるところ

 これは「SONG CAST app」と呼ばれるWindows 7/Mac OS X Snow Leopard以降に対応したソフトをインストールする事で実現。PCから音声の出力デバイスの1つして「SONG CAST app」が機能し、iTunesやブラウザで表示しているYouTube、DVDなど、PCから出る様々なサウンドを「SONG CAST app」が受け取り、ネットワーク上のDS/DSM機器に転送。そこから音を出しているという。出力したいDS/DSM機器が複数ある場合は、それらを選択する事も可能。

 また、PC用再生ソフトのKinskyに、iPad/iPhone用も用意。これらの端末からDS/DSM機器が操作できるほか、音楽ソースとしてiPad/iPhone内の楽曲を、無線LAN経由でDS/DSMに転送し、再生する事も可能。複数のDS/DSM機器がある場合は、選択したり、同期させて再生する事も可能。

 DSMの新機能はファームウェア「Davaar5」で実現しているもので、従来のDSシリーズも、アップデートする事で、ソフトウェア的な新機能であれば、DSMと同様の機能が利用できる。


KLIMAX DSMとテレビを組み合わせ、BDを再生するデモも行なわれた

 ハードウェア面でのDSMの特徴は、HDMI端子を備えている事。これにより、SACDやBDプレーヤーなどとも接続できるようになっており、リニアPCM信号であればDSMで処理して再生可能。HDMI出力も装備しており、映像をテレビなどに出力できる。

 なお、マルチチャンネル音声の場合は、フロントL/RをDSMが受け持ち、残りのチャンネルを他のAVアンプなどで処理してサラウンド再生するといった使い方もできるという。

 接続端子は以下の通り。


KLIMAX DSMの背面AKURATE DSMの背面MAJIK DSMの背面
KLIMAX DSMAKURATE DSMMAJIK DSM
HDMI入力×3
HDMI出力×1
バランス(XLR)入出力×1
アンバランス(RCA)出力×1
光デジタル入力×2
同軸デジタル入力×2
Ethernet×1
HDMI入力×4
HDMI出力×1
バランス(XLR)入出力×1
アンバランス(RCA)入力×3
(内1系統はPhono入力対応可
 :初期設定はMC)
アンバランス(RCA)出力×2
光デジタル入力×3
光デジタル出力1
同軸デジタル入力×3
同軸デジタル出力×1
ステレオミニ入力(フロントパネル)×1
Ethernet×1
HDMI入力×4
HDMI出力×1
アンバランス(RCA)入力×4
(内1系統は初期設定MM Phono)
アンバランス(RCA)出力×1
光デジタル入力×3
光デジタル出力1
同軸デジタル入力×3
同軸デジタル出力×1
ステレオミニ入力(フロントパネル)×1
ヘッドフォン出力×1
Ethernet×1



■モダン・オーディオファイルに向けて

Managing Directorのギラード・ティーフェンブルン氏

 イベントには、リン本社からManaging Directorのギラード・ティーフェンブルン氏、
Head of Salesのスティーヴ・クロフト氏、Technical Directorのキース・ロバートソン氏が来日。DSMシリーズの狙いを説明した。

 ギラード氏は、2007年にDSシリーズの第一弾モデル「KLIMAX DS」を投入した当時を振り返り、FLAC/WAVにしか対応していなかったサポートフォーマットを、その後拡張していった事、CDよりもハイレゾ音源のストリーミング再生の方が高音質だというメッセージを、オーディオファンに理解してもらうのが困難だったが、時間をかけて徐々に浸透してきた経緯などを説明。「2009年末には、CDプレーヤーの生産完了も表明した。これは、我々リンの人間と、ユーザー様が、“デジタルストリーミングがCDの音質を超えた”という認識に至ったからだ」だという。

 その後、2009年末に「SEKRIT DS-I」、「MAJIK DS-I」という、プレーヤー機能とプリメインアンプ機能を一体化したシステムを投入。「1BOX筐体とスピーカーで、全ての音楽が聴けるという点が良かったようで、このモデルを機に、若い人達が我々の製品を購入してくれるようになりました。そのため、従来のAKURATE DS、MAJIK DS、SNEAKY DSの売上が落ちないまま、SEKRIT DS-I/MAJIK DS-Iの売上が伸びるという現象が起こり、イベントに来てくれる若い人達も増え、リンと若者たちとの対話がスタートした」とのこと。

技術的な解説やデモを担当したTechnical Directorのキース・ロバートソン氏

 ギラード氏は、「若者層は特にシンプルなシステムで、リビングにあるゲーム機やBDプレーヤー、スマートフォン/タブレットなどの音を、シンプルに楽しみたいという欲求が強い、MODERN AUDIO PHILEだ。そして、彼らのニーズを満たすものとして我々が出した答えがDSMシリーズ。DSMの“M”は、“マルチ”という意味。全てを再生できるという意味で使っている」という。

 「シンプルなシステムをシンプルに楽しむ」という姿勢は、製品だけでなく、販売方法全体にも展開している。Head of Salesのスティーヴ・クロフト氏によれば、DSMシリーズの投入と共に、本国の公式サイトを大幅にリニューアルしたという。


Head of Salesのスティーヴ・クロフト氏

 リニューアル後のページは、製品のラインナップなどよりも、「20代の夏休みにドライブに行った時に聴いた曲」など、今までの人生で音楽を楽しんできた様々な瞬間を、写真と文字で表現し、音楽の情報を楽しみながらスクロールしていくと、ニーズにあった製品の情報が最後の方に登場するといったレイアウトになっており、「音楽をどのように楽しむか」がメインになっているという。


リニューアルされたホームページ

 さらに、オーディオショップでの見せ方も工夫。様々なスピーカーが立ち並ぶような、オーディオショップらしいレイアウトではなく、モダンで、普通に生活しているリビングを連想させるような展示を心がける事で、新たなユーザー層に訴求。こうした施策は、今後日本でも展開していきたいという。

リビングを連想させるデザインになったオーディオショップでの見せ方
フランスのショップでのビフォー(左)、アフター(右)。違いは一目瞭然だ

(2012年 5月 10日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]