ミニレビュー

4K/30p対応のハイスペック「GoPro HERO4 Black」は買いか?

 今やアクションカムの代名詞ともなっているGoPro。ほぼ1年おきに新モデルをリリースしており、2014年11月から12月にかけ、2年ぶりのメジャーアップデートとなる「GoPro HERO4」の発売が開始された。今回はラインアップの大幅な変更が図られ、従来のような基本性能(と一部付属品)の違いのみでモデル分けするのではなく、機能においても大胆に差別化している。

GoPro HERO4 Black
パッケージ

 最上位機種である「Black」は、4K/30p、1080/120pなどの高解像度、ハイフレームレートに対応する従来の正統進化形となり、「Silver」は前モデルのHERO3+ Blackの性能に背面ディスプレイをビルトインしたようなモデルに。さらに下位モデルとして、1080/30pまでに性能を抑えWi-Fi機能まで省いた「HERO」を追加した。

 直販価格はHERO4 Blackが64,000円、HERO4 Silverが49,991円、HEROが19,500円。HERO3+ Blackはラインアップから消え、HERO3+ Silver(37,000円)とHERO3 White(27,000円)が継続販売される。したがって、上位モデルとしてHERO4が位置付けられ、その下にHERO3+/HERO3が、最下位のエントリー向けにHEROが並ぶ、という形だ。

 こうして見ると、価格面からおいそれとは手を出しにくくなった感のあるHERO4だが、最上位のHERO4 Blackを入手できたので、従来のHERO3+ Blackと比べどんなところが変わったのか見ていきたいと思う。

GoPro HERO4 Blackの同梱品

スタイリッシュな見た目ながら、重量は増加

 外観についてはほぼ前モデルと同じ。サイズに変更はなく、従来のハウジング、マウント、バックパック類はそのまま使用できる。細かく見ていくと、本体表面のシボ加工のパターンが変わり、マイクやスピーカーの位置、穴形状が変わっていたりもする。

HERO4 Blackを上下左右から
ハウジングを装着した状態。作りはHERO3+とほぼ同じ

 正面のディスプレイ周りのデザインはシャープな印象になった。録画/Wi-Fiの状態を判別するLEDがディスプレイ脇に移動し、スリット風の見た目になって、スタイリッシュさが増した。

 そんな中でも構造上最も大きく変わったと言えるのは、バッテリーだろう。従来は背面カバーを外してバッテリーをはめ込むタイプだったのが、HERO4では底面のフタをスライドさせて、バッテリーを挿入する形になった。この変更に伴って、従来型のバッテリの流用は不可能になっている。これまでの“資産”をできるだけ活かしたいユーザーにとってはちょっと残念かもしれない。

バッテリは本体底面から挿入する形になった
左からHERO3、HERO3+、HERO4のバッテリ

 ところで、サイズは変わっていないものの、重量は増えている。実測でHERO3+が74gのところ、HERO4は10g近いアップとなる83g。この差が使い勝手に直ちに影響するとは考えられないが、ニューモデルになるたびにボリュームダウンしてきた流れが断ち切られたのは少し気になるところだ。

撮影モード設定の方法が変更に

 設定時の操作に関わる変更が行なわれたのも注目したいポイント。電源ボタンとシャッターボタンの2つで操作するシンプルな仕組みをかたくなに守り通してきたGoProだが、HERO4からは本体側面のボタンも使うことになる。

右がHERO4。側面ボタンのエンボス加工が、Wi-Fiを表すものからスパナアイコンに変わった

 とはいっても、基本は従来通り電源ボタンで選択し、シャッターボタンで決定するということに変わりはない。ただ、各撮影モードごとの解像度やフレームレートなどを本体上で変更したい時は、これまでWi-Fiのオン・オフを切り替えるためだけにあった本体側面のボタンを押す必要がある(今まで通りWi-Fiのオン・オフボタンとしても機能する)。

 一見操作すべきボタンが増え、従来と設定方法が変わったことで戸惑いそうに思うかもしれないが、カメラ本体の設定は従来の手順で、撮影モードごとの設定は側面のボタンで、という区別がしやすくなったとも言える。これによって撮影モードとは無関係な本体設定画面をいちいち経由する必要がなくなるため、解像度やフレームレートを手早く変えられるようになった。

従来通り電源ボタンを短く押した時に表示される設定画面の内容
側面の設定ボタンを押した時の動画撮影モードの設定画面の内容

 ちなみにBluetoothによる無線通信機能も搭載されたが、これはスマートフォンアプリのGoPro AppからHERO4をリモートコントロールしたい時、Wi-Fi接続の初期設定でペアリングする際に用いられるのみ。Wi-Fi設定のリセット時にWebサイトにアクセスして設定ファイルをSDカードに書き込み、そのSDカードを装着して本体の設定を書き換えるといったHERO3+までのわずらわしさは解消されている。

最初に無線接続する際のペアリングにBluetoothを利用。接続設定が簡単になった

撮影可能時間は短縮したが、安定性は向上したか

 さて、アクションカムとしては常に気になるバッテリのもちだが、残念ながらというか、やっぱりというか、HERO4 Blackではさらに撮影可能時間が短縮してしまっている。

 HERO3+で1080/30p時、実測2時間ちょうどだった連続撮影時間は、HERO4では実測1時間34分(カタログスペック1時間30分)へと大幅ダウン。このモデルでおそらく頻繁に使われるであろう1080/60pでは実測1時間17分(同1時間20分)、4K/30pに至っては実測1時間7分(同1時間5分)と、長時間撮影には全く向かない。

