“ボブ・マーリー”を冠したヘッドフォンが日本上陸

-実子のローハン氏が展開。来日インタビュー掲載


ハイエンドヘッドフォンの「TTR」を装着するローハン・マーリー氏

 “レゲエの神様”ボブ・マーリーの実子であるローハン・マーリー氏が展開するオーディオブランド「House of Marley」のヘッドフォンやイヤフォン、スピーカー計22製品を、5月22日より順次国内のApple Storeにて発売される。

 ラインナップは3シリーズで、DJなどのプロに向けた「Destiny」シリーズ、若年層を意識した「Jammin'」シリーズ、モダンなデザインなどが特徴のライフスタイルシリーズとする「Freedom」で展開する。22日より国内で発売されるモデルは、ヘッドフォン6製品、カナル型(耳栓型)イヤフォン14製品、据え置き型のiPhone/iPod/iPadスピーカーと、ポータブルのバッグ型iPhone/iPodスピーカーが各1製品。

 なお、発表された製品のうち、ヘッドフォンの「TTR」と「Stir It UP」、「Exodus」、「Positive Vibration」は8月の発売で、それ以外については5月22日より発売される。


「Positive Vibration」などのヘッドフォンのラインナップイヤフォン「Smile Jamaica」などバッグ型スピーカーの「Bag of Rhythm」

 

シリーズ名種類製品名型番マイク
リモコン
店頭予想価格
DestinyヘッドフォンTTREM-DH001-IO29,800円前後
FreedomヘッドフォンStir It UpEM-FH013-HA19,800円前後
ExodusEM-FH003-HA14,800円前後
iPhone/iPod/iPad
スピーカー
Get Up Stand UPEM-FA000-HA-34,800円前後
Jammin'ヘッドフォンPositive VibrationEM-JH010
-SU/RT
-5,980円前後
EM-JH013-RA7,980円前後
カナル型
イヤフォン
Smile
Jamaica
EM-JE000-RA/LI/CU/FI-3,480円前後
EM-JE003-RA/LI/CU/FI4,980円前後
People Get ReadyEM-JE010
-RO/RT
-4,480円前後
EM-JE013
-RO/RT
5,980円前後
Midnight RaversEM-JE020
-SU/RA
-3,980円前後
バッグ型
iPhone/iPod
スピーカー
Bag of RhythmEM-JA000-HA-34,800円前後

 このブランドは、オーディオ製品としての品質だけでなく、「エコフレンドリー」や「慈善と還元」といったコンセプトも掲げていることが特徴。素材に再生アルミニウムやオーガニックコットン、FSC(Forest Stewardship Council/森林管理協議会)に認定された木材などを使用しており、パッケージもエコ素材を使っている。さらに、毎年利益の5%を、マーリー一家が運営するNPOを通じて慈善団体などへ寄付している。

 製品は現在、米国、カナダ、イギリス、イタリア、ドイツ、アラブ首長国連邦、香港、韓国、シンガポール、フィリピン、南アフリカ、カリブ諸国で発売中。今年中に他のヨーロッパや中東全域、台湾、タイ、中国本土での発売を予定している。

 音質面のユニークな特徴として、音質テストにレゲエ・ミュージックを使用。レゲエの力強い低音を歪みなく再生できるほか、中域~高域についてもバランスの取れた再生が行なえるという。

 なお、記事の最後に、発表に際して来日したローハン・マーリー氏へ行なったインタビューを掲載する。



■ Destinyシリーズ

TTR

 「TTR」(Trenchtown Rock)は、ハイエンドのヘッドフォンで、アクティブノイズキャンセリング機能も搭載。40mm径ユニットを搭載する。ケーブルは2種類用意し、通常の4フィート(約1.2m)モデルのほか、6.5フィート(約2m)のモデルも同梱する。ケーブルの被覆は布製。

 ハウジングはアルミ製。ソフトなクッションを備えたレザー製イヤーパッドを搭載する。ヘッドバンドはステンレススチールとレザーを使用している。再生周波数帯域は12Hz~23kHz。プラグはステレオミニと標準の2種類を用意。航空機用のプラグアダプタも同梱する。


装着例ハウジングは手触りの良いレザー製ハウジングを回転させてケースに収納できる


■ Freedomシリーズ

Exodus

 オンイヤーヘッドフォン2モデルと、iPhone/iPodスピーカーを用意。

 ヘッドフォンの「Stir It Up」というモデルは、40mmのダイナミック型ユニットを搭載し、ハウジングはアルミと木材(ブナ)を使用する。イヤーパッドにはソフトなレザーを採用。ケーブルには、3つの操作ボタンとマイクを備えたコントローラ部を搭載する。再生周波数帯域は15Hz~22kHz。

