ミニレビュー

お気に入りのイヤフォンをBluetooth化。WestoneのMMCX搭載ケーブルで音楽を身軽に

 スマートフォンやポータブルオーディオプレーヤーの音楽をワイヤレスで楽しみたい、でも気に入ったイヤフォンから買い替えるのは抵抗がある……そんな人に適しているのが、Westoneの「Bluetoothケーブル(WST-BLUETOOTH)」。MMCX端子を備えたイヤフォン/ヘッドフォンに接続することで、Bluetoothイヤフォンとして利用可能になる製品だ。

Bluetoothケーブル(WST-BLUETOOTH)と、Shure SE215SPE-A、iPhone 6sの組み合わせ

 MMCX端子搭載のイヤフォンは、もしケーブルが断線した場合も交換して使い続けることができ、ケーブルの種類によって音の違いも楽しめるのが利点。ShureやWestone、ゼンハイザー、Ultimate Ears、オンキヨーなど、様々なメーカーが対応イヤフォンを製品化している。そのケーブル交換によって、イヤフォンをBluetooth対応にしてしまうのが、「WST-BLUETOOTH」の特徴だ。

WST-BLUETOOTH

 WST-BLUETOOTHを使う最大のメリットは、手持ちの気に入ったイヤフォンがプレーヤーとワイヤレスで接続でき、取り回しが良くなること。衣服などにケーブルがまとわりつく煩わしさは無く、首の後ろに回すケーブルにリモコンも備えるため、プレーヤーをカバンやポケットなどに入れたままで音楽再生と操作ができる。7月30日に発売され、価格はオープンプライス、実売19,800円前後(税込)。

MMCX端子でイヤフォンと接続
パッケージ
リモコン部分

 同様に、MMCX対応イヤフォンをBluetooth対応にする製品は、ソニーから3月に発売された「MUC-M2BT1」などがある。この製品はBluetooth伝送時のコーデックとして、“ハイレゾ相当”の高ビットレートに対応したLDACをサポート。MMCX端子を備え、サポートするのはソニー製イヤフォンのみだが、以前のレビューでも紹介した通り、実際は多くのMMCX対応イヤフォンと接続可能なようだ。

 筆者はポータブルオーディオプレーヤーとして主にLDAC対応のウォークマン「NW-A16」を使っているため、音質の面からは、「MUC-M2BT1」と組み合わせるのが最適だが、ネックバンドを首の周りにのせるデザインがあまり好みではなかったため、発売されてからも手が伸びなかった。

ソニーの「MUC-M2BT1」

 WestoneのWST-BLUETOOTHは、上記のネックバンド型に比べると首回りはスッキリする印象。ソニー製品とは違ってLDACには対応していないが、低遅延のaptXやAACもサポートしている。仕様としてはソニーの旧モデル「MUC-M1BT1」に近いが、これら3モデルの中で一番バッテリの連続使用時間が長いのがWST-BLUETOOTHの約8時間(M2BT1は約7.5時間、M1BT1は約4.5時間)ということもあって、WST-BLUETOOTHを使ってみることにした。

 組み合わせるイヤフォンとしては、Shureのイヤフォンの中では低価格ながら音質の評価も高い「SE215」(特別モデルのSE215SPE-A)を中心に、Westoneのカスタムイヤフォン「ES60」や、ダイナミック型のパナソニック「RP-HDE10」、Campfire Audio「ANDROMEDA」などを使った。

イヤフォンごとの良さをワイヤレスでも実感

 まずは、Shure SE215をWST-BLUETOOTHと接続してウォークマンNW-A16で再生。イヤフォンとケーブルのMMCX端子を接続し、ケーブルのリモコン部中央にあるボタンを、赤と青のランプが交互に点滅するまで長押しするとペアリング待ちの状態になる。そこから、プレーヤー側の操作で「Westone BT」を選ぶと接続できる。ウォークマンの設定を「音質優先」にしたところ、コーデックは自動でaptXが選択された。

WST-BLUETOOTHをShure SE215に装着
丸ボタンを長押し
ウォークマンAとaptXコーデックで接続
iPhone接続時の画面

 WST-BLUETOOTHはNFCに対応していないため、ワンタッチでペアリング/解除することはできないが、ウォークマンの設定で「起動時自動接続先」にWestone BTを指定しておくと、ウォークマンとWST-BLUETOOTHの両方を起動(スリープ解除)するだけで自動でペアリングされる。

 耳への装着は、リモコンのある方が右側に来るようにして、ケーブルを耳に掛けて後ろに回す。慣れればリモコンボタンの手触りで左右が分かるので、イヤフォンのLR表記を見なくても左右は判別しやすく、手触りでボタンの位置が分かるので、すぐに起動できる。ケーブル長は一般的なネックバンド型に比べて長めの約70cmで、そのまま首の後ろに垂らしても問題ないが、頭にしっかりホールドしたい場合は、中央のスライダーで長さを調整できる。

装着例
後ろから見たところ

 あとは普通のBluetoothイヤフォンと同様に音楽をワイヤレスで聴くことができ、再生/一時停止や曲送り/戻し、ボリューム増減がコントローラで行なえる。首の後ろにケーブルがあるため“完全なワイヤレス”ではないものの、長いケーブルでプレーヤーやスマホをつながった状態に比べると身軽で、頭の動きも制限しないのはBluetoothならではの快適さだ。

