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クリプトン、アナログマスターテープのリマスターを24bit/192kHz配信。森山良子など

「オリジナルスタジオマスターテープ・ハイレゾ音源シリーズ」のロゴ

 クリプトンは、展開しているハイレゾ音楽配信サイト「HQM STORE」において、新たに「オリジナルスタジオマスターテープ・ハイレゾ音源シリーズ」の配信を開始する。4月8日からは、森山良子の初期アルバム6作品、79曲を24bit/192kHzで順次配信。価格は1曲378円、1アルバム3,780円。

 「オリジナルスタジオマスターテープ・ハイレゾ音源シリーズ」は、現存するアナログテープのスタジオマスターを24bit/192kHzでデジタルリマスタリング、HQM STOREにおいて24bit/192kHzのFLAC形式で配信する新シリーズ。森山良子作品以外に、カメラータ・トウキョウが提供する「驚異のデュオ」(HQMA-0001)ほか19作品も、同シリーズの作品として先行配信(1アルバム3,465円/税別3,300円)している。

 4月8日より配信するタイトルは、音楽出版社のシンコーミュージック・エンタテイメントが保有する森山良子の作品から、レコーディング当時18歳のデビューアルバム「この広い野原いっぱい~森山良子フォーク・アルバム NO.1」以降の6作品で、「さとうきび畑」や「時には母のない子のように」などのヒット曲もラインナップする。40年以上前の6mmアナログ録音マスターテープを、JVCマスタリングセンターの協力により24bit/192kHzでデジタルリマスタリング。その際、スタジオの機材にクリプトンの電源ケーブル「PC-HR1000」や、電源ボックス「PB-HR1000」、オーディオボード「AB-HR5」なども使用。「森山良子さんの歌声を最良の状態で録音できるようチューニングした」という。ただし、状態が良かったというマスターテープの高音質を活かすため、イコライジングなどの音質調整は行なっていない。

オリジナルの6mmマスターテープ
JVCマスタリングセンターの“杉本ルーム”で24bit/192kHz化した
使用した機材
クリプトンのオーディオアクセサリを使うことで音質改善を図っている

森山良子の配信タイトル第1弾

この広い野原いっぱい ~ 森山良子フォーク・アルバム No.1
 スタンダードナンバーの表題曲含め14曲
愛する人に歌わせないで ~ 森山良子アルバム No.2
 '68年発売のセカンドアルバム。オリジナル曲や、「恋はみずいろ」などのカバー曲で構成した14曲
森山良子カレッジ・フォーク・アルバム
 「時には母のない子のように」、「風」などライブで好評のヒット曲を中心にした14曲
さとうきび畑/森山良子 カレッジ・フォーク・アルバムNo.2
 何度もリリースされた「さとうきび畑」最初の収録など12曲
森山良子イン・ナッシュビル
 '69年当時、日本人初のナッシュビル録音。フォークからカントリー・ウェスタンなど12曲
森山良子 ビートルズ、サイモン&ガーファンクルを歌う
 前半はビートルズ、後半はサイモン&ガーファンクルのカバー。13曲

デビュー当時のエンジニアがリマスター。年内にハイレゾ対応ハードも積極展開

マスターテープを提供したシンコーミュージック・エンタテイメントの吉田聡志取締役(左)と、リマスタリングを担当した本城和治氏(右)

 今回のリマスタリングは、森山良子のデビュー作品などを担当した元フィリップス・レコード・プロデューサーの本城和治氏が行なった。JVCマスタリングセンターにある、レコーディング/マスタリングエンジニア・杉本一家氏の“杉本ルーム”で制作。テープレコーダはStuder A80で、JVC特製ヘッドアンプを使用。JVCのADコンバータ「MC-AV192B」の底面にクリプトンのオーディオボードAB-HR5を使っている。

 森山良子の初期作品から関わってきた本城氏は当時、洋楽のカバーアーティストではなく、“日本のアルバムアーティスト”に育てることを目指していたという。「日本人として初めて米ナッシュビルでフル録音を行なった。今回リマスタリングして、元のテープの素晴らしさに改めて感動した。いままでのCDはなんだったのかと、目から鱗だった(笑)」と語った。

「学生フォーク界の女王」としてデビューした森山良子の作品を紹介
初期作品の制作時などを振り返った本城和治氏

 マスターテープを提供したシンコーミュージック・エンタテイメントは、これまで圧縮音源には楽曲を提供してきたが、ハイレゾ楽曲の提供は初となる。吉田聡志取締役 著作権部長は「70年代までの音源はアナログマスターで残っている。今後も60~70年代の邦楽作品をリリースして行きたい」と今後もHQM STOREでのハイレゾ配信へ積極的に楽曲を提供する姿勢を示した。同社には、アナログテープのマスターが現在約50作品残っている(1作品で複数のマスターが存在するものもある)という。同社の草野夏矢社長は「鮮やかによみがえったこれらの作品を、同世代のファンの方はもちろん、もっと若い方々にもぜひ楽しんでいただきたい」とコメントしている。

リマスタリング作業の様子をビデオで紹介した
クリプトンの濱田正久代表取締役

 クリプトンの濱田正久代表取締役は、今回の作品追加によりHQM STOREでの配信数が324作品に達した(CD音源を高音質化したHQM GREENを含む)ことを説明。同社は創業30年で、オーディオ事業開始から15年、HQMでの配信開始から5年の節目を迎えるにあたり「今年は一気に加速をつける年。ハードウェアも本格的にハイレゾ音源を聴けるシステムを今年中に仕上げて、皆さんに提供したい」と予告した。

(中林暁)