 「Exodus」も40mm径ユニットを搭載。ハウジングにはアルミを使用し、木製(カバ材)のヘッドバンドを採用したデザインが特徴。再生周波数帯域は15Hz~22kHz。ケーブル部にマイク/3つの操作ボタンも搭載する。


Get Up Stand UP

 iPod/iPhone/iPadドックを備えたスピーカーの「Get Up Stand UP」は、4.5インチ径のウーファと1インチ径ツイータを各2基搭載。AUX入力を備え、iPod以外のプレーヤーも接続できる。バッフル面には木材を使用。リモコンも付属する。



■ Jammin'シリーズ

Smile Jamaica

 カナル型イヤフォンは8モデルを用意し、うち6モデルには、マイク/リモコン搭載のバージョンを用意する。

 「Smile Jamaica」は、ハウジングにブナやサペリ(アフリカ産の木材)とアルミリングを使用。ユニットは8mm径。カラーリングは「Curry」、「Rasta」、「Lily」、「Fire」の4種類。再生周波数帯域は18Hz~20kHz。

 「People Get Ready」も、木製ハウジングを用いたカナル型イヤフォン。ユニットはダイナミック型で、サイズは10mm径。機械加工のアルミ製トリムリングとリアキャップを採用する。ケーブルにはマイク付きのリモコンも備える。再生周波数帯域は15Hz~20kHz。

 「Midnight Ravers」は、ハウジングにビーチまたはサペリ材の上をアルミで覆ったデザインを採用したことが特徴。ユニットは8mm径。再生周波数帯域は17Hz~20kHz。


Smile Jamaicaの装着例パッケージ。左がSmile Jamaica、右がMidnight Ravers一番右がPeople Get Ready

 オンイヤー型のヘッドフォン「Positive Vibration」は、50mm径ユニットを搭載。カラーはSun/Roots/Rastaの3種類を用意する。Rastaのケーブルは、マイク付きリモコンを備える。ハウジングにはアルミを使用。ヘッドバンドはキャンバス地を用いている。再生周波数帯域は17Hz~20kHz。

 バッグ型スピーカー「Bag of Rhythm」は、2ウェイステレオスピーカーにショルダーベルトが付いた製品で、持ち運んでiPhone/iPodが再生可能。天面の中央にiPhone/iPodドックを備える。電源はACまたは乾電池を使用する。

 スピーカーユニットは4.5インチ径ウーファと1インチ径ツイータの同軸ユニット。エンクロージャはバスレフ型で、側面にバスレフポートを備える。

Positive VibrationBag of Rhythm天面にiPod/iPhoneドックを装備


■ ローハン氏「我々のアイデンティティ」。ジャマイカ大使も歓迎

ローハン・マーリー氏

 発表会にはローハン・マーリー氏が来日し、日本での販売に際しての想いを述べた。

 マーリー氏は「これまでもいろいろなものが“マーリーの製品”として販売されてきたが、これが正真正銘、マーリー家が直接監修した製品。これが我々ファミリーのアイデンティティだ」と説明。また、エコやオーガニックといったこのブランドの特徴については「父が言っていたように、故郷の人々が幸せでなければ、私は幸せではない」として、彼らのルーツであるジャマイカやレゲエの思想に基づき、自然に敬意を表す形で製品を作り出していくことを強調した。

 「House of Marley」のアロン・カウフマンCEOも来日。「日本でのローンチは、我々にとって大きなマイルストーンだ。House of Marleyはただのプロダクトではなく、ムーブメントであり生き方であり、ライフスタイル。ボブ・マーリーにインスパイアされた“ラブ”の形であり、一人一人の心にあるすべてのラブ。House of Marleyの製品を買うと、チャリティを通じて社会に還元できる」とした。

 ローハン氏は、オーディオ製品だけでなく、「マーリーコーヒー」というブランドで、ジャマイカや中米、エチオピアなどの高級コーヒー豆を世界に向けて販売しており、日本でも生活協同組合(COOP)を通じて購入可能。House of Marleyと同様に環境へ配慮しているほか、フェアトレードを重視し、生産者が公正な賃金を得られる価格での販売に努めているという。

 会場には、駐日ジャマイカ大使のクローディア・セシール・バーンズ氏もゲストとして登場。「今年はジャマイカが独立してから50年にあたる。ジャマイカの文化は多くの分野に優れた人々を生み出したが、その中でもよく知られるのが、キング・オブ・レゲエのボブ・マーリーことロバート・ネスタ・マーリーさん。そのご子息のローハンさんによるブランドのローンチに同席できてうれしい。レゲエ音楽と、ブルーマウンテンコーヒーは、ジャマイカを象徴するもの。今日ローンチされる製品は、みなさんの魂を満足させるでしょう」と歓迎した。

アロン・カウフマンCEO駐日ジャマイカ大使のクローディア・セシール・バーンズ氏ローハン氏はとても人懐っこく、周りを楽しませる雰囲気を持っており、来場者に気さくに話しかけていた
新製品は、ファッションショーのような形式で披露された発表会では、ローハン氏の誕生日をみんなで祝う一幕も会場でマーリー・コーヒーがふるまわれた


■ ローハン・マーリー氏へのインタビュー

――どのようなきっかけで、このブランドを立ち上げたのですか?

