ミニレビュー

PCレスで低遅延、1080/60p録画対応が魅力、アイ・オーのHDMIキャプチャ「GV-HDREC」

 筆者は、僚誌GAME Watchでゲームのレビュー記事を執筆している。そこで必要になるのがゲームプレイ時の録画環境だ。基本的には静止画しか使わないため、PS4などのゲーム機が標準で備えるスクリーンショット機能を使うこともできるが、ゲームをプレイしながらこれら操作を行なうのはなかなかハードだ。しかも記事内で使用するようないいショットが毎回撮れるとも限らない。

GV-HDREC

 普段はPCに接続したUSBキャプチャユニットで、録画した映像からスクリーンショットを”切り出して”いる。しかし、手間も多いし、HDD容量も必要だし、そろそろ買い替えたい…… そんな中アイ・オー・データ機器が、PCなしでHDMI入力機器の録画が可能なHDMIキャプチャーユニット「GV-HDREC」を発売した。実売価格は13,000円前後となかなかリーズナブル。

 試してみることにした。

コンパクトなHDMIキャプチャがほしい!

 「GV-HDREC」は、アナログ入力やHDMI入力に対応し、ゲームなどの映像を録画できるHDMIキャプチャーユニットだ。これまでも同社では、アナログ録画に対応する「GV-SDREC」などを発売していたが、GV-HDRECではPCレスのキャプチャーユニットで初めてHDMI入力に対応した。録画用のストレージは内蔵しておらず、本体前面のSDカードスロットを使って、最大128GBまでのSDXCカードへの録画できるほか、背面のUSB 2.0端子に接続した別売のHDDやUSBメモリなどへの録画も行なえる。

本体前面にはSDカードスロットと電源OFF/ON、録画状態を示すLED、ヘッドセット接続用のジャックを備える

 PCレスで操作できるように、各種機能を操作する9つのボタンを本体天面に装備。PCと接続してUSBキャプチャーは行なえず、あくまでも単体での録画利用となる。

本体天面には各種操作用の9つのボタンを備える。左部分のスペースはノートパソコンのタッチパッドのような見た目だが、特に何の機能もない

 HDMIの入出力端子を搭載するほか、アナログ映像入力は3.5㎜の4極ミニジャックに付属の専用AV入力変換ケーブルを使うことでコンポジット入力にも対応する。アナログ入力のHDMIコンバータとしても利用できるが、セガの昔のゲーム機「メガドライブ」を接続して試してみたところ、映像がモノクロでHDMI出力されてしまった。機器との相性があるようなので、注意が必要だ。

 なお、PlayStation 3(PS3)の接続にHDMIは利用できず、アナログ入力を使う必要がある。また、PS4を接続する場合は、本体設定のHDCPをオフにするなど、接続機器における注意点は購入前に確認しておきたい。

本体背面にはHDMI入出力端子と専用のアナログ入力端子、HDDなどを接続できるUSB 2.0端子を装備

 前面には3.5mmのイヤフォンジャックを備える。4極ミニジャックなので、一般的な有線接続のヘッドセットに対応し、これを利用して自身の声を録画映像にミックスしたゲーム実況映像などが簡単に作成できる。最近では、ゲームのプレイ動画に実況音声をつけて投稿するゲーム配信動画が花盛りなので、トレンドに乗った機能と言える。

 電源供給には専用のACアダプタを利用する。最近では喫茶店やファーストフード店で友達と一緒に動画配信の映像を作成するといった用途もあるそうだが、GV-HDRECはモバイルバッテリでは駆動できないので、そうした用途には使えない。日時などの設定情報は本体に保存され、これらを保持するためのコイン電池が本体底面に収められている。

ゲーム機との接続はシンプル。本体のみで操作可能

 筆者が普段ゲーム録画を行なっている環境は、PCに接続したHAUPPAUGEの「HDPVR2」。これでゲームプレイ開始から終了まで常時録画しておき、記事執筆時にその映像の中から静止画を切り出している。必要そうな部分だけ録画できればベストなのだが、ゲームに夢中になっていると肝心のところでPCの操作を忘れ、録画できないことがあるため、終始録画をするようにしている。その結果、PC上には使用済みの過去のプレイ動画が大量にHDDに保存されている。

