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大きく動き始めたソニーの「ウェアラブル」。スマートウェア戦略の今後とは?

 米国ラスベガスで1月6日(現地時間)に開幕した「2015 International CES」において、既報の通りソニーは様々な新製品を発表した。その中でも特に新製品やコンセプト展示が目立ったカテゴリの1つがウェアラブル機器だ。同社はウェアラブルを含むセンサー搭載製品を「スマートウェア」という言葉で表現している。

ソニーはウェアラブルを含むセンサー搭載製品を「スマートウェア」と呼ぶ
ソニーのスマートウェア戦略を束ねる近藤博仁氏

 ソニーとソニーモバイルコミュニケーションズを含む全体のスマートウェア戦略を束ねているのが、ソニーのUX・商品戦略・セールス&マーケティングプラットフォーム UX・商品戦略・セール&マーケティング本部 UX企画運営部門 UX企画部 プロダクトプランニングマネージャーを務める近藤博仁氏。今回のCESに合わせて、近藤氏がスマートウェア製品における他社との差別化や、今後の取り組みなどについて説明した。

コラボ強化などウェアラブルの最新動向

 '14年のCESにおいて、ソニーはスマートウェアの第1弾となるリストバンド型の「SmartBand」を発表したが、その時点ではスマートウェアは1製品のみだった。それ以降、腕時計型の「SmartWatch 3」や、通話もできる「SmartBand Talk」、「Smart Tennis Sensor」など順次拡大し、今回のコンセプト展示のモデルなども合計すると7製品にまで拡大。スマートフォンアプリ「Lifelog UX」がこれらの機器を制御する存在となり、ハードウェア、アプリ、サービスを含めたものを、同社スマートウェアのエコシステムとしている。

'14年のCESの状況
'15年のCESでスマートウェア製品が拡大

 ハードウェアの最新動向に関しては、SmartWatch 3 SW3のステンレススチールモデルを2月にグローバルで発売することを説明。スーツやジャケットなどにも合うメタリックなデザインとしている。

SmartWatch 3 SW3
SW3のステンレススチールモデルを発表

 SW3本体はバンド部を別のものに交換できるのも特徴だが、SW3本体を確実に装着できるバンドをサードパーティが製品化するには、SW3本体のCADデータなどが必要で、これまでは高いハードルがあったという。そのため、通常の腕時計用バンド(24mm幅)が装着できる枠の部分(ホルダー)をソニーが今春に発売予定であることを明らかにした。SW3は「現時点ではGPSに対応している唯一のAndroid Wear」という点から、アプリ開発を手掛けるベンダーと協力する際に、GPSを活用してを動かすことを提案。その対象アプリとして「Golfshot」と「iFin」が決まったという。

 そのほか、リストバンド型の「SmartBand SWR10」はファッションブランドとのコラボレーションも強化しており、新たにROXYなど3ブランドの協力が決まった。

SmartBand SWR10は、ブランドとのコラボレーションを拡大した

「SmartEyeglass Attach! 」と「Smart B-Trainer」が目指すもの

 ウェアラブルのコンセプト展示として今回のCESで目玉となっている一つが、0.23型という極小サイズの有機ELディスプレイを用いた「SmartEyeglass Attach! 」。掛けた人の2m先の16型ディスプレイによる映像と同等の視野で、「実世界の視界の妨げとならずに必要な情報を確認できる、サブウィンドウとしての活用に適した画面サイズ」に設計。名称の通り、メガネやゴーグルなど様々な形状のアイウェアに装着できるのが大きな特徴。

SmartEyeglass Attach!の試作機

 今回の展示でスポーツに特化した提案を行なっているのは、約40gという軽量設計と、有機ELによる明るさで外光下でも見やすいことを活かすためだという。例えばゴルフでは、カップまでの距離を通知したり、次のショットで使うクラブをおすすめするといったことも、メガネ型なので周りに気付かれずにできるという。

小型有機ELや無線LAN、Bluetoothなどを搭載
屋外でも見やすいことから、スポーツへの利用を提案。ゴーグルなどにも装着可能
視界を妨げずに、必要な情報を確認できる
デバイスソリューション事業本部 イメージセンサ事業部の太田義則氏

 担当したのはデバイスソリューション事業本部 イメージセンサ事業部の太田義則氏。「ソニーとしての差異化は、弊社でしか作れない0.23型の業界最小サイズの有機ELを採用していること。従来のスマートグラスは、透過型を追求していて、屋外での使用が厳しかった。今回のSmartEyeGlass Attachは、目の前にある光ユニットを極小にすることで、視界を妨げることなく映像が観られることが利点。有機ELの高コントラスト比、非透過のため屋外でもクリアな映像が観られる」とした。

 近藤氏は「SmartEyeGlass Attachは、セットの事業部ではなく、デバイスの事業部から出てきた商品提案。デバイス屋としてのソニーが自信をもって作っているため、そう簡単にマネはできない」と付け加えた。

 もう一つの注目が、音楽再生機能付きBluetoothヘッドセットに様々なセンサーを搭載し、ランニングのコーチに特化したデバイスという「Smart B-Trainer」。GPSや心拍センサーなどを備え、音楽を聴きながら走ると、トレーニングの目標と、現在の心拍数に応じて、ペースを上げる/下げるべきかを音声で案内。言葉だけでなく、再生中の曲よりもBPMの速い/遅い他の曲に変えることで、ペースを変えることを促すというユニークなアプローチが特徴。

Smart B-Trainer試作機の装着例

 担当したのは、UX・商品戦略・クリエイティブプラットフォーム SE事業室の小池中人氏。自らもマラソンを趣味としており、ランニングのコーチなどからの意見も取り入れて今回の提案を行なっているという。

スマホアプリと連携して、ボイスと音楽でランニングをアシストする
UX・商品戦略・クリエイティブプラットフォーム SE事業室の小池中人氏

 今回の展示は、今までのソニーが得意としていたエンターテインメントや、今までのウェアラブルが担当していたヘルスケア領域に加え、スポーツや、ファッション性を高めたり、ゲームのシューティング、エンタープライズ、キッズ・エデュケーションといった、スマートウェアの意味する体験を広げ、ソニーが得意としていた領域以外にも拡大していくことを目指しているという。

 近藤氏は、ハードウェアにおける差異化について「ウェアラブルにおいてクールで良いものを作るには、地道だが、いかに小さいバッテリを作れるか、消費電力の少ないセンサーが作れるかということが重要。そこは、ソニーの持っている厚木(テクノロジーセンター)の技術が活かせる領域。そこが我々のウェアラブルにフィットする領域」とした。

(中林暁)