小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1215回

「間違いない音」のその先へ。EDIFIER 「M90」を聴く
2026年3月25日 08:00
デスクトップスピーカーの名門
机の上に置いてPCなどを音源に音楽などを聴くためのデスクトップスピーカーは、ハイレゾフォーマットと良質なUSB DACの登場によって大きく飛躍した。だいたい2010年前後の話である。
しかし音源がストリーミングサービスに移行してスマートフォンが主力になると、ヘッドフォン・イヤフォンが主力となる。スピーカー需要は一旦落ち着くわけだが、そこで撤退するところや参入するところなど、メンバーの入れ替わりが起こっているところだ。
EDIFIERはその中でも、初期デスクトップスピーカーの頃から製品を投入し続けているメーカーの一つである。デスクトップスピーカーメーカーの名門として、昨年は「MR3」や「M60」といった高コスパ製品を連発した。今年は「M60」の上位モデルとなる「M90」を3月20日より発売を開始している。
M90はヒットとなったM60をサイズアップして多彩な入力を備え、拡張性が魅力となる。通常価格は46,980円で、発売記念キャンペーンとして4月6日23時59分までは20% OFFの37,584円で販売される。
M60のほぼ2倍の価格ということになるが、それだけに期待も高まるところだ。早速聴いてみよう。
M60同様シンプルなスタイル
M90はブラックとホワイトの2色展開となる。M60も発売直後は同様の2色展開だったが、現在はオークとパープルを加えた4色に拡大している。それだけ人気があるということだろう。
今回M90はブラックをお借りしているところだが、KEFの「Coda W」や「LSX II」など、ガッツリしたブックシェルフでも渋めのカラバリ製品が増えている。ブックシェルフクラスでもカラバリは流行るかもしれない。M90でも期待したいところだ。
サイズは133×225×212mm(幅×奥行き×高さ)で、デスクトップスピーカーとしては標準的な大きさだ。ドライバ構成としては、35Wの4インチ アルミダイヤフラム ミッドバスと、15Wの1インチ シルクドームツイーターの2ウェイ。周波数特性は50Hz〜40kHzのハイレゾ仕様だ。背面には楕円形のバスレフポートがある。
高効率デュアル Class-D アンプは実効値100W。内部処理は24bit/96kHzのエンドツーエンドデジタル処理を行なう。よってUSB-C接続の場合も、最大24bit/96kHzで接続となる。
ツイーターはM60と同じ仕様だが、ミッドバスが1インチサイズアップし、出力も18Wから35Wにアップしている。M60では仰角を付けるためのアルミスタンドが付属していたが、M90には付属しない。製品にそこそこ高さがあるので不要ということだろう。
M90の特徴は、多彩な入力端子である。Bluetooth、USB-C、アナログAUXに加え、HDMI eARCと光デジタル入力も備えた5入力となっている。またサブウーファ出力も備えており、低音が足りなければ足せるという拡張性も備えている。
左右の接続は独特の4ピンケーブルで、長さは5mあるので、スクリーンの両脇など左右をかなり離して設置することもできる。
背面のノブはボリュームと入力切り替えを兼用するが、専用リモコンが付属する。赤外線ではなく2.4GHz無線タイプなので、スピーカーに向けなくても反応する。
M60は右側天面にタッチ式コントローラがついていたが、M90にはそうした機能はない。その代わりリモコンを付けたということだろう。
リモコンはボリュームや入力切り替え、EQ切り替えのほか、USB-C接続では曲の再生・停止やスキップにも対応する。
余裕のある低音性能
では早速聴いてみよう。まずはパソコンとUSB-Cで接続して、M60同様Amazon MusicからDEZOLVEのアルバム「Asterism」をハイレゾ音源で聴いていく。
M60も小型の割に低音が良く出るスピーカーだったが、M90はエンクロージャ容積も大きくミッドバスも大型化しているので、低音の出方に余裕がある。特にEQで持ち上げなくても十分なバランスだ。
左右の間隔は約60cmでM60と同じ環境で使用しているが、ステレオの空間的な広がりが非常に心地よく耳に響く。特に空間オーディオでもないハイレゾ音源だが、頭の横まで回り込むような、非常に立体感のある鳴り方をするスピーカーだ。
