ミニレビュー
「Nintendo Switch」ならではのYouTube体験。動画視聴3スタイル
2018年12月8日 08:00
11月9日、Nintendo Switch向けにYouTubeアプリの配信が開始された。アプリは無料で、ニンテンドーeショップからダウンロードして利用できる。Switch向けの動画視聴アプリとしてはniconicoがすでにリリースされているが、世界最大級の動画プラットフォームであるYouTubeの対応を期待していたユーザーも多いだろう。
機能はPS4とほぼ同等。スマホから動画をキャストできる連携機能も
さまざまなプラットフォーム向けにアプリを提供しているYouTubeだが、Switch向けのYouTubeアプリは、PS4向けのアプリとほぼ同等の機能を搭載。画面インターフェイスも同一で、後述する「Wi-Fiでリンク」以外の機能はほぼ同じと言っていい。
初期状態ではゲストモードで利用できるが、普段利用しているGoogleアカウントと連携することで、登録チャンネルや履歴、検索キーワードなどを共有できる。また、ログイン後もゲストモードを引き続き利用することも可能だ。知人が遊びに来た時など、YouTubeの動画を見たいが自分の履歴は見せたくない、というときはゲストに切り替えればいい。ただし、ゲストでの視聴履歴は共通のため、異なるユーザーであっても同じゲストで視聴すると履歴が残ることになる。
スマートフォンとの連携機能も備えており、設定の「テレビコードでリンク」から表示される12桁の数字をスマートフォンのYouTubeアプリに入力することで、スマートフォンからの操作が可能になる。スマートフォンで動画を選び、キャストアイコンをタップして表示される「Nintendo Switch」を選ぶとSwitchで動画が再生され、再生/一時停止といった操作がスマートフォンから可能だ。
Switchで動画を再生中もスマートフォンの操作は可能で、異なるアプリを操作したり、YouTubeアプリから次に再生したい動画をキューに登録することもできる。GoogleのChromecastや対応機器を使ったことがあるユーザーなら、SwitchをChromecast的に利用できる、といったほうがわかりやすいかもしれない。
なおSwitchでは、YouTubeアプリを起動している時のみキャストが可能。Chromecastのように、テレビの電源が入っていない状態で動画をキャストしてテレビをオンにする、という連携はできない。
また、前述の通りPS4版のYouTubeでは「Wi-Fiでリンク」という設定が用意されている。これはPS4のYouTubeアプリを立ち上げた状態であれば、テレビコードを入力する必要なくキャストするだけでスマートフォンを連携できるというものだ。テレビコードの入力に比べると圧倒的に手軽なため、Switchでもこの機能を実装して欲しいところだ。
携帯モード、TVモードなどさまざまなスタイルで動画を楽しめる
機能だけで見るとPS4向けのYouTubeやChromecastと大差ないようにも思えるが、Switch最大の特徴はやはり多彩なプレイモードにある。
ドックに接続して画面をテレビに映し出す「TVモード」で、PS4やChromecast的な使い方ができるのはもちろん、ドックから本体を取り外して携帯モードで1人で楽しんだり、背面のスタンドを立てる「テーブルモード」で、複数人で楽しんだりとさまざまな視聴スタイルが可能だ。
画面操作はLスティックまたは方向ボタンで移動し、Aボタンで決定、Bボタンでキャンセルという、ゲーム操作方法としてオーソドックスな操作体系。また、Xボタンを押すとこれまでの検索履歴が表示され、さらにXボタンを押すとソフトキーボードでテキスト検索が可能だ。
ドックモードではなく本体で動画を視聴する場合はタッチ操作も可能。ただし、視聴したい動画の決定はできるが、タッチ操作での移動ができないため、タッチ操作だけで動画を探すのは難しい。あくまでコントローラーの補助的な操作として使うのがいいだろう。
動画再生中はAボタンで詳細画面を表示し、再度Aボタンを押すことで一時停止と再生を切り替え。Bボタンを押すと詳細を非表示にできる。L/Rは動画スキップで、ZR/ZLは10秒単位で動画を早送り/戻しできる。また、再生中のタッチ操作は画面タッチで詳細が表示され、右下に表示されるソフトボタンのBボタンやXボタンをタッチすることで物理ボタンを使わずとも同様の操作が可能だ。
