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「Dolby VR」と「AC-4」、どんな映像と音声が体験できる?

UHD Blu-rayにもDolby Atmos採用へ

 米Dolby Laboratoriesは、「CES 2016」の開催に合わせて、Dolby Vision(ドルビービジョン)やDolby Atmos(ドルビーアトモス)などの最新技術を紹介するデモを実施。さらに、VR映像とDolby Atmos音声を組み合わせや、次世代オーディオとしての採用を見込むAC-4フォーマットのデモも行なっている。

ドルビーのデモルーム

HMDとスピーカーで楽しむ「Dolby VR」

 CES 2016のキーワードの一つに挙げられる「VR」は、様々なブースでデモが行なわれているが、それらはいずれもOculus RiftやGear VRといったヘッドマウントディスプレイ(HMD)とヘッドフォンを組み合わせたものとなる。

 ドルビーが提案しているのは音声にDolby Atmosを使うことで、スピーカーから聴こえる音とVR映像の組み合わせで楽しむ点が特徴。スピーカーの位置を意識させない立体的な音響の特徴を活かし、より臨場感を高められるのがメリット。

Oculus RiftでVR映像を観る
Dolby Atmos対応AVアンプとスピーカー

 今回のデモでは、ポール・マッカートニーのライブ「Live and Let Die」を、Dolby Atmos音声と、JauntによるシネマティックVR技術の組み合わせで視聴した。Oculus Riftによる映像と、AVアンプでデコードしたDolby Atmos音声でライブを視聴すると、ヘッドフォンによる締め付けがないこともあって、HMDを装着していても開放的な感覚でコンテンツを楽しめる。HMD + VRの組み合わせに比べるとケーブルが少ないという点も、周りが見えないVR視聴時には助かるポイントと言える。

Live and Let Die
BLACK MASS

 次は、少しホラー要素を含んだコンテンツ「BLACK MASS」を体験。映像が始まると、自分の周りを複数の人が囲んでいて、それぞれが勝手に話している。バーチャル空間とはわかっていても、映像の没入感もあって、ついつい話す人の方に顔を向け、耳を傾けてしまうリアルさがあった。

AC-4は、ホームorアウェイの実況や他言語の選択も。テレビスピーカーでAtmos音声

 次世代の放送サービス向けのマルチチャンネル対応音声フォーマット「AC-4」は、音質を従来から落とさずに50%以上まで圧縮効率を上げられるという。これにより、1チャンネル当たりの帯域が抑えられ、放送やストリーミングサービス音声の効率化や多チャンネル化などを容易とする。また、Dolby Atmosのようなオブジェクトベースのオーディオ機能も備えている。

 マルチチャンネルを活かした様々な用途が提案されている。例えばサッカー中継では、シュートで歓声が沸き上がった時でも実況音声部分を拡張して聞き取りやすくし、歓声をわずかに抑えることで、全体では大きくボリュームを上げなくても聞こえやすい音になった。

AC-4のスポーツ中継音声デモ

 他の例では、1つの試合中継の実況を「ホーム側」と「アウェイ側」の好きな一方から選べるということも提案。それに加え他言語や、会場の生の音声チャンネルも用意することで、映像は1つでもより多くの人が楽しみやすいものになるメリットがある。

ホームチーム側の実況
アウェイ側の実況
スペイン語の実況

 このほか、前述したオブジェクトベースのオーディオとして、テレビの内蔵ステレオスピーカーのみでDolby Atmos音声を聴くというデモも体験した。7.1.4chなど実際にスピーカーを設置した場合に比べるとさすがに違いはあるものの、想像していた以上に音の移動感や定位感がステレオスピーカーのみでも体感できた。

テレビのスピーカーとAC-4でDolby Atmos音声を聴いた

 AC-4音声を聞くには、対応デコーダを家庭の機器に搭載することが必要だが、例えばSTBやAVアンプなどいずれかが対応していれば、他はパススルーすることで様々な視聴環境で利用可能になるとしている。会場ではSTMicroelectronicsやSigma Desings、Broadcomが対応デコーダチップのリファレンスデザインを展示していた。

 ドルビーでは、放送事業者やストリーミングサービス事業者と連携するとともに、パートナーらとも協力し、2017年発売の民生テレビでの導入に向け、AC-4の技術提供を進めているという。ドルビーのPrincipal Architect,Broadcast担当のSripal Mehta氏は、「まずは放送よりも(映像配信を含む)OTTサービスで採用されるのでは」としている。

AC-4デコード対応機器の開発が進められている

Dolby Vision採用はテレビ/コンテンツともに拡大

 CESに合わせて、テレビなどのハードウェアメーカーや、コンテンツ事業者らが、ハイダイナミックレンジ(HDR)映像技術の「Dolby Vision」や、立体音響技術の「Dolby Atmos」への対応を発表している。

今回のデモではVIZIOの65型4Kテレビ「VIZIO Reference Series 65」(5,999ドル)でDolby Visionを体験した。スピーカーはKlipsch製のイネーブルドスピーカー

 既報の通り、MGM(Metro-Goldwyn-Mayer)と、ユニバーサルピクチャーズホームエンターテイメントが、今年からDolby Visionのフォーマット向けにマスタリングされた両社の新作・カタログタイトルを提供していくことを発表。

 また、中国のテレビメーカー・TCLは、65型4Kテレビ「X1」でHDR性能を実現するためにドルビーと提携。新たなHDR対応の65型「X1」を米国で2016年後半より発売する。X1シリーズには、量子ドット技術による広色域化を取り入れた4Kパネルを採用。ピーク輝度は1,000nit、直下型LEDで288ゾーンのローカルディミング機能でHDRと正確な明暗コントロールを行っている。

 現在、Dolby Atmosには、60機種以上のAVアンプ、25種類のスピーカー、サウンドバーが対応している。ソニー・ピクチャーズ ホームエンタテインメントは8日、同社初の4K Ultra HDディスクフォーマットでリリースする作品などにDolby Atmosを採用すると発表。

 2016年初頭に発売する初のドルビーアトモス採用4K Ultra HD作品は、「アメイジング・スパイダーマン2」、「ソルト」、「ハンコック」、「チャッピー」、「スモーキング・ハイ(原題:Pineapple Express)」、「スマーフ2」など。

(中林暁)