レビュー

ドラム練習の相棒に“ポム栓”。進化した「AZLA POM1000 II」を試してみた

音楽スタジオの個人練習に、POM1000 IIを持ち込んだ。

嬉しいことに、音楽用の耳栓が市民権を得ている。筆者がよく利用する家電量販店にも耳栓のコーナーが常設された。ただ、その耳栓コーナーにしばらく欠けていた存在があった。AZLAのPOM1000、通称“ポム栓”だ。

POM1000は“音を犠牲にしない耳栓”といった評判があり、筆者は偶然AV Watchの記事で試してみて感激。記事の趣旨を忘れて即ポチした過去がある。

楽器演奏が趣味なので、たまに仲間と演奏していると耳栓の話題になることもある。若い頃は「耳栓なんかロックじゃねえぜ」「遅刻と難聴はバンドマンの勲章」ぐらいのムードもあったが、年を重ねて「演奏後も耳がキーンとなってて怖い……」みたいな人が周りに増えてきた。ただ、勧めようにもPOM1000が売ってないから困っていたのだ。

そんなPOM1000が「POM1000 II」として登場。果たしてどんな違いがあるのか。初代ポム栓の印象を期待して買ってよいものか。実物を試してみた。

新登場のPOM1000 II。
自前のPOM1000(右)も持参。違いは体感できるのか?

お気に入りのスタイルを継承

ポム栓の何が好きって、イヤフォン感覚で手軽に付け外しできるのが好きなのだ。普通はライブ鑑賞であれば開演から終演まで外さないだろうけど、楽器のバンド演奏や練習をしていると着脱したいシーンが多い。

それまで使っていた3段フランジの耳栓だと、急いでいる時に限って耳穴にスルッと入らないことがあったりして、そして左右の入り具合もスンナリ揃わなかったりして、結構ストレスだった。その装着ストレスがなく、かつ音色的にも高域から低域までのバランスに配慮が伺えるので気に入っている。この辺りの基本はPOM1000を継承していて安心した。

POM1000 IIを使用中。見ようによってはイヤモニをしている人みたいかも。
外した時に首に掛けたいので、イヤープラグストラップを装着。素材が滑りにくく心強い。

2機種を見比べると、本体色が異なること以外は、ほぼ見分けがつかないレベル。使い勝手も同様だ。

左がPOM1000 II、右がPOM1000
製品情報ページによると、「内部エアホール設計を見直し、再強化した」とある。

ちなみにケースは、たまたまお土産でいただいたバネ口金のポーチを流用している。これなら片手で扱えるし、ほぼ布製なので毎日バッグに放り込んでいても周囲のアイテムを攻撃しない。耳栓は押されたところで壊れるものでもないし、湿気も逃げてくれそうだし、これぐらいでいいような気がしている。

付属の金属製ケースは使わず、バネ口金のポーチに入れている。これなら周囲の小物も傷付かない。

同梱イヤーピースが変わった

POM1000 IIの標準装着イヤーピースはフォームタイプ。従来のPOM1000(右)では、筆者はシリコーンタイプを好んでいた。

アラ! と驚いてしまったのはこの部分。筆者は付け外しのしやすさからイヤーピースはシリコーンタイプの「SednaEarfit MAX」を選んでいたのだが、それが同梱から外れてしまっていた。


    参考:POM1000の同梱イヤーピース
  • SednaEarfit MAX
  • SednaEarfit XELASTEC

    POM1000 IIの同梱イヤーピース
  • SednaEarfit XELASTEC II
  • SednaEarfit Foamax
POM1000 IIのセット一式。ポーチやケースもPOM1000同様。

SednaEarfit XELASTECは“体温で変形して耳道にフィットする”というのが特徴なので、付け外しを頻繁にすると恩恵にあずかれないと思い、時間的変化のないフツーのイヤーピースであるSednaEarfit MAXをPOM1000では使っていたのだ。後で気づいたのだが、なんなら筆者はAirPods Pro 2にもSednaEarfit MAXを付けていた。

そして、もう一つの同梱イヤーピースSednaEarfit Foamaxは、いわゆるフォームタイプ。こちらも装着後に馴染むまでの時間が大事そうだ。

フォームタイプのSednaEarfit Foamax。指でつぶして耳に入れ、膨らむのを待つ。

リハスタへ。音と使い勝手はどうか?

例によってドラムの個人練習というシーンで試す。とりあえず2種類のイヤーピースを試してみたところ、筆者の好みはSednaEarfit XELASTEC IIに落ち着いた。着脱のしやすさはもちろん、SednaEarfit Foamaxは音がマイルドになる感じ。なので聴力保護には向いているが、スネアドラムの響き線の音だったり、シンバルのニュアンスまで聞きながら練習しようとするとSednaEarfit XELASTEC IIのほうが楽しく演奏できる。

体温で変形するTPE素材採用イヤーピースSednaEarfit XELASTEC II。
取っ替え引っ替え、試してみた。

そして、「密閉モード」と「開放モード」の切り換えも試してみた。楽器演奏では、開放にすることで高音のニュアンスが取りやすくなる印象。開発意図としては、密閉モードはより高周波を抑える傾向で、開放モードは中〜大規模コンサートホールでの使用を想定しているそうだ。実際のコンサート会場での使用感は編集部・酒井さんの記事に詳しい。

POM1000とPOM1000 IIはイヤーピースに互換性があったので、さらにPOM1000とイヤーピースを揃えて比べてみたりもしたが、オーディオ的に繊細な耳を持ち合わせていない筆者では、違いを明確に感じ取ることはできなかった。内部構造が変わったとのことで、少しダイレクト感があるというか、音が明瞭に聞き取りやすくなったような気がする。ただこれは決して「POM1000のほうが良かった!」とか「もうPOM1000 IIしかあり得ない」という感想にはならなかった。初代ユーザーがIIを買って予備にしても、何らストレスを感じることはないだろう。

楽器練習の相棒、POM1000の進化を言祝ぐ

なぜわざわざ楽器をやるのに耳栓をするのか、という話だが。将来的な聴力保護というより、単純に今ウルサイのがイヤだから耳栓をしている。大きな音の中にいると耳がその防御反応に忙しくて、周囲の音に気を配りにくくなる。耳栓をしたほうが、むしろ他の楽器の小さな音まで探しに行けて音楽的に円滑になる気がするのだ。音楽が鳴っている現場で音量にストレスを感じたことがある人は、一度耳栓を試してみてほしい。

最近はライブ用を謳う耳栓も増えたけれど、POM1000のような金属筐体はまだまだ珍しい。果たしてこれが世にある耳栓で最強がどうかは正直わからない。他にも試さなければならない製品がたくさんあるだろう。ともあれ、人気かつお気に入りのPOM1000がここに再登場し、また他人に勧められるようになったのは嬉しい。筆者もこの機会に予備を調達しておこうかと思っている。

鈴木 誠

ライター。デジカメ Watch副編集⻑を経て2024年独立。カメラのメカニズムや歴史、ブランド哲学を探るレポートを得意とする。インプレス社員時代より老舗カメラ誌やライフスタイル誌に寄稿。ライカスタイルマガジン「心にライカを。」連載中。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。 YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究」