 だが、最近はHDDの容量が厳しく、必要な部分だけスムーズに録画できるのがベストと考えていた。また、HDPVR2は2010年発売とかなり古い製品のため、PS4やPC接続時にはちょっと工夫を凝らす必要があり、そろそろ新しいHDMIキャプチャー製品を模索していたのだ。

 それから考えると、GV-HDRECのゲーム機との接続や操作方法はシンプル。今までテレビに出力していたHDMI端子をGV-HDREC本体のHDMI入力端子に接続し、付属のHDMIケーブルを本体のHDMI出力からテレビに繋ぐだけだ。初回起動時には、設定画面が立ち上がり、日時などの初期設定を行なう。各種設定を終え、メニューから抜けるとそこには接続した機器の映像が表示される。

 本体に備える9つの操作ボタンは直感的に扱えるようになっており、利用中に不便に感じることはあまりなかった。デフォルトの設定ではHDMIパススルーの機能がオフになっているため、画面には接続した機器の映像にかぶさる形で画面上部に大きめの白文字で現在の設定情報や録画可能時間などが表示される。

メニューボタンを押すと、録画に関する設定が開くようになっている。ここで録画ボタンを押す前から自動で指定の時間だけ録画し続ける「プリレック」や録画時の解像度などを設定できる。「GV-HDREC」のシステム設定を変更する場合、「システムメニュー」を選択する
システムメニューでは、HDMIパススルー設定やHDMI出力時の解像度設定などが設定できる

 ただこれらの情報表示の文字が若干大きめなのと、ちょっとフォントがカッコ悪いのが気になった。録画映像に文字が乗る事はないが、HDMIパススルーをオフにしている時は、文字を見ながらプレイすることになる。これらの表示を一時的に消すときは、「決定」ボタンを押すことで表示のOFF/ONが切り替えられる。

 HDMIパススルー設定は、デフォルトではOFF。この場合は、メニュー表示やモードの切り替えがスムーズに行なえ、録画中の残り時間も表示される。極力表示遅延を無くしたいときは、パススルーをONにする。パススルーONは、録画時パススルー(録画中のみパススルー)と、常時パススルー(電源OFF時もパススルー)が選択できる。

デフォルトではHDMIパススルーはオフの設定となっているが、この場合、画面上部に録画可能時間などの情報がゲーム映像にかぶせる形で表示される
(C)2014 Rockstar Games, Inc

 まずはデフォルト設定のまま、録画をしつつゲームをプレイしてみたが、HDMIパススルーをOFFにした状態でも遅延を感じる事はほとんどなく、快適にプレイすることができた。

 録画機能はフレームレートと解像度の組み合わせで「1080p/60fps(最高画質)」、「1080p/60fps(高画質)」、「1080p/30fps」、「720p/30fps」、「480p/30fps」の5種類を用意。ビットレートやフレームレート、解像度などを個別に変更する設定は存在しない。録画映像のビットレートはVBRで「1080p/60fps(最高画質)」の場合で32~36Mbps、「1080p/60fps(高画質)」では28~30Mbps、「1080p/30fps」で16~18Mbps、「720p/60fps」は12Mbps前後、「480p/60fps」で4Mbps前後。いずれも解像度相当の映像という感じで、映像品質は悪くない印象を受けた。

録画時のモードは解像度とフレームレートの組み合わせで全5種類を用意。フレームレートのみ下げる、といった個別の設定は用意されていない
1080/60fpsで録画
GTA Online (C)2014 Rockstar Games, Inc

 なお、GV-HDREC単体での利用なら問題はないが、PC上で60fps動画を再生しようとすると、筆者が常用している「GOMPlayer」では正常に再生できず、コマ落ちや音ズレが発生する場合があった。当初は録画に問題があったのかと疑ったが、「VLCメディアプレイヤー」で試してみたところ正常に再生できたので、機器側の問題ではなさそうだ。