高域表現も滑らかで刺さるような感じはなく、ソフトドーム特有の涼しげな鳴りの良さが感じられる。
定位がビシッと決まるような感じではなく、センターに定位しているはずの音も若干滲む印象を受ける。エコーの鳴りを非常によく捉える傾向があり、サウンドは全体的にややウェットで、オフ気味に聞こえる。長時間のリスニングでも疲れは少ない。
あくまでもモニタースピーカー的な方向ではなく、楽しく聴かせる方向にチューニングされているようだ。
コントロールアプリは同社イヤフォンなどと同じ、「EDIFIER ConneX」を使用する。ここでは入力切り替えやイコライザー切り替えなど、リモコンと同じ機能を使用できるほか、リモコンではできない設定も変更できる。
Bluetooth接続もLDAC対応なので、24bit/96kHz接続できる。ただそれ以外のコーデックはSBCだけなので、LDAC非対応のスマートフォンユーザーには若干厳しい作りである。
イコライザーは標準、モニター、ダイナミック、カスタマイズの4モードがある。それぞれのアイコンはリモコン上にあるアイコンボタンと対応している。
標準からモニターに切り替えると、高域の表現がグッと煌びやかになり、明瞭感が上がる。純粋な意味でのモニターサウンドとはちょっと違う印象だ。
ダイナミックはその逆で、標準に対して高域が引っ込み、低音が出てくる。高域の反射が多い部屋ではこちらのほうがよく聞こえるだろう。
カスタマイズは9バンドのグラフィックEQを使って自分の好きな音質に調整できる。ただ調整範囲が±3dBしかないので、それほど大胆に音質が変えられるわけではない。EQ設定はQRコードにしてシェアできる機能もある。同じスピーカーを持っている人同士でEQ設定の交換ができる。
テレビやプロジェクタとも組み合わせやすい
続いてHDMI eARC接続でプロジェクタと接続し、Netflixにて「葬送のフリーレン シーズン2/27」を視聴してみた。
中盤にドラゴンとの戦闘シーンがある回だが、いわゆるドンパチ音と背後のオーケストラ音楽のバランスもよく、音の広がりが良いこともあってかなり楽しめる。低域もよく出ているが、周波数特性の下の方は50Hz程度なので、お腹に響くような重低音という感じではない。そこまで期待するなら、やはりサブウーファがあったほうがいいだろう。
セリフには明瞭感があり、特に音声のエンハンス機能などを使わなくても聞き取りやすい。セリフが重要なドラマなどにも、そのままで十分対応できる。
同時にテレビも光デジタル端子で接続してみた。テレビ内蔵スピーカーに比べて、当然ながら1段も2段も上質の音質が楽しめる。
テレビとプロジェクタを切り替え器なしで同時に接続できるというのは、サウンドバーにはよくある仕様だが、デスクトップスピーカーで両対応は珍しい。スピーカーが2個セットなので、移動したり向きを変えるのは面倒ではあるが、それはまあ横に長いサウンドバーも一緒といえば一緒である。
左右の組み合わせは右チャンネルと左チャンネルの入れ替えもできる。プロジェクタ投影の際には頭の後ろから鳴るという置き方をした場合でも、スマホアプリから簡単に左右入れ替えができる。左右入れ替えはサウンドバーではまず聞いたことがない機能なので、2個セットならではの利点だろう。
総論
M60はバランスのいいコンパクトスピーカーとしてヒット商品となったが、ノートPCなどと組み合わせやすいサイズ感がポイントだった。一方デスクトップの常設スピーカーとしてはちょっと小さい。
一回り大きいサイズとしてはQR65やMR5もあるところだが、QR65のような照明はいらないとか、MR5はアナログ入力中心といった専門性があり、汎用で使うには難しい。
M90はちょうどどれにも被らない仕様で設計されており、まさに汎用スピーカーとして過不足ない作りが魅力である。
正面からの佇まいもシンプルなので、ディスプレイ脇に置いても目立たず画面に集中できる。またリモコンやスマホアプリからも操作できることで、近くに行かなくても操作できるのも、離れたところから視聴するプロジェクタユーザーにも便利だ。
サウンド的にドライなモニターライクな音が好きな人には物足りないかもしれないが、コンテンツに没入したいという人には心地よいサウンドだ。EQ「標準」モードでもバランスがいいので、多くの人はそれほどいじらなくても満足できるだろう。
EDIFIERの中では若干高めの値付けだが、これだけ汎用性があってこのサウンドなら、納得できる。クーポンやセールなどをうまく利用して購入してほしい。