インタビューに応えるローハン・マーリー氏

ローハン・マーリー氏:(以下敬称略)これまで、“名前だけ”のマーリー製品は数多くありました。また、他人が製品を作って、それにマーリーの名前を付けさせてほしいという提案は数多くありましたが、ようやく、我々ファミリーの哲学でもあるサステナビリティ、エコフレンドリー、オーガニックといった考えを理解してくれるパートナーに出会えたことで、実現しました。このブランドは一つのビークル(乗り物)であって、我々のNPOであるOnelove.comへ寄付することを大きな目的としています。

――ラスタ・カラーなどの色やデザインが特徴的ですが、どのようなコンセプトでデザインを考えていますか?

ローハン:我々は素晴らしい音、質の高さ、そして、人にエネルギーを与えられる色やデザインを重視しています。見ていただけると分かるように、製品シリーズの「Jammin' 、Desitiny、Freedomといった名前はメッセージであり、人の魂に共鳴し、気持ちを高めるものです。

例えばこの3つのカラー(グリーン、イエロー、レッドを指さして)は、地球のグリーン、太陽のイエロー、血のレッドを示しています。これらはブラザーズ、シスターズである我々すべてが持っていて、無くてはならないものを具現化したものなのです。

――音質テストにレゲエ・ミュージックを使っているとのことですが、その理由はどういったところにあるのですか?

ローハン:レゲエは、低域、中域、高域に渡って“パーフェクトなバランスのミュージック”です。例えばロックには、ギターのリフなどで激しい高音を奏でる曲もありますが、私の父の音楽は、ボリュームを大きくしても、ノイジーになることはない。そういった曲をしっかり聴かせるサウンドデザインが製品に活かされています。米国でも、オーディオ専門誌でBeatsやSoul by Ludacrisなど他のヘッドフォンと比較したレビュー記事で、No.1の評価を得たこともあります。

 私のファミリーには、ミュージシャンがいますが、寝ている時間以外はほとんどスタジオにいる、というくらい音楽が生活の第一になっている一家なのです。“マーリー”の名前が付く物に関しては、サウンドや品質において妥協することはありません。

 House of Marleyは、単にヘッドフォン、オーディオ製品というのではなく、このヘッドフォンは、私の“アルバム”です。House of Marleyは、バンドのように全員が結集して、「マーリー」のフィロソフィーを具現化しています。そのリードシンガーの立場にいるのが私なのです。

――ボブ・マーリーさんの音楽は、あなたにどのような影響を与え、それがどういった形で製品に活かされていますか?

人を楽しませるエンターテイナー性と、物事に対して真摯な気持ちをあわせ持つ人柄が印象的だった

ローハン:父の音楽は、人生であり、バイブルであり、いろんなものに影響を与えてくれました。父の言葉で「言葉にしたことは実行する」というものがあります。ラスタマンのバイブレーション(感情・気持ち)は、「ポジティブなバイブレーション」です。ポジティブな音楽は、一日をポジティブな気分にさせてくれます。そして、音楽から何かを受け取るというだけでなく、持続可能な製品にこだわってものづくりをしていくことが、この“アルバム”を通して私が伝えたいメッセージです。もちろん父は私に「ヘッドフォンを作れ」といったわけではないですが、彼の意思を私が解釈して始めたのがこのHouse of Marleyです。

――日本については、どのような印象を持っていますか? また、日本の人々にメッセージをお願いします

ローハン:規律を守り、礼儀正しいという印象を持っています。食べ物や医学など、優れているものがたくさんがありますが、特に洋服が気に入っており、日本でしか買わないシャツというのもあるくらいです。6年前に買ったシャツが今も十分に使えるように、サステナビリティを実現しているのが素晴らしいですね。我々は、サステナビリティにこだわって製品を作っています。日本の人々も「製品がどこからきて、どういう風に作られた」ということについて、もっと考えてもらえればうれしいです。

――特に、どういった人々に使ってもらいたいですか

ローハン:それは、すべての人々(Universe)です。この製品を使うことで、サステナビリティ、エコフレンドリー、オーガニックという我々のフィロソフィーが広まってくれることを願っています。  



(2012年 5月 22日)

[AV Watch編集部 中林暁]