Switch本体のディスプレイは画面サイズが6.2型で、解像度は1,280×720ピクセル。昨今のスマートフォンと比べると解像度こそ低いものの6.2型という画面サイズは一般的なスマートフォンよりも大きく視認性も高い。ドックに装着してテレビで動画を楽しみ、ドックから取り出して自分の部屋で続きを見る、といった視聴スタイルの変更が、ただドックから取り出すだけでできるのはとても手軽だ。
画面解像度はHDだが、設定自体はフルHDまで変更が可能。とはいえHDとフルHDではほとんど画質の差は気にならない。ディスプレイの発色も鮮やかで、再生する動画の画質が高ければほぼ気にならないだろう。音に関しては、大音量で聞きたい場合もやや音が遠くに感じてしまう。音にこだわるのであれば携帯モードでイヤフォンを併用するほうがよさそうだ。
また、変則的な使い方にはなるが、設定からJoy-Conの持ち方を変更すれば、左右それぞれのJoy-Conを2つのコントローラーとして同時に使うことも可能。複数人で視聴する際に、それぞれがJoy-Conを持って好きな動画を選んだりスキップしたり、という操作が同時に可能だ。ただし、Joy-Conを片方だけで操作する場合はZR/ZLボタンが利用できないため、10秒スキップは使うことはできない。
ペアレンタルコントロールは対象外。親子で共有する場合は課題も
YouTubeアプリの機能は非常に充実している一方、気になるのは子ども向けの機能だ。他のゲーム機と比べてSwitchには低年齢の子どもに人気のタイトルが充実していることもあり、子どもがいる家庭ではSwitchを大人と子どもで共有しているケースも多いだろう。一方、多種多様な動画がアップロードされているYouTubeでは、子どもにはふさわしくない、まだ見せたくないといった動画も少なからず存在する。
こうした事情を踏まえて「YouTube Kids」というアプリがスマートフォン向けに提供されており、子どもにふさわしくないと思われる動画をフィルタリングし、子ども向けの動画のみを視聴できるようになっている。
しかし、SwitchのYouTubeアプリには、こうしたフィルタリング機能はない。アプリの設定に、制限付きモードが用意されているが、これは図書館など公共施設向けの機能であって子ども向けの機能ではなく、この機能をオンにしただけでは、YouTube Kidsではフィルタされるような動画も視聴できてしまう。
Switchは子どものゲーム時間を管理できる「Nintendo みまもり Switch」というスマートフォン連携機能を搭載しており、この機能の中で(ゲームを年齢でレーティングする)CEROのレーティングを基準として起動アプリを管理できる機能も提供されている。しかし、YouTubeはCEROレーティング対象ではないため、一番厳しい年齢設定にしてもYouTubeの起動を制限することができないのだ。
なお、同様のYouTubeアプリが提供されているPS4では、YouTubeアプリにペアレンタルコントロールのレベルが設定されているため、子どもがPS4で遊ぶときもYouTubeを使用できないよう設定できる。
ゲームだけであれば、「子どもにふさわしくないゲームを購入しない」という対策ができるが、YouTubeに関してはインストールしてしまうと子どもが有害なコンテンツにアクセスすることを防ぐ手段が用意されていない、のが現状だ。
子どもと親で同じSwitchを利用している環境であれば、YouTubeアプリのインストールそのものをためらうという家庭も少なくないだろう。子ども向けに数々の人気タイトルをリリースしている任天堂だけに、こうした子ども向けの対策も充実を望みたいところだ。
Switchならではの動画スタイルが魅力。ペアレンタル対応に期待
YouTubeアプリの完成度は高く、スマートフォン連携のキャストモードや、好きなところに持ち運んで動画を楽しめる視聴スタイルなどSwitchというハードならではの魅力も多い。Switchをゲーム機としてだけでなく動画プレーヤーとしても活用できるという点でお勧めのアプリだ。
課題は前述の通り、子どものいる環境に向けての対策が無いということ。繰り返しにはなるが低年齢層の子ども達にも人気のタイトルをそろえているSwitchだからこそ、YouTubeに留まらずペアレンタルコントロールなどの機能充実を期待したい。