ソニー、3.5型液晶/Android 4.0の最高音質ウォークマン

-FLAC対応+クリアフェーズの「NW-F800」。64GBも


NW-F800

 ソニーは、ウォークマンの最上位モデルとして3.5型液晶やAndroid 4.0を搭載し、FLACにも対応した「NW-F800シリーズ」を10月20日に発売する。容量は16GB「NW-F805」、32GB「NW-F806」、64GB「NW-F807」の3種類で、価格はいずれもオープンプライス。店頭予想価格は16GBが2万円前後、32GBが25,000円前後、64GBが35,000円前後。カラーは、ブラック、ホワイト、ブルー、ビビッドピンク、ライトピンクの5色。

 また、スピーカー付きのNW-F800Kも10月20日に発売。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は16GBモデルの「NW-F805K」が23,000円前後、32GBの「NW-F806K」が28,000円前後。Bluetoothイヤフォンが付属する「F800BTシリーズ」も16GBモデル「NW-F805BT」のみラインナップし、店頭予想価格は26,000円前後。


NW-F8005色のカラーバリエーションを用意NW-F800K。スピーカーも5色展開
ブラックホワイトブルー
ビビッドピンクライトピンク

 3.5型/480×800ドット液晶ディスプレイを搭載し、OSにはAndroid 4.0を採用。Google Playによるアプリ追加に対応するほか、YouTubeやGmail、Google Map、Webブラウザなどの標準アプリに加え、ソニー独自のW.ミュージックや、ビデオプレーヤー、フォトビューアなどを搭載する。IEEE 802.11b/g/nの無線LANや、Bluetooth(A2DP/AVRCP/OPP/HID)に対応する。

 プロセッサはNVIDIA Tegra 2 1GHzでメインメモリは512MB。基本的な仕様は2011年の最上位モデル「NW-Z1000シリーズ」を踏襲しているが、液晶が3.5型に小型化されるとともに本体も小型&軽量化され、FLAC対応などの機能強化を図った。なお、Zシリーズも併売され、年内を目処にAndroid 4.0へのアップデートを行ない、FLACに対応する。詳細は別記事で紹介する。

 

【FシリーズとZシリーズの比較】

型番F800シリーズZ1000シリーズ
('11年12月発売)
ディスプレイ3.5型
800×480ドット
4.2型
800×480ドット
プロセッサTegra 2
OSAndroid 4.0Android 2.3
(後日4.0にアップデート)
HDMI-
ちょい聴きmora-
(後日アップデートで削除)
DLNA Throw-
(後日アップデートで対応)
FLAC-
(後日アップデートで対応)
外形寸法114.6×56.8×8.9mm134.4×70.9×11.1mm
重量100g156g
NW-F800とNW-Z1000シリーズの比較
iPhone 4SとNW-F800の比較

 Zシリーズと同様に最高音質を目指し、7つのクリアオーディオテクノロジーを搭載。また、新たにロスレスオーディオコーデックの「FLAC」に対応したことも特徴となる。

ホーム画面

 クリアオーディオテクノロジーは、ノイズや歪みを極小化したデジタルアンプ「S-Master MX」や、デジタルノイズキャンセル(約98%の騒音カット)、DSEE、クリアベース、クリアステレオ、EXヘッドフォンなど6つの技術に加え、「クリアフェーズ」を追加。クリアフェーズは、デジタル信号処理により、スピーカーやヘッドフォンの音響特性を最適化する技術で、様々な方向からの音を整え、拡散音場特性に近づけることで、ヘッドフォンからの再生音を高音質化している。

 ウォークマン側でイヤフォンにあわせた最適化信号処理を行なうため、クリアフェーズ対応のヘッドフォン/イヤフォンは限定される。発売時には付属イヤフォンのみで、年内に予定しているウォークマン本体のアップデートにより、別売の「MDR-NWNC200」でも対応する。

新プレミアムヘッドフォン「MDR-1R」との組み合わせBluetoothスピーカー「SRS-BTV5」と連携音質設定

 音楽用アプリは「W.ミュージック」。楽曲/アルバム/ジャンル/アーティストなどから検索できる「ライブラリ」のほか、自動選曲の「おまかせチャンネル」、ジャケット写真から楽曲選択できる「カバーアートビュー」などに対応する。

ライブラリメニューライブラリ[アルバム]ライブラリ[全曲]
再生画面カバーアートビューおまかせチャンネル歌詞ピタ
側面のW.ボタンで操作

 基本操作はタッチパネルを利用するが、本体横に「W.ボタン」を備えているため、他の操作をしている最中にもスグに音楽の操作画面(ミニプレーヤー)を立ちあげて再生、停止やスキップ/バックなどの操作が可能。また、歌詞表示機能「歌詞ピタ」も備えている。