 「Bluetoothにすると音質が劣化するのでは? 」と心配する人もいると思うが、結論から言えば、外で聴くイヤフォンとしては充分な音質を確保している。静かな場所で、例えばShure SE215でSHANTI「ジャスト・ア・ガール」(96kHz/24bit FLAC)を聴き比べると、有線(SE215付属ケーブル)の方が低域の明確な輪郭や沈み込みなどに分があると感じる。ただし、Bluetooth(aptXコーデック)もボーカルの押し出し感や、繊細な描写などでは健闘しており、SE215の持つ良さが活かされた音で聴けた。

 イヤフォンを5ドライバ搭載のCampfire Audio「ANDROMEDA」に交換すると、豊かな低域のパワーとワイドレンジさが、Bluetoothでも確かに味わえた。さらに、カスタムイヤフォンのWestone「ES60」を使ってみると、ほぼ完璧な遮音性もあって、消え行く微かな高域と、深く深く沈む低域まで、広い音場で再現できた。一方で、ダイナミック型のパナソニック「RP-HDE10」にしてみると、前面にグイグイ出てくる低域が不足なく感じられるなど、思っていた以上に、それぞれのイヤフォンの音の違いがはっきりわかる。聴き慣れたイヤフォンの良さがワイヤレスの自由さと同時に味わえて、このケーブルを使って良かったと思えた。

Campfire Audio「ANDROMEDA」
Westone ES60

3ボタンリモコンで快適に操作。8時間動作で長距離移動にも

 ケーブルはフラット型で、歩きながら聴いてもタッチノイズは特に気にならない。装着感については、耳の後ろにくるコントローラ部が、ケーブルのスライダー部を締めなければブラブラと揺れることになるが、歩くくらいの動作では特に気にならない。

 スライダーを締めて後頭部に密着させると、操作する時に手を首の後ろまで回すことになるため、それよりは、ある程度ケーブルにゆとりを持たせた方が操作しやすい、一方、ジョギングなどで頭にしっかりホールドしたい場合は、スライダーを締めるとケーブルが揺れないようにできる。なお、ケーブルはIPX4の防沫仕様。イヤフォン部を除く重量は約14g。

 Bluetoothのバージョンは4.0。右側のケーブルにあるコントローラ部は、中央の丸ボタンとボリューム+/-の3ボタン構成で、+ボタン長押しで曲送り、-ボタン長押しで曲戻しとなる。

 ウォークマンAのようにハードウェアキーがあるプレーヤーの場合は、プレーヤー側で操作したほうが早いが、iPhoneなどで曲送りしたい時は、WST-BLUETOOTHで操作すると画面を見ることなく使える。また、プレーヤーをカバンなどに入れた状態でもとっさに操作できて便利。ボタン長押しの操作は、多少時間はかかるものの、ダブルクリック操作などに比べてミスが少なくストレスが無い。

 なお、音声は主にaptXコーデックで聴いており、再生音質に大きな不満は無かったものの、通勤時などに歩いていると、電波の干渉があったためか、数回、音が途切れるケースもあった。他のBluetoothヘッドフォンでも同様のことは起こるが、低遅延のaptXとはいえ、途切れが全くゼロというわけではない。ただ、帰省のために新幹線や特急電車で長距離移動した時は、4時間以上に渡って音が途切れず快適に使用できた。

 マイクも内蔵し、iPhone 6sとペアリングして通話にも利用できた。丸ボタンを2回続けて押すと、音声アシスタントのSiriが起動する。

 バッテリの連続使用は約8時間。少なくなるとリモコン部のインジケータが赤く点灯し、5分おきにイヤフォン部から音声でも警告する。充電はUSB経由で、充電しながら音声を聴くことはできないため、長距離移動などの場合は、しっかり充電しておいたほうが良さそうだ。

イヤフォンを変えても長く使い続けられる

 Bluetooth搭載のワイヤレスイヤフォンが様々なメーカーから発売されている中、今も有線のイヤフォンを使い続けている人は少なくないだろう。ワイヤレスで利便性が高い一方で、「気に入るモデルが見つからない」、「ワイヤレスで音が悪くなる印象がある」といった意見も聞く。

 筆者の場合、WST-BLUETOOTHを日常的に使うようになって、外出時にイヤフォンを持って行く機会が前よりも増えたように思う。一つの理由は、ポケットが少ない夏の服装でも、ウォークマンやスマホをカバンに入れたままで使える点がある。近所の買い物などちょっとした外歩きにも持って出掛け、人と話すときなどは、首に引っ掛けておけば邪魔にならない。もともと気に入ったイヤフォンなので、音質も満足している。

 「iPhoneの次期モデルには、ステレオミニのイヤフォン端子が無くなる」という噂もよく聞くが、もしそうなったとしても、Bluetoothイヤフォンとして、引き続き使うことができるだろう。もちろんiPhoneだけでなく、ウォークマンなどaptX対応プレーヤーとの組み合わせでも便利に使えることが確認できた。

 また、今後MMCX端子のイヤフォンを新たに買った場合も、このケーブルに付け替えればそのイヤフォンをBluetoothでも楽しめるので、これからも活躍してくれそうだ。

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中林暁