画質については、1080p/60fps、1080/30fpsのいずれも問題ない
GTA Online (C)2014 Rockstar Games, Inc

 本体のみでの動画再生や削除、スクリーンショットの切り出しが可能なほか、カット編集、結合なども本体だけで行なえる。これらの操作は再生ボタンを押すことで録画映像の一覧が表示され、そこでメニューボタンを押すことで利用できる。

 カット編集は始点と終点を決めて、その範囲をカットするか残すかのいずれかを選ぶというシンプルな操作のみなので、あまり動画編集などをしたことがなくても、しばらく触っていればすぐに慣れるだろう。

本体左下の再生ボタンを押すことで、再生メニューが表示される。録画された映像を選択して再生、削除、編集などの操作が行なえる。
カット編集は始点と終点を決めて、その範囲を残すかカットするかを選択するだけのシンプルなものだが、単体で凝った映像を作るつもりでなければ十分実用的だ

 ファイルの管理についてはデジタルカメラと同じで、SDカード内に自動で「DCIM」フォルダが、さらにその下に「100HDREC」フォルダが作成され、そこに「IOHD0001.MP4」といった名前で自動保存される。編集した動画については上書きで保存するか、別名保存が選べるが、その際にもファイル名の変更は行なえない。PCレスを売りにするなら、ファイルの管理機能についてもう少し充実していてもよかったように思う。

編集メニューはカット以外に複数映像をつなぎ合わせる「つなぎ合わせ」、後からヘッドセットから音声を追加する「アフレコ」が行なえる
「超解像」や「手振れ補正」などの映像の補正機能も備える

HDMIパススルーOFFでも遅延は少ない

 ゲーム機向けのHDMIキャプチャーユニットでは、HDMIパススルーを利用せず、キャプチャーユニットの録画情報を表示したまま利用することが多い。録画中かを判断するのに、これらの表示があるとわかりやすいからだ。ただこの場合、映像に機器側の情報を乗せる必要があるため、大抵の機器では若干の遅延が発生することがある。

HDMIパススルー機能はデフォルトで「OFF」だが、「ON(常時パススルー)」、「ON(録画時パススルー)」の3種類から選択できる

 そこで、HDMIパススルーOFF時にどの程度の遅延が発生するかも調べてみた。テストは、PCからのHDMI出力を一度HDMIスプリッターで分割し、片方はそのままディスプレイに直結し、もう片方のディスプレイに「GV-HDREC」を経由してディスプレイ表示し、遅延の有無を確認する。確認に使用したのは、「LCD Delay Checker」(Version 1.4)で、この映像をiPhone 6の240fpsスロー撮影でチェックしてみた。今回は異なるディスプレイを2台使用してチェックするため、事前にディスプレイ間の遅延差をチェックしてみたが、両機種での差がほとんどないことを確認してからテストした。

 HDMIパススルー機能をオンにした場合、当然ながら遅延はほぼ発生せず、2台の映像はスローで確認してもスムーズにシンクロしていた。続いてHDMIパススルーをオフにした状態で確認して見たところ、驚くことに遅延はほとんど発生しておらず、2台のディスプレイの映像は1fpsの誤差があるかないか。とても優秀だ。

2台のディスプレイを並べて、HDMIスプリッターを使用して同時出力して遅延をチェックしてみたが、ほとんど遅延が確認できなかった
(C)2014 Rockstar Games, Inc
同じ環境でゲームもプレイしてみたが、遅延は確認できず、全く問題なく、快適にプレイできた

 ということで本機においては、よほど表示遅延にシビアなゲームプレイ時を除けば、パススルーOFFで画面上に録画情報を出したままでも問題なく利用できるはずだ。ただ、1点だけ付け加えておくと、本機のHDMIパススルー設定の[ON(録画時パススルー)]の利用には注意が必要だ。