 対応音楽形式は、MP3、WMA、FLAC、ATRAC、ATRAC Advanced Lossless、リニアPCM、AAC、HE-AAC。新たにFLAC(16bit/44.1kHz)に対応したが、Apple Losslessへの対応は未定とのこと。出力は5mW×2ch。

 ビデオプレーヤーも搭載し、対応ビデオ形式は、MPEG-4 AVC/H.264(Baseline Profile)、MPEG-4(.mp4、.m4v)とWMV。フルHD/1,920×1,080ドット30fpsに対応。ビットレートはAVCが10Mbps、MPEG-4が18Mbps、WMVが20Mbps。写真はJPEGに対応する。

 DLNAにも対応。ただし、F800内のビデオや音楽、写真などを、対応のDMR(DLNAデジタルメディアレンダラー)機器へPush再生する「DLNA Throw」やDTCP-IPについては後日のアップデートで対応予定。アップデータの提供は年内を予定しており、DLNA Throw対応とともに、ダイレクトエンコーディング機能も追加される。

 アップデート後には、DTCP-IP対応し、ソニーのBDレコーダで録画した番組をUSB-WM-Portケーブル経由でウォークマンに転送(おでかけ転送)できるほか、SCEのネットワークレコーダ「nasne」についてもPS3用アプリケーション「torne」上で500円のウォークマン用書き出し機能を購入することで、番組持ち出しが可能になる。また、携帯電話やスマートフォンで撮影した写真をウォークマンとワイヤレスでやり取りする「BTファイル送受信」にも対応する。

 ホーム画面上の「Sony Select」ショートカットから、ソニーおすすめアプリの紹介にアクセスできる。無線LANの簡単設定機能として「WPS登録設定」、「AOSS」、「らくらく無線スタートEX」などに対応。GPSやGセンサーなどを内蔵し、GPS対応のAndroidアプリなどを活用できる。FMラジオも搭載する。

 また、初代ウォークマンなどレトロなウォークマン5種類のスキンを用意して、巻き戻し時にはテープの巻き戻し音をシミュレートするなど、かつての名機を操作しているような感覚が味わえるアプリ「ウォークマンクラシックス アプリケーション」も備えている。

ウォークマンクラシックス アプリケーション
ウォークマンクラシックス アプリケーション

 10月1日より配信形式が320kbpsのAAC(.mp4)となり、DRMフリー化が行なわれる音楽配信サービス「mora」にも対応。moraアプリをプリインストールし、無線LAN経由で直接moraから楽曲購入可能で、購入した楽曲はW.ミュージックから再生できる。

 パソコンからの楽曲転送はドラッグ&ドロップに対応するほか、アプリケーションは「x-アプリ Ver.4.0」が利用可能。「mora」の新配信(AAC 320kbps/DRMフリー)形式に対応する。また、ユーザービリティの向上も図っている。なお、Windows 8に合わせて、X-アプリ Ver.5.0も提供開始予定としている。

 さらに、スマートフォンのXperiaシリーズ向けのPC用アプリケーション「Media Go 2.3」にも正式対応。ソニーの様々な機器のコンテンツをMedia Goで一括管理できるようになるほか、「歌詞ピタ」にも対応する。ただし、x-アプリとMedia Goで転送形式や取り扱える録音フォーマットが異なるため、ウォークマン側で利用するアプリを選択する必要がある。

 バッテリ駆動時間は音楽再生時で25時間(NC OFF)/22時間(NC ON)、15時間(Bluetooth ON)。動画再生時で5時間。外形寸法は114.6×56.8×8.9mm(縦×横×厚み)、重量は100g。付属品はUSBケーブルやEXヘッドフォン、イヤーピース(S/M/L)、防水キャップなど。


■ 付属スピーカーの音質を向上

 NW-F800Kシリーズには専用スピーカーが付属。従来モデルの付属スピーカーはステレオ構成だったが、今回出力は1Wとモノラル化された。しかし、低域限界を広げるなどで、音質の向上を図ったとする。また、カラーも本体に合わせた5色を用意した。

NW-F800Kシリーズ

 NW-F800BTシリーズは、ノイズキャンセル(アナログ)対応のBlutoothイヤフォンが付属する。周囲の音を約90%削減可能。

NW-F800BTシリーズ
NW-F807/S

 また、ソニーストア専用モデル「NW-F807/S」も発売。内蔵メモリは64GBで、価格は38,000円前後を予定している。カラーはガンメタリックシルバーで、表面には特別なテクスチャを施した「プレミアムデザインモデル」としている。