【撮影モードごとの連続撮影時間】

実測値カタログ値
1080/30p1:341:30
1080/60p1:171:20
4K/30p1:071:05

※いずれもWi-Fiオフ時の値

GoPro Appでの映像プレビューはレスポンスが向上した

 なお、長時間撮影のテストは室内で行ったが、4K/30pや1080/60pの撮影終了時には本体がかなりの熱をもったことを考えると、真夏の炎天下での使用には不安を覚える。HERO3+以前もそうだったが、市販の冷却シートを使うなど、何らかの対策を考えておく必要はありそうだ。

 しかしながら、アプリにおける安定性は今のところHERO3+よりも優れていると感じる。GoPro Appのカメラ映像のプレビューが、HERO3+では接続直後に表示されない不具合を抱えていたのだが(個体差やスマートフォンの相性問題の可能性はある)、HERO4では全く問題なく、しかも映像プレビュー自体が表示されるまでの速度もかなり高速化された。プレビュー時のタイムラグについてもわずかに改善している。バッテリのもちについてはともかく、使い勝手は確実に進歩しているようだ。

画質はHERO3+より明るめ。4K、Night Lapseも美しい

 最後に撮影モードと映像品質について見てみよう。

 HERO4では新たに4K/30pや1080/120pなどの動画撮影が可能になった。とりわけ4Kについては、HERO3+では15fps止まりで実用にはほど遠いスペックだったのが、HERO4でようやく“使える”ようになったのではないだろうか。実際に4K/30pで撮影した映像は、たしかに美しい。4Kモニターではなく2,560×1,440ドットのタブレットやスマートフォンで見た時も、フルHDとは比べものにならない高画質を目にすることができた。

【【動画】4K/30pで撮影】
HERO4 Blackの最大の特徴といえる4K/30p動画(119MB)

 1080p撮影に関しては、あらかじめハイフレームレートで撮影しておき再生時にスローモーションにすることで、滑らかな動きの映像を作り出すテクニックがより効果的かつ高画質で実現できるようになり、表現の幅が広がったと言える。1080pの映像品質は、以下のサンプルを見るとわかるように、若干HERO3+よりも明るめに出るようだ。ちなみに音質も、耳障りなノイズが軽減されているように感じる。

【【動画】ミニバイクサーキット走行】
1080/60pにてHERO3+とHERO4を並べて同時撮影(602MB)
Night PhotoとNight LapseはGoPro App上の撮影モード切り替えボタンから選べる
露光時間はオートの他、2~30秒の間で指定可能

 静止画撮影には、「Night Photo」および「Night Lapse」と呼ばれる機能が追加された。静止画撮影時やタイムラプス撮影時に最長30秒までの露光を可能にする機能で、暗闇の中であっても被写体を捉えやすくなる。Night Lapseと通常のタイムラプスで高速道路を撮影した様子を以下に用意したが、Night Lapseでは光の帯が残る印象的な映像になり、これまでにない面白い使い方ができそうな予感。

【【動画】高速道路のNight Lapse&タイムラプス】
いずれもインターバル2秒で撮影、12fpsにて動画化(76MB)

映像の出来に対し、機能面、音質面での力不足が課題か

 以上の通り、HERO4は撮影モードの拡張と操作性の向上が主な進化のポイントとなる。画質については、おそらくプロフェッショナルユースにおいても文句が無い域に達しているのではないだろうか。しかし、注文をつけたい点もいくつかある。画質が常に進化してきたのに対して、それ以外の部分が追いついておらず、全体としてアンバランスに感じるところが目立ち始めたのだ。

 4Kの画質がすばらしくとも、そもそもGoProの広角レンズによる歪みが目立つ映像では4K本来の魅力が損なわれるのに加え、フォーカスが命の4Kにおいて手ぶれ軽減機能がない今は、用途や使用方法があまりに限られる。せめて手ぶれ軽減や、クロップによる擬似的なズームイン・アウトなど、機能面での工夫があれば……という気持ち。

 音声についても、AAC 128kbpsでモノラルのみというのは物足りない。今後はリニアPCMだったり、ステレオあるいはマルチチャンネルへの対応、外部マイクを容易に接続できる構造にするといった、用途の拡大につながるビジュアル・サウンド両面からの変革に期待したい。

 そんなわけで、HERO4 Blackは買いか? と問われれば、4K/30pという画質が必要な人でない限り、個人ユーザーにおいては非効率と言える。趣味のスポーツにしろ、子どもの成長記録にしろ、もっと手軽に、長時間撮りたいはずだ。おそらくほとんどの人にとっては、相対的にコストパフォーマンスの優れたHERO3+ Silver以下が狙いどころになるだろう。

 というか、もとからHERO4 Blackはそういったユーザーをターゲットにしていないのだ。Blackと名付けられた機種は、映像的にその時点のベストのパフォーマンスにチャレンジするモデルであるという意味合いが、HERO4からより色濃くなった。とにかく最高の画質と機能で狙ったものだけを撮りきる、そんなカメラがHERO4 Blackだ。

 ユーザーに対して、「おまえはこれで、どれだけすごい映像を撮れるんだ?」と挑んできているような気さえする。GoProからのそんな挑戦状に真っ向からぶつかっていける気概のある者こそが、使うべきアクションカムなのかもしれない。

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GoPro HERO4
Black Edition

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。