 この設定は、「録画していない時は画面上に文字情報が表示され、録画中のみ表示が消えてHDMIパススルーになる」という一見するといいとこ取りの設定なのだが、切り替え時に数秒の暗転が発生するのである。この時間がかなり長く感じるため、個人的には使うことはないと感じた。特にHDMIパススルーオフ時の遅延が少ないので、わざわざ暗転させてまでHDMIパススルーをオンにする必要もないからだ。

マイク入力はアップデートに期待

 最後にゲームプレイ中にヘッドセットを接続してあれこれしゃべるという、いわゆるゲーム実況動画風の映像も作成してみた。使用したのはPS4用のヘッドセットでこれを本体前面のヘッドセット入力端子に接続して、あとはゲームをプレイしながら録画するだけだ。

 音量の調整については、画面右下に2種類のボリューム調整が表示されており、片方はマイク入力で、こちらは本体メニューにあるものと同じで、標準では5に設定されており最大で8となる。もう1つは録画時の映像全体の音声出力となっており、こちらはメニュー上にはなく、ここでの設定のみとなる。こちらも標準では5だが最大7まで上げられる。

 最初のうちはデフォルト設定のまま録画に挑んでみたが、録画した映像を確認してみると、どうにもマイクの音量が小さく、話している声がほとんど聞こえない。そこでマイク入力を最大にして試してみたが、どうにも音量が小さい。

画面右下にカーソルが表示されており、上下で録画時のボリューム設定、左右でマイク入力のボリューム調整が行なえる

 何度か試して調べてみたが、結局のところ原因はシンプルで筆者自身の声が小さすぎたことだった。最終的にはかなりハキハキと大きめの声でしゃべるようにすることで、ようやく聞き取れる程度のボリュームに仕上げることができた。

(C)2014 Rockstar Games, Inc

 ただ、これについて言い訳というか意見させてもらうと、ヘッドセットを使う事を前提としたつくりにするなら、普段ゲームをしながらボイスチャットで仲間と話をするくらいの声量でも聞き取れるくらいの音量でミックスできるようにしてほしい。声は小さかったものの、普段PS4のボイスチャットで話して会話が成立するくらいのトーンでは話をしていたし、実際のところリアルタイムでゲームをしながら話をしようと思うと、常にハキハキとはっきりした声量で話をするのはなかなか難しい。

 せっかくマイク入力で音量の調整が可能になっているのに、最大にしてもマイクの音声がほとんど通らないのはちょっと設定の幅が狭いように感じる。もしくはゲーム側の音量を落とすような設定があればよかったが、全体の音量調整しかないため、これを最大にしても結局ゲームの音も一緒に大きくなってしまうのだ。また、もう1つ要望を挙げるなら、マイク接続時だけでも構わないので、マイク音量のレベルメーターがほしい。

 この辺りが充実すれば、ゲーム実況動画を作成するような層にも安心しておススメできる。逆に言えば、現時点では実況配信向けにはちょっとおススメしにくい。また、録画映像に後から声を乗せるアフレコ機能もあるので、ゲームプレイ後に後から実況音声をかぶせる場合であれば、話すことに集中できるので、もう少しうまく作れるかもしれない。

 HDMI入力に対応するゲーム機向けのキャプチャーユニットは他社からもいくつか製品が出ているものの、2万円前後の製品が多く、中にはPC側でエンコードするため、PCパワーが必要なものもある。

 本機ではPC接続での利用できないものの、実売13,000円前後と、比較的安価で手軽にゲーム映像を録画するのに向いた製品としてうまく落とし所が考えられた製品だ。映像の品質は全く問題はないし、これまでPC経由で録画していた環境と比較しても、PCレスでシンプルに環境が構築できるのは魅力的だ。

 筆者が重要だと思うのは、本体がコンパクトで録画状況を画面に常時表示したままでも遅延なくプレイできること。必要な時だけ手軽に録画するという当初想定していた通りの機能を実現できることが最大の魅力だ。近日中に導入することに決めた。

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池紀彦