 F800シリーズ用のソフトケースとして「CKS-NWF800」(実売3,000円前後)や、シリコンケース「CKM-NWF800」(同2,300円前後)、クリアケース「CKH-NWF800(同2,500円前後)」、プライバシーフィルター「PRF-NWP35」(同1,800円前後)、保護シート「PRF-NWH35」(同1,300円前後)なども用意される。


CKS-NWF800CKM-NWF800CKH-NWF800

■ 「いい音を追求」。10代の想起率1位に

ソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 高木副本部長

 ソニー 業務執行役員SVP ホームエンタテインメント&サウンド事業本部の高木一郎副本部長は、ソニーのサウンド事業の取り組みについて説明した。

 ウォークマン(デジタルオーディオプレーヤー)を筆頭に、パーソナルオーディオ、ヘッドフォン、カーオーディオ、ホームオーディオの5カテゴリでサウンド事業を展開。市場については、スマートフォン関連のアクセサリとして、ヘッドフォンやスピーカーなどのパーソナルオーディオが伸びており、「特に日、米、欧で顕著な伸び」という。また、南米などでホームシアターなどが伸張していることから、強化カテゴリとしてヘッドフォン、パーソナルオーディオ(ワイヤレススピーカー)、ホームオーディオ(ホームシアター、コンポオーディオ)を定義。集中的に事業のリソースを投入する。また、技術強化カテゴリとしてウォークマンに取り組むという。

サウンドビジネス強化カテゴリ

 サウンドビジネスの強化方針としては、「いい音の追求」、「地域カルチャー/カスターマー嗜好、エンタテインメントプロの感性を反映した音作り」、「ソニーグループ全体への“いい音”技術展開」の3点。デジタル信号処理や、S-Master/S-Masterなどのアンプ増幅技術、トランスデューサー(バランスドアーマチュアユニットなど)といったそれぞれの領域でいい音を実現するための独自技術にこだわり、入口から出口まで開発/設計に取り組む。

 また、「MDR-1R」における音質調整時のアーティストとの協業や、中南米地域向け製品など、地域やユーザーのニーズを反映した製品/音作りを加速するという。ソニーグループ製品全体にもサウンド事業のノウハウを提供し、IFAで発表した84型/4Kテレビや、Xperia Tablet/スマートフォンにおけるClearAudio+、ハンディカムの4カプセルサラウンドマイクなど、サウンド事業のノウハウを積極的にグループ展開し、ソニー製品の魅力を高めていくという。

 スマートフォンとの競合については、「スマホではできない音作りもあり、高音質の時代が来る。台数的には今後数年は下がると予想しているが、金額的には下げ止まると見ている」とした。

音を徹底強化地域向けカスタマイズもソニーグループ全体の製品音質底上げを担う
ソニーマーケティング モバイルエンタテインメントプロダクツマーケティング部 徳田統括部長

 ソニーマーケティング モバイルエンタテインメントプロダクツマーケティング部の徳田耕一統括部長はウォークマンの販売戦略について説明した。国内市場規模は2011年度の590万台から450万台規模に落ち込むと予測している。その理由はスマートフォン市場によるものだが、一方でスマートフォンの伸張にあわせて、「よりいい音」のヘッドフォンなどが売れており、こうした動向から専用プレーヤーのニーズは確かにあると分析しているという。

 市場では18カ月連続でシェア1位を獲得。特に10代を中心に支持を高めており、10代における「ミュージックプレーヤーの想起率(ミュージックプレーヤーと聞いて、何を思い浮かべるか)」で一位になり、「名実ともにミュージックプレーヤーといえばウォークマンといえるようになった」とした。


デジタルミュージックプレーヤーの国内市場規模。'12年度は450万台に18カ月連続でシェア1位10代の想起率でウォークマンがトップ
西野カナも登場

 また、「もっといい音で」、「もっと楽しく」、「もっと快適に」の3点を引き続き強化。S-Master MXなどの高音質化技術やクリアフェーズ、FLAC対応、付属スピーカーの音質強化も訴えていく。Android搭載のFシリーズでは音楽だけでなく、動画やゲームも訴求。また、F/SシリーズともにBluetoothもアピールしていく。

 プロモーションを10代を中心に展開し、Fシリーズは10代のマルチ機能志向派や20~30代の高音質こだわり層に、Sシリーズは中高生を中心の新規、買い替え層を狙うという。コミュニケーションメッセージは「ココロ踊る音は、ワイヤレスがいい。」で、Bluetoothをアピール。

 テレビCMなどには西野カナを起用する。発表会場には西野カナも登場し、新ウォークマンについては、「ピンクが2種類あって嬉しい。ケーブル無しで使えるので、ダンス、ランニングでも便利」とコメントした。


(2012年 9月 20日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]