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次世代放送向け音声「AC-4」をドルビーブースで体験。VIZIOはDolby Vision対応TV
(2015/4/16 16:43)
放送/映像制作関連の国際展示会「2015 NAB Show」が、米国ラスベガスにおいて16日(現地時間)まで開催されている。Dolby Laboratories(ドルビー)は、次世代の放送サービス向けのマルチチャンネル対応音声フォーマット「AC-4」のデモを行なっている。
また、米国時間の13日に発表された通り、HDR(ハイダイナミックレンジ)映像技術「Dolby Vision(ドルビービジョン)」に対応した第1弾の製品として、米VIZIOの4K液晶テレビ「Reference Series」が発売予定。映像配信サービス「VUDU」を通じて、ワーナー・ブラザーズの4K/HDRコンテンツを家庭で視聴可能となる。このVIZIO製テレビを使ったHDRコンテンツの視聴デモも、ドルビーブースで行なわれている。
ドルビーデジタルの次世代となる音声フォーマット「AC-4」
DVDビデオの音声などでも一般的になった現在のドルビーデジタル「AC-3」が発表されたのは1992年で、今から20年以上前。AC-4はその次の世代に位置づけられる音声フォーマット。大きな特徴は、音質を従来から落とさずに50%以上まで圧縮効率を上げられるという点。これにより、1チャンネル当たりの帯域が抑えられ、放送の音声を多チャンネル化しやすくなる。一般向けにAC-4のデモを行なうのは今回のNABが初めて。
音声は、5.1chなどの“チャンネル方式”と、Dolby Atmosに代表される“オブジェクト方式”の両方をサポート。複数のチャンネルを活かして多言語放送を可能にするほか、ナレーションなど人のセリフだけを強調する「Dialoge Enhancement」機能も利用可能。全体のボリュームを上げなくても、人の声だけを聴き取りやすくできる。
AC-4により実現できることの一つとしてドルビーが挙げているのが「パーソナライゼーション」。前述したように人の声だけを聴きやすくすることで、それぞれのユーザーに応じた音でテレビを楽しめるほか、多チャンネルを活用して、例えばスポーツ中継において、好きな解説者の音声をユーザーが選んで聴けるといった使い方も考えられるという。
対応テレビはまだ発表されていないが、テレビ向けのオーディオ/ビデオデコーダのサプライヤーであるMsetが、初のテレビ用AC-4対応デコーダを開発し、ドルビーブースでのデモに使用されている。ヘッドフォンを使ってAC-4音声を聴いてみたところ、特別に音が良いというものではないものの、従来のテレビ音声よりも大幅に圧縮率を上げたとは、少し聴いただけでは気づかないほど自然な音質を実現していることを確認できた。
NAB出展社の中でも既にThomsonやEricsson、Harmonic、ST Microといった多くの企業がAC-4のパートナーとなっており、AC-4で何か改善すべき点が見つかった場合は報告して解決していくといった関係が構築されているという。
より高いサンプリングレートなどを採用するという可能性があるかどうかについて、ドルビーのブロードキャスト コンシューマ オーディオ担当倍すプレジデントのMathias Bendull氏に尋ねたところ、今の放送で一般的な48kHzを超えることは想定していないという。多チャンネルなど放送に適した機能を持ち、これまでの“テレビ音声”の枠を超える活用が可能になるオーディオとして期待できそうだ。
初のDolby Vision対応テレビがVIZIOから登場。VUDU
Dolby Visionは、映像の色表現やダイナミックレンジを高め、画質を向上するDolbyの新映像技術。これまでもシャープや東芝など複数のメーカーが対応テレビの試作機を展示していたが、製品として発売されるのは米VIZIOの「VIZIO Reference Series」が初となる。NABのドルビーブースには、同シリーズの65型映像と、ドルビービジョンのデモコンテンツが上映されており、HDRの鮮やかな明暗表現などが体験可能となっている。
ウォルマート傘下の映像配信サービス「VUDU」が、Dolby Visionの導入を決定。コンテンツにおいては、ワーナーが「オール・ユー・ニード・イズ・キル」、「イントゥ・ザ・ストーム」、「LEGOムービー」などの新作や、「マン・オブ・スティール」、「シャーロック・ホームズ」などの4K/HDR化を進めていく。VIZIOの対応テレビ発売と、VUDUの対応サービスの開始時期は明らかにされていないが、数カ月内に登場することが見込まれる。
ドルビーのブロードキャストビジネスグループ SVPを務めるGiles Baker氏は「ワーナー以外にも映画スタジオとの交渉を進めており、ドルビービジョン対応コンテンツは今後も拡大していく」と述べている。
Dolby Visionの映像が家庭に届くには、コンテンツ制作から配信事業者、テレビなどのディスプレイまで、各領域/製品における対応が必要だが、今後のVIZIOとVUDUの対応により、制作から視聴までつながる最初の事例となる。
VIZIOといえば、かつては価格の安さを武器にシェアを拡大していったことが話題になったが、現在ではスマートテレビなどのラインナップも拡大。Dolby Visionに対応する新しい「Reference Series」は、直下型LEDバックライトと384分割のローカルディミング(LED部分駆動)や、800nitのLED輝度を活かしたコントラストの正確なコントロールによりダイナミックレンジを拡大するなど、画質にも強くこだわったモデル。一方で動画配信サービスのVUDUは、「電源を入れてWi-Fiにつなげばすぐ使える」といった導入のしやすさを訴求。これらの企業が新技術であるDolby Visionを、他社に先駆けて採用するということも、一つのトピックと言えそうだ。